観察対象
兄やアリオン達も食事を持ってきてみんなでお昼ご飯を食べる。わいわいとしていて楽しくて、その部分は兄に感謝してもいいかな、と思った。
……呼ばれた理由は恥ずかしかったけれど。
そんな中、少し静かだったスカーレットが難しい顔をしながら口を開いた。
「……カイン……かっこいいって思った事なんだけど……」
「え!?もしかしてお前ずっと考えてたのか!?」
フューリーさんが目を丸くして、フューリーさんの正面にいるスカーレットを見た。私は前に居るアリオンと目を見合わせる。
けれどアリオンの表情は芳しくない。……まあスカーレットのフューリーさんに対する態度を見ていたら期待しない方がいいのだろう。
「ええ……カインを可愛いって言い過ぎたのよね……。まさかそんな事を聞かれるなんて……」
そう言ったスカーレットに、アリオンは目を閉じて思った通りだという顔をする。
ーースカーレット……フューリーさんと仲直りできたの嬉しそうだったものね……。だからフューリーさんに言われた事を考えてたのかしら。
私の隣にいるカリナの隣に座っているスカーレットに目を向ける。申し訳なさそうな顔をしていた。
ちなみに反対側の隣は兄だ。
フューリーさんは溜め息を吐きながらスカーレットに返す。
「お前の中の俺ってどうなってんだよ……。俺だって可愛いよりも流石に……か、かっこいいとか言われた方が……嬉しいからな……?」
少し頬を染めながら言ったフューリーさんの様子に目を輝かせてしまった。
ーースカーレットとフューリーさんの様子、改めて見るとフューリーさんの気持ちが態度に表れてて観察し甲斐があるわね……!
ちょっとワクワクしてしまう。……ユーヴェンもカリナへの気持ちは分かりやすいけれど、先にユーヴェンへの苛立ちがきて突っ込んでしまうので観察なんてできない。
フューリーさんはちょっとした知り合いという立ち位置なので、突っ込まずに観察できるのだ。
そういえばこの中でもカリナはフューリーさんの気持ちを知らない。
気づいただろうかとカリナに視線をやると、目をパチパチとさせてフューリーさんを見ていた。
そして首を傾げる。フューリーさんの態度を疑問には思ったようだ。
スカーレットは頬に手を当てながら苦く笑った。
「そう……よね……。ちょっと……思い至ってなかったわ……」
フューリーさんはスカーレットに呆れたような目を向ける。
「……なんでだよ……。……それで…………思いついたのか……?」
「ええ」
少し期待しているような声で聞いたフューリーさんに、スカーレットは笑顔で頷いた。
「ど、どういう……時、だよ……?」
こちらにまで緊張が伝わってくるような問い掛けに、私まで息を呑んだ。
カリナがこちらを振り向く。驚いた顔でフューリーさんを見てからスカーレットへと目を移す。
もしかしてフューリーさんはスカーレットを好きなのか、という問い掛けだ。それに目を閉じて肯定の意を示す。
ーーやっぱりすぐ気づくわよね……。フューリーさん分かりやすいもの……。
カリナは大きな目を更に見開きながら、口元に手を当てた。その目はキラキラと輝いて……しかし途中で眉を寄せて首を傾げる。
きっと何故ずっと突っ掛かっていたのかが不思議なのだろう。私も最初はなんで?と考えた。
推測だけでも教えておこうと「あとでね」と小さな声でカリナに言う。
それに笑って頷いたカリナはフューリーさんとスカーレットの方に視線を戻す。
スカーレットは楽しそうに笑って口を開いた。
「小さい頃に」
「小さい頃に!?」
フューリーさんが大きな声で問い返した。……かっこいいって思った事も小さい頃の事らしい。
……兄とアリオンの方角から小さく噴き出す音が聞こえた。全くもって酷いと思う。
「ええ。6、7歳の時だったかしら……。肝試しで墓地に行った時……真っ昼間だったけれど……」
「…………ん?それは……?」
昔の事だから記憶を掘り返しているのだろう。目を宙に彷徨わせている。
