街へ⑥
街道に出たソウは周囲を観察しながら進んでいく。(なるほど荷馬車で何かを運んでいる商人に守るようにしている冒険者、旅人やクエスト帰りの冒険者が多い感じか…)
周囲の人物達の姿を確認しながら自分の格好を見る。
(格好以外は余り浮いてはないな…)
ソウの姿形は前世と同じ黒髪で歳は16歳位まで若返っているのにプラスして前髪が長く少し目に掛かる形となりそれがまた幼さを印象付けている。
顔立ちは前世と余り変わっていないが目の色は赤く変わっている。
身長は前世の175㎝から視線が若干低い気がするので恐らく160〜165位だろうかあの身体能力からは想像つかないが筋肉はそんなに付いてないように見える。
髪の色も黒髪が珍しい感じでもなく赤や青などの髪の人達もいる。
どうしても浮いてしまっているのが前世の服装のせいだ。
ジーパンに白シャツにスニーカーだ…これはルビー達がソウの現世の記憶から創ってくれたものらしいのだが異世界ではどうしても浮いて見える。
冒険者達は鎧や軽装備をしているし商人達もトル◎コみたいな服装だし旅人はローブを付けているので明らかにソウの服装は浮いてる。
「毛皮でローブも考えたけどお金がないからもし売れた場合の収入が減っても困るしな…」
「ふふ…何だか貧乏くさいわね」
「うるせー!こっちだってこんな金を用意して置いて欲しかったよ」
「私達にそんなお金なんて必要ないんだからしょうがないでしょ」
そんな軽口をルビーと行っていると街の入り口とそこに向かって伸びる人の列が見えてきた。
ソウは列の最後尾に並んで前の人達の話を聞きながら異世界設定を考えた。
「ダナイーム帝国が近々戦争を起こそうとしていて近隣の村から人々が逃げてるそうだよ」
「そうしたらハンマール王国もまた防衛に力を入れないと行けないからこの街からもまた戦争への募集が始まるのかね」
(とりあえずこの街はハンマール王国に属しているのか…そしてダナイーム帝国とは敵対している)
そんな話を聞いていると徐々に列は進んでいき兵士の顔が見える位置まで進んできた。
(とりあえず戦うのは嫌だけど戦争に参加しようとして田舎から出てきたことにして街に入れるか試すか)
ソウが街に入る算段を立て終わると同時に顎髭の生えた男に呼ばれる。
「次、そこの少年」
厳つい顔に大きな声で驚いたソウだがすぐに呼ばれた男の元に駆け寄る。
「こんにちは、宜しくお願いします」
ソウはなるべく明るく顎髭の男に話かけた。
「ん、随分若いな。身分証はあるか?」
ソウは少し焦ったが落ち着いた口調で応える。
「俺の村にはそんなモノなかったよ。近々大きな戦争があるから兵士の募集もあるって聞いて村から出てきたんだ」
すると顎髭の男はため息を吐いて言った。
「また兵士志望のガキか…命を粗末にするな帰りな!」
(なんだ?兵士の募集は無いのか…ってことは街へ無理に入るのはやめるか…)
ソウは焦った感情が表に出ないようにゆっくりと質問する。
「兵士の募集は無いんですか?」
「基本的に兵士は貴族が学校を出てなるもんだ。平民は冒険者になって最前線に出る!そこで武勲を立てれば兵士や騎士になれるが死んだら元も子もない辞めときな!」
顎髭の兵士の声は厳しいがその表情は子供を心配する大人の目をしていた。
「でも俺、村から追い出されるように出ていかされたからもう帰るとこがないよ」
ソウは出来るだけ悲しみに耐えるような声で顎髭の兵士に訴えかけた。
「口減しか…まったく!戦争が起こると毎回こう言った子供達がきてしまう…」
ソウの言葉に顎髭の兵士は考え込んだあと話始める。
「身分証の無いモノが街に入るには銀貨2枚が必要になる。これは身分証の発行料金と預かり金なので仮の身分証を冒険者ギルドや商業ギルドで渡して新規の身分証を発行すれば1枚はギルドで返ってくる」
「ちなみに身分証を発行しないとどうなるんですか?」
「追加の銀貨を1ヶ月ごとに納めにくるか1ヶ月以内に街を出て行かなくては犯罪者として捕まえる」
ギルドで発行した身分証は年単位で更新手続きがある。
冒険者であれば毎回のクエストから更新手続きの費用が天引きされており年間で金貨1枚分を積立ておけば更新時にお金は掛からない。
依頼を受けてないモノは金貨5枚を払う必要がある。
商業ギルドでも同様で売上の一部を積立する形だ。
お金の種類は銅貨、半銀貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、大白金貨がある。
銅貨は10円、半銀貨は100円、銀貨は1,000円
大銀貨10,000円、金貨100,000円、大金貨1,000,000円、白金貨10,000,000円、大白金貨100,000,000円位の価値になる。
顎髭の兵士の話を聞いてソウは伝える。
「お金は道中で落としてしまったんだけど魔物の素材があるからそれを買い取ってもらうことはできない?」
そう言いながらバックからオルトロスの牙と爪、毛皮を出す。
「これはかなり上位の魔物の素材のようだがどうしたんだ?」
顎髭の兵士は嘘は見逃さない雰囲気でソウを見てくる。
(えっ、これ盗んだとか疑われてるなのか…)
「他の魔物と戦っていて死んでいた所を俺が素材だけ持ってきたんだ。大きい狼で首が2つ着いてたんだよ。」
「それは双頭狼、デュアルヘッドウルフじゃないか‼︎ 魔核の森の奥にいる様な魔物だぞ!キミはいったい何処から来たんだ?」
「えっと…道に迷って森を彷徨って森の出口付近にでた時に見つけたんだ」
ソウはしれっと森の手前で見つけたと嘘を付いた。
「魔核の森を彷徨って死ななかったなんて運がいい…とにかく買取をするにしても一度冒険者ギルドに持ってかなくてはならない」
「ちょうど私が休憩に入るから一緒に着いて行こう」
顎髭の兵士とソウは兵士の監視の元、冒険者ギルドに向かうことになった。
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