笑い話として
それぞれ頼んだ飲み物を飲んで一息つくと、スカーレットが躊躇いがちに声を掛けてきた。
「ねえ、聞いてもいいかしら?」
「どうしたの?スカーレット?」
その様子を不思議に思いながら聞く。
「学園の頃何かあったの?」
スカーレットの言葉に納得する。さっき学園時代の事に言及したから気になったのだろう。この前ユーヴェンと会った時もそんな話はしていなかった。
「……実は私も気になってた」
苦笑交じりにカリナも言う。私はどう言おうか考えてから、なるべく簡潔になるよう話す。
「ああ。んー、そうね。私とユーヴェンとアリオンが仲良くしてたら、学園時代ちょっと女子にハブられてたってだけよ。それでアリオンが自分が原因だと思ってるって話よ」
「お前、あっけらかんとしてんな……。別にそんなことはねぇよ……」
妙に歯切れが悪いので、自分でも薄々そうだと思っているのだろう。先程も私が糾弾したりカリナとスカーレットから小言ももらったりしたので色々と考えることもあるのかもしれない。
「もしかしてこの前言ってたブライトが女の子への接し方直そうとしたのもその時なの?」
スカーレットが私の言葉にピンときたように聞いてくる。
「あー、なんか色々言ったって言ってたな……。そうだよ、そん時」
そう言ってアイスコーヒーを飲むアリオンを見てから私を見るカリナ。
「だから過保護?」
私に問いかけるように言ったカリナの言葉に反応したのはアリオンだった。
「ぐっ……過保護って……」
「別に私が気にしてないのにいつまでも気にしてるから過保護でしょ」
悔しそうな顔ながらもそのまま黙っているのをみると思う所があるらしい。その様子に苦笑が漏れる。
「ローリーは大丈夫だったの?」
カリナが心配そうに聞いてきたので、それに笑って返す。
「んー、当時は落ち込んだこともあったけどね。でもこいつの方が落ち込んでんだもん。ずっと落ち込んでなんかいられなかったわよ」
アリオンを指差しながら言うと、アリオンにとっては重い追撃だったらしく落ち込んだ声で返される。
「俺のせいで落ち込めなかったと……」
「冗談よ、あんたのお陰ってこと。それに最後はクラスみんな仲良くなったじゃない。だから気にする必要なんてないのよ」
流石にここまで落ち込まれると思わなかった私はアリオンの顔を覗き込みながら言う。
「それはお前のそのさっぱりとした性格のお陰だろうよ」
少し回復してきたのか半眼で見ながら言ってくるアリオンに私はにっと笑って答える。
「そうなのかしら?じゃあ感謝しときなさい」
「へいへい、感謝してるよ」
言い方は投げやりだがふっと笑うアリオン。
「ふふ、ローリーはやっぱり優しいね」
カリナも笑いながら褒めてくれる。
「ありがと、カリナ」
「ローリーと友達になれて本当によかったと思うわ。話してくれてありがとう」
スカーレットにまで言われるとなんだかくすぐったくなってくる。
「なんかそこまで褒められるとくすぐったいわね……」
「お、珍しいな。お前が恥ずかしがるなんて。大体いつも飄々と躱すくせに」
落ち込みから完全に回復したのかからかうように言ってくるアリオンを睨む。
「うるさいわよ、アリオン。この前だってあんたに恥ずかしがっとけって言われた気がするんだけど?」
「あー、そういやそうか?でもお前ユーヴェンに対してはよく恥ずかしがってるよな」
何ともなしに言うアリオンに噛みつくように反論する。
「あれはあいつが真っ直ぐ過ぎなのよ!あんたもよく恥ずかしいからやめろって言ってるでしょ」
「はは、まあ同意するわ」
からっと笑いながら言うアリオンに溜め息を吐く。元気になったのなら何よりだ。




