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もしも

「カリナは私を信頼し過ぎだと思うの」

　困ったように笑いながら少しは疑った方がいいと、言外に忠告する。それでも、信頼されていることが嬉しいと、今は素直に思える。

　自分の気持ちがちゃんと分かって、真っ直ぐなカリナを見ていると自分の穢らわしいと思っていたものさえ、そんなことはないと言われているようで。

「信頼するよ、ローリーだもん。ユーヴェンさんが助けてくれたのだって、ローリーが紹介してくれたからだよ？だから、ローリーが助けてくれたのも同然だね！」

　カリナが屈託なく笑って言ったその言葉に、思わず笑ってしまう。

　そうだ、カリナは真っ直ぐで眩しくて、そんなところが私も大好きで、信頼していて。

　私にとっても、大切な友達。

　そんな友達を傷つけたくなかったのだ。だから、気持ちに気づいても普通にしようとしたし、バレないように嘘を吐いて隠そうとしていた。

　――私は、カリナを傷つけたくなかった。

　胸の中に落ちた気持ちは、カリナの言葉と一緒に優しく広がっていく。

「……ふふ、強引な理論ね。でもユーヴェンなら、紹介してなくても助けたと思うわよ」

　笑ったままそう告げる。するとカリナは可愛く笑ってから困った顔をした。

「えへへ。……んー、でも私は初対面の男の人信用できないから、来た時点で増えた！って考えるから走って逃げるよ」

　その言葉に目を見開く。

　カリナが走って逃げる？その選択肢は考えていなかった。つい言葉が漏れる。

「え、走って……？」

「これでも逃げ足には自信があるんだ！」

　得意気な顔で言うカリナに、堪えきれずに噴き出して笑う。

「ふふ、そうしたら助けようとしたユーヴェンが気の毒ね」

　笑いで声を震わせながら返す。

　――そうか。カリナとユーヴェンは私が紹介しなければ、出会わなかったのか。

　痛みが深くなるような、それでも安心を覚えるような、正反対の感情が入り混じるなんとも形容しづらい気持ちだ。　

　カリナも楽しそうに笑って、私の頬に当てていた手を離す。

　その少し安心したような笑顔を見て気づく。私の元気がなかったことをカリナは気づいていたのかもしれない。理由までは分からないだろうけど。

　カリナは敏い人だから。

　――本当に、敵わない。

「ローリーが紹介してくれないと、認識もしてないから仕方ないよ。あ、でもローリーの友達だ、くらいは思ったかな？でもたぶん逃げてからローリーに言うぐらいしかしないと思う」

　腕を組みながら考えているカリナの言い様に、笑いが止まらない。

　私がユーヴェンを紹介しなければ、誤解された可哀想な友人というポジションになっていただろうユーヴェンのことを考えると可笑しくてたまらない。

「ふふふ、カリナってば」

「ローリーは今まで助けてくれたことを誇ってくれていいんだからね。ユーヴェンさんはたまたま今回、ローリーより近くに居ただけだよ」

　カリナは私がユーヴェンと私を比べた事が嫌だったのだろう。私に言い聞かすように目をじっと見てくる。

「ふふ、そうね」

　私は観念したように、笑いながら頷いた。

「ローリーが私を守ってくれたこと、守ろうとしてくれること、私すごく感謝してるよ。ありがとう、ローリー」

　カリナは優しく笑って言う。

「ううん。私こそありがとう、カリナ」

　私の返事に満面の笑みを浮かべるカリナはやっぱりとても可愛かった。