ランク試験②
説明が終わり一息ついた所で受付嬢のリアナから尋ねられる。
「ソウさんはランク試験を受験致しますか?」
その質問にソウは少し考える。
(んー…今の所はテンプレ展開も無いしギルドの試験官なら殺されるようなことはされないだろうしとりあえず自分の身体の性能も見ときたいしな)
考えを纏めるとソウはリアナに告げる。
「受けます。Eランク試験!」
「かしこまりました。こちらのランク試験は無料となりますが試験を受けれるのは一度だけとなります。それと怪我などに関しても責任は取れませんのでご了承ください」
「わかりました」
ソウが返事をするとルビーが話しかけてくる。
『ソウあなた手加減出来るの?下手に全力なんて出したら人を殺すわよ』
『その手加減の練習の為に受けるんだよ。思いっきり手加減しても殺されることは無いだろうし負けても街での依頼を受けるだけで済むんだ』
『それもそうね、意外とちゃんと考えてるのね。見直したわ』
そんなやり取りをしているとリアナからお呼びが掛かる。
「お待たせいたしました。こちらへどうぞ」
そう言ってソウの前を歩いて案内する。
ソウが後ろを付いて歩き始めると酒場に座っていた冒険者達も立ち上がり同じ方向に進んでくる。
(なんだ、まさか複数の人間と戦うのか)
ソウが訝しみながら進んで行くと目の前に開けた場所が見えてきた。
ある程度近づくとその広場の全容が見えてきた。
周囲は木で出来た塀みたいなモノで囲まれており塀の外には観客席なのか簡易のベンチが置かれている。
また塀の中の足場は砂場のような砂で埋められており足場は悪いが衝撃は吸収してくれそうな作りになっている。
試験会場のような場所まで来ると後ろに着いて来ていた冒険者達はベンチの方に向かい座り始める。
(どうやら観客のようだな)
リアナが誘導の後ろでソウが観客に視線を向けて考えながら中央まで進むと後ろから騒めきが聞こえてきた。
振り返ると後ろの方からラルグがゆっくり歩いてくるのが見えた。
ラルグの姿が見えた観客達から色々な声が聞こえる。
「こりゃすぐ終わるな…あの新人は運が無いな…」
「今日は分は捨てて何秒で賭けるかだな」
「いや、これは逆にアイツに賭けたら借金を返すチャンスに…」
「はぁはぁリアナさん…踏まれたい…」
(若干1名変態が居たがあの冒険者たちはどうやら暇つぶしの見せ物としての見物と賭けの対象として付いてきたようだな)
ソウがそんなことを考えているとリアナから話しかけられる。
「私は止めたのですが彼がどうしてもと聞かなくて…大怪我をすることはないと思いますが怪我の回復にはお金が掛かります。実力を認められれば試験は合格になりますので無理をなさらないようにしてください」
ラルグが中央に近づくにつれて冒険者たちからの声援とは言えない言葉が飛んでくる。
「絶対に10秒は立ってろよ!」
「歯食いしばって一撃は耐えろ!」
そんな声援ともヤジとも言えない言葉を聞いているとルビーも喋り始める。
『ソウ、ソウ!あの人間達は何をあんなに騒いでいるの?』
『あれは賭けごとをしていて多分勝ち負けの予想や俺が何秒持つかで賭けてるんだろう』
『ふーん、ソウ私もやってみたいわ』
『いいけど当事者が賭けれるかわからないぞ。八百長になる可能性もあるからな』
『いいのよ。雰囲気を味わいたいのだから!それにあの感じだとソウに賭けるのは大丈夫そうじゃない』
ソウは迷わず自分に賭けると言ってくれたルビーに少し嬉しくなった。
『わかった。それじゃいくら賭ける?』
『もちろん金貨1枚よ』
ソウは賭けの胴元らしい人物に大声で聞く。
「おーい!俺も賭けに参加することは出来るのか?」
一瞬場が静かになり胴元らしき人物から返事がくる。
「ガハハ、おー賭けてもいいが本人同士の場合は勝敗のみの参加だぞ。まぁラルグに賭けても対して儲からんから治療費の足しにはならんぞ!」
そう言って胴元らしき男は周囲の冒険者と一緒に笑う。
ソウはそれを聞いて影収納から金貨を1枚だしてそれを胴元に投げて告げる。
「俺の勝利に金貨1枚!」
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