彼の親友で私の友人
「おい、ローリー」
昼食を食べて用事があるカリナと別れた後、中庭で食後のおやつを食べているとなんとも乱暴な言葉の声掛けをされた。
声を聞いただけで誰だかわかったが、乱暴な声掛けな事もあってからかってやろうと悪戯心が湧いた。
「おいなんて声を掛ける知り合いなんて知らないわね」
ちっと舌打ちをされる。殴ろうかしら。
「ローリー・ガールドさん、少しよろしいですか」
舌打ちをする知り合いなんていない、と返そうかと思ったがこのままではいつまで経っても話が進まない。
わざとあからさまに深い溜息をついてから、向き直る。
「アリオン・ブライトさん、何か御用かしら」
自分が浮かべられる中でも極上の笑みで振り返る。
その先にいた、学園での同級生でユーヴェンの親友。そのお陰で私の友人でもある、今現在は見習い騎士のアリオンは頬を引き攣らせた。
「あのなぁ、これは何の時間なんだよ」
「んー、儀式?」
「一体何の儀式だ!」
「冗談よ」
「はあ。ったく」
橙色に近い茶髪を手でかき上げて悪態をつく。灰色に近い灰褐色の切れ長の目を細め、アリオンはこちらを見た。
その整った容貌を見て、顔はいいから群青色の騎士の制服も似合うのよね、なんて事を思いながら見つめ返して口を開く。
「それでどうしたの、今休憩中?」
「ああ、そうだよ。お前は?」
「私も休憩中よ」
「なら丁度いい」
私が座っていたベンチの横に座ってくる。しょうがないと思いながら横を開けておやつを差し出す。
アリオンはサンキュ、と言いながら摘んだ。
「お前昨日怒られてたみたいだけど、大丈夫なのかよ」
……スカーレットに怒られていた所を見られていたようだ。
「大丈夫よ、あれは私が悪いから。それにもう分かりあえたわ」
そう、カリナが可愛いということでスカーレットとは分かりあえた。しかし見られていたのは恥ずかしい。
「にしても見てたなら助けてくれてもよかったんじゃない?」
だからかつい憎まれ口を叩く。
「いや、見てたらキャリーも本気で怒ってる風じゃなかったから……まあ大丈夫かな、と」
アリオンは悪びれもせずおやつを摘む。私はなんとなく悔しくなって同じくおやつを摘んだ。
「……少し怖かったわよ」
「お前が悪い事したって分かってるんなら、そりゃ怒られて当然じゃねぇの」
「うぐっ」
流石に分が悪い。しかし……ならどうして話し掛けてきたのか。
少し考えて自然と口端が緩む。素直に口にはできないのでニヤリと悪い笑みを作る。
「そんな風に思いながらも、アリオンは心配して今声を掛けてくれたのかな?」
からかって言いながらも、きっとこの推測は当たっている。私も素直じゃないがアリオンも素直じゃないのだ。
だが心配されて悪い気はしない。嬉しいからこそからかって言ってしまう。たぶんアリオンも私がどう思っているか分かるだろう。私が分かったように。