カリナとスカーレット
「そうだわ、スカーレット。今度アリオンと一回ちゃんと話してみない?」
微笑みながらスカーレットに提案する。この調子であればきっといい返事がもらえそうだ。
「ええ、そうね……。一度ちゃんと話してみるわ。……ローリーも来るのよね?」
「うん、もちろん。私が言い出したことだし」
そう笑って言うと、少しほっとした顔をした。やはり一人だと不安なのだろうか。
「……ねえ、スカーレット、ローリー。その話し合いに私も行っちゃダメかな?」
「え、私はいいけど……」
カリナの申し出に少し戸惑った顔をするスカーレット。なんとなくカリナの目的がわかった気がする。
「んー、そうね。なんだか話し合いだけだと仰々しい感じがしちゃうし、話し合いが終わったら遊びましょうか」
私がそう言うとカリナは嬉しそうな顔をする。話し合いが重くなりそうだったのを感じて少しでも場が明るくなればと思ったのだろう。
「……いいのかしら?」
申し訳なさそうな顔でスカーレットが言う。この感じだとアリオンも謝られ過ぎて困りそうな予感がする。
「スカーレットは重々しく考えすぎだよ!あんまり謝られ過ぎてもブライトさん申し訳なくなっちゃうよ?だって明日も謝るんでしょ?」
そう言ったカリナに私も同意する。
「そうね。アリオン何回も謝られると困ると思うわ。それにあいつそういった雰囲気苦手なのよ。自分からは悪いと思ったらすぐに謝るくせにね。そうだ、あとで遊ぶならユーヴェンも呼んどきましょうか」
付け足した言葉にカリナは一度瞬きをして、笑って頷いた。スカーレットも眉は下げたままだったが頷く。
「そうだね、みんなで遊ぼう!私も初めてブライトさんに会うの楽しみだな」
「そうね。みんな居るならいい顔合わせになるかもしれないわね」
「ふふ、じゃあ言っておくわね」
きっと楽しいものになるだろう。そう考えていたら、ユーヴェンから預かったものを思い出した。
「そうだ、二人にこれ。ユーヴェンからね」
そう言って小さめの袋を渡す。不思議そうに受け取ったカリナとスカーレットは中身を見てあっと声を上げた。
「これフェルミールのチョコレート?」
ぱっと顔を上げてカリナが言う。スカーレットも袋の中を見たまま喋る。
「しかもこれスペシャリテじゃない?もしかしてローリーも貰ったの?」
「そうなのよ。私が皆で食べるって言ったらね、なんか三人分買ってきてて。今日二人とご飯を食べに行くって言ったら渡しておいてくれって言うから」
ユーヴェンはこういった所が律儀だと思う。感謝の気持ちもあるのだろうが、わざわざ一人ずつに用意するとは。
「ユーヴェン、二人とも会ってくれてありがとうって言ってたわ」
そう言うと、二人とも照れたように笑った。私もユーヴェンに真っ直ぐお礼を言われ、照れてしまったことを思い出す。あの真っ直ぐさにはいつまでたっても慣れない。
カリナは嬉しそうに袋を見つめていた。スカーレットは優しくカリナを見てから、私に向かって申し訳なさそうに笑った。
「なんだか悪いわね、私なんて元はいない予定だったのに」
「ふふ、いいんじゃない?まあ、三人分貰えると思ってなかったから、昨日奢らせたのは悪かったなーって思ったけどね」
苦笑しながら言うと、不思議そうにカリナが聞いてくる。
「昨日?奢らせたって、何かあったの?」
「それがねー、アリオンと私が付き合ってるって噂を私が知ったの、昨日だったのよ」
二人が驚いた声をあげる。それににっと笑って昨日の話をし始めた。
そのあとも色んな話をして、カリナやスカーレットの話を聞いて、美味しいご飯とお酒を堪能してとても充実した日になった。
この頃ずっと感じている引っ掛かりのようなものが、楽しかったはずなのに取れなかった。