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―好きなもの―

サブタイトルを――で挟んでいる時は別人視点です。


「ふう、疲れたな」


 訓練の合間の休憩時間。汗を拭きながら思わず疲れを滲ませた呟きを漏らしていると、近寄ってきた同僚から声をかけられる。


「なあブライト、お前どっか行ってた方がいいんじゃね?」


 不思議な申し出だが、そう言った同僚の視線の先を見ると得心がいく。俺の近くで休憩していた別の同僚達もそちらの騒ぎを見て呆れたような溜め息を吐く。


「ああ、またか。確かにブライトが巻き込まれたら、更に酷くなりそうだ」


 伝えにきた同僚とは別の同僚も同意するので、俺は深く溜め息を吐いた。

 視線の先ではお決まりのキャリーとフューリーの言い争いが始まっていた。


「お前とキャリーの仲が改善されたと思ったら、フューリーの方が更に酷くなったもんな」


「しかもこの前はブライトがフューリーに巻き込まれたのをキャリーが庇ったもんだから、更に言い争いが酷くなるし」


「あいつの愛情表現どうにかなんねぇのかな」


「それ、フューリーに直接言えよ」


「いや、言えないだろ。あいつキャリーを好きな事自体否定してんだぜ?」


 同僚のこそこそと会話する内容に苦笑いする。

 ローリーには俺の憶測だとは言ったが、騎士団の同僚内ではフューリーの気持ちはバレバレだ。だが直接聞いても否定されたりはぐらかされるらしいので、全員の憶測ではあるのだが。


「ま、何にせよ俺は少し抜けるわ。次の訓練の開始、30分後だったな。それまでには戻る」


 そう言ってキャリーとフューリーの目には触れないよう、王城側ではなく裏庭側に向かう。同僚達は手を振りながら了解の返事をした。


 どこに行こうかと考えながら歩いていると、低い生け垣にぶつかる。確かこの先は渡り廊下がある場所だったはずだ。低いながらも生け垣をわざわざ越えようとするやつはいないだろう、そう考えて生け垣を越える。渡り廊下の柱の陰になる位置に座り込み、ひと息吐く。


 キャリーとの間を取り持ってくれたローリーは、俺がこないだフューリーの事を言ったからかフューリーの事も気にしてくれている。更に仲が悪くなったなんて言ったら、どうしたものかしらと心配してくれそうだ。そう考えて笑みが漏れる。


 そういえば、ローリーの様子がこの間少しおかしかったように思う。もし今日もあいつの様子がおかしければ飲みにでも誘うか。


 そこで、この間の会話を思い返す。メーベルさんとキャリーに言われた事が、少し引っ掛かっていた。


「……好きな人に対する接し方と思われても、仕方ない、か」


 ぽつりと呟く。

 正直、好きな人なんていた事がないからわからない。俺にとってローリーはずっと大切な友人だった。

 ただ、ローリーはユーヴェンを好きなんだとずっと思い込んでいた。気の知れた友人達だ。もし付き合うなら祝福しようと思っていた。

 だがそれはローリー自身に否定されたし、ユーヴェンだってメーベルさんを本気で好きみたいだ。俺だけがそう思っていたなんて恥ずかしい勘違いだ。


 ――あんまり考え過ぎるのもよくないってことか。


 思いっきり顔を上げて空を見る。今日の空は綺麗に晴れ渡って澄んでいる。その綺麗な空はまるで、ローリーの瞳の色のようで思わず笑みが零れる。


 ――俺、あの瞳の色結構好きなんだよな。


 澄んだ碧天のような瞳はいつも色んな表情をして見ていて飽きないし、あの瞳を細めて笑うローリーを見ていると落ち着く。


 そう思い返していた時、視界の端に見覚えのある綺麗な亜麻色の髪が過った。


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