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彼女の決めた事


 カリナはしばらく悩んでいたようだが、じっと私を見つめてゆっくりと口を開いた。その仕草に胸が鳴る。


「……私ね、ローリーはその人……グランドさんの事好きなのかなって思ってたんだけど……」


 思いがけない言葉に私は口を開けて変な声を出した。


「へあ!?何それ!?」


「違った……みたい?私、男友達いなかったから……その……距離感?とかよく分からなくて」


 カリナは違ったことを言ってしまったのが恥ずかしかったのか顔を赤くして下を向いた。


 ふふふ、と思わず笑みが零れる。カリナのことを可愛いと思った。


「謝らなくていいよ。でも本当に違うからね?ユーヴェンと私は友達!好きとかそうゆうのじゃないわ。だから私に気を遣わなくていいの」


 そう友達だ。ユーヴェンの事はとてもいいやつだと思っているが、それだけだ。

 可愛いくて男慣れしていないカリナを任せるなら、ユーヴェンしかいない。


 だけどなんだろう……少し胸がざわつく感じがある。何か不安なんだろうか……それは何故?

 カリナがユーヴェンと合うのかどうかが不安なのかな。男性に免疫の無いカリナに紹介する、というのはやはり私も緊張してしまうのかもしれない。きっとそうだ。私はそう結論づけた。


 私の言葉を聞いて、それでも下を向いて首を傾げながら迷っていたカリナは暫くしてから顔を上げた。


「あのね……えっと、ローリーがいいなら……その……会ってみたい、と思う」


 一大決心なのだろう、真剣な眼差しだった。


「私、全然男の人に慣れてないから……ローリーにもいつも助けてもらってるし……少しでも慣れたいなって思って……」


 眉を下げながら言うカリナに堪らなくなって私は思わずカリナを抱きしめる。


「カリナ可愛いー!いいのよ、そんなこと気にしなくて!私が好きでやってるんだし。いくら友達のユーヴェンとは言え、二人きりでは会わさないから。私も一緒に行くからね!」


 そう言うと少し安心したのかカリナは小さく笑った。


「ローリーが一緒なら心強いよ。ありがとう」


「うん、任せて!」


 二人で笑い合う。


 この時の私は無事に許可をもらえた達成感と必ず成功させる!という責任感でいっぱいだった。心の隅にあった不安のような陰りはその気持ちに隠れて見えなかった。


「よし!そうと決まればあの高級チョコレート店フェルミールのスペシャリテ確定ね!カリナ一緒に食べようね」


「え?何の話?」


 きょとんとして私に聞いてくる。


「カリナをユーヴェンに紹介する紹介料よ」


 そう言うと驚いたのか一瞬目を見開いた。それから目を細めて責めるように私を見る。


「ローリー……」


 いつもより低い、呆れたような声色で私の名を呼ぶ。


「そんな目で見ないでよー。カリナが嫌がったら紹介やめるつもりなのは本当よ?」


「そこは疑ってないよ」


 苦笑しながらそんな事を言う。思わずもう一回抱き締める。


「ありがとう、カリナ。でもね、タダでこんなに可愛いカリナを紹介なんてできないわよ!スカーレットも呼んで一緒に食べましょう」


「うーん、売られた気分……」


「えー、そんなこと言わないで!ちゃんとしたやつじゃないと紹介という言葉も出てこないから!」


「ふふ、冗談だよ」


 そうやって、笑い合った。


 ***


 その日の就業後、そう言えば言ってなかったと思ってスカーレットにチョコの事を言ったら一時間説教コースになった。

 真っ赤な髪を逆立て、琥珀色の目を三角にして怒るスカーレットはただただ恐怖でしかなかった。

 でもタダで紹介は嫌、という私の意見に最後は同意してくれて、しょうがないから存分に堪能するわよ!と一緒に食べてくれる事になった。

 やっぱりカリナをタダで紹介なんて嫌よね!


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