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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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カリナの誘い


「カリナ、どうする?」


 就業後、私はユーヴェンを待っている間にカリナに問い掛けていた。

 カリナはむむっと眉を寄せている。でも頬は赤い。


「言うのなら、私……アリオンと星祭り行くって事を……今日伝えるけれど……」


 ユーヴェンが来る前に、カリナが星祭りにユーヴェンを誘うと言っていた事を話していたのだ。

 カリナもユーヴェンに言い出すきっかけがあった方がいいだろうと思って申し出ておく。


 カリナは黙ったまま更に難しい顔をした。


「まだ言わないならまた今度伝えるわ。星祭りまだまだ先だしね」


 ユーヴェンが言い出したら言わなければならないだろうけれど、たぶん先なので言い出さないと思われる。


 カリナはますます眉を寄せる。悩んでいるようだ。


 カリナは一度深く深呼吸をして赤い顔で口を開いた。


「…………きょ、今日……い、言うよ……」


 その言葉に目を見開いてから笑みが漏れた。そんな私にそっぽを向きながらカリナが理由を零す。


「だ、だって……は、早く言っておかないと……ゆ、ユーヴェンが、言い出しちゃう……でしょ……?」


 そう言ったカリナに苦笑交じりに頷く。ユーヴェンは普通にみんなで行こうと言い出しそうだ。


「わかったわ。じゃあ今日伝えるから……カリナ頑張ってね」


「う、うん……」


 カリナは自分の黒髪をくるくると指に絡ませながら頷いた。


「カリナ、ローリー。お疲れ様」


 魔道具部署の入口からひょこっと顔を覗かせて私達を呼ぶのはユーヴェンだ。とても嬉しそうな顔をしている。きっとカリナに会えて嬉しいんだろう。表情からだだ漏れだ。

 カリナがパッと下を向いた。その顔はぐぐっと難しい顔をしている。……大丈夫なのだろうか。


「お疲れ様、ユーヴェン」


 とりあえずユーヴェンに返事をして入口の方へと向かう。カリナをちらっと見ると、まだ難しい顔だ。


「……カリナ、どうかした?」


 ユーヴェンは心配そうな顔でカリナを見た。


 カリナはふるふると首を振って歩き出す。


「は、早く、か、帰ろ!」


 カリナはつっかえながらそう言って早歩きで歩いていく。

 私とユーヴェンは後を追った。


「なあ、ローリー。カリナなんかあったのか?」


 眉を下げているユーヴェンに苦笑する。


「少し気負っているだけだから大丈夫よ」


「気負ってる……?」


 ユーヴェンは更に心配そうな顔をした。


 カリナの緊張を解くために早めに話を切り出そうと決意しながら笑った。


 早歩きで歩いていくカリナを追っているとすぐに王宮を出た。いつもの門番さんも早歩きの私達に目を瞬かせていた。


「カリナ」


 王宮を出た所でカリナを呼び止める。


「ど、どうしたの、ローリー?」


 ――……駄目だわ、とっても混乱してる……。


 少し考えてカリナに小さく聞く。


「今日はやめておく?」


 それにピタッと止まるカリナ。私も慌てて止まる。


 ちらりと私を不安そうに見て目を伏せた。暫く考えた後、首を振る。


「だ、大丈夫。……ローリーを……掴んどくから……」


 そう言って私の腕にぎゅっと抱き着いてくる。とっても可愛い。

 思わず笑みを零すと、ユーヴェンが不思議な顔で私達を見ていた。心配そうな羨ましそうな顔だ。


 ――ユーヴェンにはまだ早いわよ!