それにしても真っ昼間に肝試しなんて可愛い事をしている。しかも王都の墓地は整備されているのでそこまで怖い雰囲気でもない。
スカーレットは懐かしむように笑みを浮かべながら話を続けた。
「私が怖いかもしれないからって前を歩いてくれたわよね」
そう言ったスカーレットは優しい表情だ。
「……おう……そうだった、か……?」
フューリーさんはまだ思い出せていないようで難しい顔をしている。
スカーレットはフューリーさんを見てにっこりと笑った。
「怖くても前を歩くカイン、涙目で頑張っててかわ……こほっ……かっこよかったわよ!」
「おい!?可愛いって言いかけてんじゃねぇか!?」
スカーレットが咳払いをして訂正したことにフューリーさんは鋭く突っ込んだ。……やっぱり不憫に思えた。
スカーレットは思いっきりフューリーさんから目を逸らした。
「き……気のせい、よ……」
「目まで逸らしてっけどな!?」
スカーレットにしてはしどろもどろな返答にフューリーさんは天井を見上げた。
悲しそうな表情である。カリナも眉を下げてこちらを見てきた。こんなにも見事に玉砕するなんて思ってなかったのだろう。
ちらっとアリオンの方も見ると、すぐに視線に気づいたアリオンが苦く笑って返した。
「……それは置いておいて……他に……えーと……5歳くらいの時……」
「また可愛いって思ったのをかっこいいって言い換えようとしてんな、スカーレット!?」
「そ、そんな事ないわ……」
またそんなやり取りをしているスカーレットとフューリーさんは仲が良くてふふっと笑みが零れてしまった。
「本当に仲が良いのね、スカーレットとフューリーさん」
そうスカーレットに声を掛けると、フューリーさんに詰められていたからかほっとしたように私に笑った。
「ええ……小さい頃はよく遊んでいたわ」
「へえー。学園時代はどうだったの?カリナがあんまり会ってなかったみたいって言ってたけど……」
昨日カリナから聞いた情報をカリナを見ながら言うと、カリナも肯定してくれた。
「うん。だってスカーレット、学園内ではほとんど私と一緒に居てくれたから……」
確かにスカーレットはカリナの事を守っていたんだから自然とそうなる。でもフューリーさんに今まで会っていないという事は、カリナが居る場ではスカーレットはフューリーさんに会っていなかったのだ。
そして学園内でほぼ一緒だったのならあまり会っていなかった、となるのも当然だろう。
スカーレットは私達にこくりと頷いて目を伏せた。
「ええ、そうだったわ。……カインとは……会ったら話す、ぐらいだったわね……」
フューリーさんもスカーレットをちらっと見てから頷く。
「……そうだな。学園入ったら昔みたいに遊ばなくは……なってたな。俺もスカーレットがメーベルさんに男を近づけさせたくないって守ってんの知ってたから、メーベルさんと一緒にいる時は話し掛けなかったし……」
もしかして……スカーレットに突っ掛かっていたはずなのに、カリナがフューリーさんを入学式以来見た事がなかったのは突っ掛かるにしてもカリナに近づかないようにしていたからなのだろうか。
ーーまあ……カリナがいる時に突っ掛かられてたりしたら……スカーレットすっごく怒るわよね……。
好きな人に嫌われる危険は冒せなかったのだろう。
「ふふ、そうだったわね……。……そうしたら……いつからか突っ掛かってくるようになったのよね、カイン」
少し意地悪気に言ったスカーレットの言葉に、フューリーさんは申し訳なさそうに縮こまった。
「うっ……わ、悪かったよ……」
「ふふ、冗談よ。昨日謝ってくれたし、別に怒ってないわ」
にこにこと笑っているスカーレットは機嫌が良さそうだ。
それに仲直りして嬉しそうだったスカーレットを思い出して頬を緩めた。
更新が遅くなりました。
最近更新がまちまちで申し訳ないです。
この先も色々と書きたい話があるので、なるべく毎日更新できるように頑張ります。
これからも読んで頂けると幸いです。




