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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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―追求―


 ローリーの家のリビングのソファに緊張しながら座っていると、階段を降りてくる音がしてリックさんがリビングに現れた。思わず立ち上がりそうになるが、手で制されたのでそのまま座っておく。

 そしてリックさんはリビングの奥にあるキッチンへと行く。何か作業しているので、きっと飲み物でも用意してくれているのだろう。


 ――リックさんってローリーのお兄さんだけあってマメなんだよなぁ……。


 ローリーを潰した俺を話があるからと言って飲み物まで振る舞ってくれるリックさんだから、俺も素直に怒られようと思うのだ。


「はい、どーぞ」


 暫くしてカチャリと俺の目の前に置かれたのは温かいコーヒーだった。


「ありがとうございます」


 向かいの席にコーヒーを飲みながら座るリックさんにお礼を言う。

 俺も有り難く頂く。外は少し寒かったので、その温かさに落ち着いた。


 少し飲んで一息吐くと、待ってましたとばかりにリックさんが口を開いた。


「それで?アリオンくんはいつ自覚したの?」


「へ?」


 リックさんの突然の質問に頭が追いつかず、間抜けな声を漏らした。


「ローリーへの気持ちだよ」


 その言葉にカッと顔が赤くなったのがわかった。


「……あ……」


 リックさんの確信している口振りに驚き、まともな言葉は出ずに口をはくはくさせてしまう。


「この前会った時はまだ気づいてないのかと呆れてたんだけど。見込み違いだった?」


「えっと……」


 どんどん言われる質問に、何から答えていけばいいのかわからなくなる。

 この前とは、稽古をつけてくれた時だっただろうか。それはいつだったか……いや、今日気づいたばかりだからリックさんの見込み違いなんかではないのだけれど。


「ちなみに正直に言わないとローリーと話す許可もあげないから」


 俺がパニックになっている所にそんな理不尽が落とされる。


「それは横暴では……」


 思わず漏らした不満にリックさんはにっこりと笑った。


「何か言った?」


 その笑みが恐ろしくて首をぶんぶんと振る。


「いえ……何も……」


 俺が、正直に言えばいいだけだ。

 そう思いながら、ローリーが好きだと言う事実を口に出そうとするだけで羞恥心が湧き上がってくる。

 マスターも確信している様子だったけど、好きとかは言わなくても理解していたのが有り難かった事に今更気づく。


 ローリーの兄であるリックさんに対してはきっちり言わなければならないだろう。


「で?どうなの?」


 考える間を与えてくれないようにリックさんからの追求がくる。


 俺は一度深く息を吸って、吐いた。そして、リックさんを真っ直ぐ見つめて口を開く。


「……今日の昼間、……自分が、ローリーを好きなことを、自覚しました」


 言葉は少し震えてしまった。


 可愛がってる妹のローリーを好きな男にリックさんがどう反応するのか分からなくて、息が詰まる。


 俺の気持ちは俺が自覚する前からバレてたみたいだが……。


「…………今日?」


 リックさんは俺の言葉に珍しくポカンとした表情をして、首を傾げた。


「はい、今日です」


 疑問形だったので肯定する。

 

「…………今日」


 今度は疑問形ではなく、確認するように呟く。


「はい……」


 ……これはどういう反応なんだろうか。


 リックさんは顔に手を当てて覆った。


「…………そう、今日…………って、君自覚が遅すぎだろう!?あんっなに分かりやすくて騎士団内に君がローリーを好きっていう噂まで流れてて、やっと!?今日!?」


 吐き出すように言われた言葉に恥ずかしくなりぐっと唇を噛み締めた。

 この口振りだとリックさんは随分前から俺も無自覚だったローリーへの気持ちに気づいていたみたいだ。


「う……リックさんは……気づいてたんですね……」


 一体いつから気づいていたのか気になったが、答えを聞くのが怖いので聞かないでおく。


「いや、気づかない方がおかしいっていうか……。アリオンくん、ローリーにだけは甘々だし……君がローリーと接する時の態度見たらわかるよ。ローリーが可愛くて仕方ないって態度に出てる。まあローリーが可愛いのは当たり前なんだけど」


 ……俺も確かにローリーが可愛いのは当たり前だと思っていた節があるので何も言えない。その気持ちが態度に表れていたなんて、恥ずかしさに顔を赤くしながら聞く。


「そんなにわかりやすいんですか、俺……」


「そうだね、見てればすぐにわかるよ。ま、ローリーは僕が過保護にしてたから、アリオンくんもそんな性分だって思ってるし。実際君も妹さんに過保護みたいだしね。その意識にプラスして、君がなっがいこと自分の気持ちに無自覚のまんま過保護にしてたから、君はただ単に過保護な性格だって思っててローリーは気づかないだろうけど」


 リックさんの呆れたような言葉に確かにそうだろうなと思った。ローリーは俺がローリーを妹のように過保護にしていると思っている節がある。……実際に妹のようだみたいな事を言ったような気もする。


「まあ、そうでしょうね……」


 ローリーに悟られないようにしないといけないと思っていたが、無用な心配なのかもしれない。今までの積み重ねを鑑みれば、ローリーが俺の気持ちに自分から気づくことは難しいだろう。


 それを喜ぶべきなのかどうなのかわからない。

 マスターに言われた、言わないと伝わらないという言葉が思い浮かんだ。


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