 そう思いながら鋭い目をユーヴェンに向ける。ユーヴェンはそっと目を逸らした。


「ユーヴェン」


 それでもとりあえずカリナを緊張から解放しようと思って早速ユーヴェンを呼んだ。

 カリナが更にぎゅうっと抱き着いてくる。


「……なんでしょうか……?」


 さっき鋭い目を向けたからか、恐る恐るこっちを伺っている。

 ……何気に私もユーヴェンにアリオンと二人で星祭りに行くという事を伝えるのはちょっと緊張する。


 ずっと三人で行っていたのだ。なのにアリオンと二人で行くと言うのは関係性が変わったという宣言に近い。……たぶんカリナの事がなければずるずると言う事を先延ばしにしていただろう。


 ――カリナの為に言うもの……!


 そう考えて気合いを入れて口を開いた。


「あの……今年の星祭り……アリオンと……二人で、行くから……」


 少し目を伏せながら言ってからユーヴェンを見ると、パチリと目を瞬かせていた。なんだかきょとんとした顔である。


 ――あれ……?そういえば……アリオン、ユーヴェンに言ったりしたのかしら……?


 思えばアリオンの方がユーヴェンに会う機会は多かったはずだ。けれど立ち話が多いという事も言っていたし……。


 ユーヴェンは頬を掻きながら笑った。


「あー、うん。アリオンから聞いたよ、ローリー。……まあ寂しいけど……二人で楽しんできて」


 少し寂しそうにしながらもそう言ってくれるユーヴェンはいい友達だ。

 ……けれどちょっと気が抜けてしまった。一応私も緊張したのに。


 とりあえず気を取り直してカリナの腕をトントンと叩く。

 ……カリナの抱き着く力が強まった。今深呼吸をしているみたいだからもう少し話を引き伸ばそう。


「聞いてたのね、ユーヴェン……。アリオンいつ言ったの?」


「今日の朝教えてもらった。また勝手にシオンに言うなよって言われてて……黙ってたんだよ」


「まあ……シオンって顔が広いからすぐに広まっちゃうのよね……」


 シオンはポロッと零してしまう事があるのだ。特に浮かれた感じだと危うい。……なんだか私とアリオンの距離が近づいている事をとても嬉しそうにしていたので、あれは危うい兆候である。


 ――クラスのみんなに言うのはわざと言おうとしてたけど……!


 きっとみんなで『見守っていた』から言おうとしたのだろうけど……せめて付き合うとか何か大きく動いた時にして欲しい……。


 ――それもそれで恥ずかしいのだけれど……!


 でもいちいち全て報告されるよりマシだと思う。……たぶん。


「その時……色々と話したんだけど……」


 そう言いながらちらりとカリナを見た。ユーヴェンは頬を赤くしている。けれどカリナの様子を見て苦く笑った。


 カリナは私の後ろに隠れるようにしながら未だに深呼吸中だ。たぶん今の話も聞こえていなさそうだ。


 ――アリオンもカリナを誘ってみればいいって言ったんでしょうね……。


 でもカリナが今こんな状態の為、言い出せないのだろう。


 ――まあカリナから誘われるなんて思ってもないでしょうけど。


 少しにやついてしまいそうになるけれど必死に堪える。


 ――驚く顔がきっと見物だわ。けれど……カリナ大丈夫かしら……。


 カリナの様子を見ると、深呼吸をしながらもだいぶ落ち着いている。

 きゅっと気合いを入れるように顔に力を入れていた。とっても可愛い。


「ゆ、ゆ、ゆ、ユーヴェン!」


 そうしてカリナはユーヴェンの名前を大きな声で呼んだ。


「は、はい!」


 その大きな声に驚いたユーヴェンは目を大きく見開きながらカリナを見る。

 何を言われるのか少し不安そうである。……まあ昨日からよく名前を呼ばれて怒られているからだろう。


 カリナは少しパクパクと口を開いたり閉じたりして……そしてぎゅっと目を瞑って言った。


「ほ、星祭り、一緒に行こ!」


 カリナの叫ぶような誘いに、ユーヴェンは顔を真っ赤に染めた。



読んで頂きありがとうございます。

更新が遅くなりすみません。

これからもよろしくお願いします。


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