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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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心臓の鼓動


「お兄ちゃん!フューリーさん可愛いわね!」


 兄が何かを発言する前に遮ってしまおうとそう宣言する。みんながいる前で幼い頃の話はやめて欲しいと目で訴えた。


 兄はおかしそうに肩を揺らす。


「ふふ、そうだねローリー。確かに可愛いよ。僕にとってはローリーが一番可愛いけどね」


 そう言ってくる兄に恥ずかしくて顔を赤くする。


「お兄ちゃんそんな事言わないでよ!恥ずかしいから!」


 隣にいた兄の腕をパシパシと叩く。

 兄はふっと口端を上げた。


 ――あ!なんか言うつもりね……!


 警戒するように眉を寄せると、兄はにっこりと笑った。


「でもねー……アリオンくんも幼い頃のローリーを見たら可愛いって言ってくれると思うよ?」


「!!」


「え!?」


 兄の言葉に目を見開くと、アリオンがとても驚いたような声を上げてこちらを見た。


 顔が赤く染まりそうになって、思わず兄を押す。


「な、何言ってるの!?お兄ちゃん!」


 ――い、いきなりアリオンに……何を振ってるのよ……!


 兄はアリオンにとてもいい笑顔で聞く。


「ね?言うよね?」


「はい!」


 勢いよく返事をしたアリオンにまた心臓が大きく跳ねる。


 ――うう……!みんなの前でもこれって……!


 みんなの視線が突き刺さっている気がする。とてもじゃないけど今はみんなの方を向けない。


 ――それにお兄ちゃんの言い方、頷けって言ってるようなものじゃない……!


「お、お兄ちゃん、それ脅迫に近い!」


 恥ずかしくて兄を叩きながら糾弾すると、アリオンがすぐに否定する。


「いやローリー、脅迫じゃねえぞ。今もすっげえ可愛いローリーの幼い頃なんてめっちゃくちゃ可愛いに決まってんだから、頷くのは当たり前だろ」


 そのアリオンの言葉に耐え切れなくなって顔を真っ赤に染めて叫んだ。


「あ、アリオンのバカ―!」


 そう言った後はそのまま兄の後ろに隠れる。兄の制服を掴んでアリオンの方を睨むように見る。


 アリオンは申し訳なさそうに眉を下げて頬を掻いた。


 ――ずるい……!アリオン、私がドキドキすることばっかり言ってずるいもん……!


 落ち着かなくて兄の服をぎゅうぎゅうと握ってしまう。


「はいはい、ローリー。そんなに怒らないんだよ。アリオンくんはお前の事に関しては素直だって知っているだろう?」


 兄が頭をぽんぽんと叩く。


 ジトっと兄を見る。そもそもこんな事になったのは兄の面白がる癖のせいだ。

 頬を膨らませると兄は苦笑した。


「僕も悪かったよ。アリオンくんがローリーの幼い頃の写真を見たいと言っていたから、つい言っちゃったんだ」


「り、リックさん!」


 兄の言葉に目をパチクリとさせる。


 パッとアリオンを見ると、恥ずかしそうに頬を染めて目を逸らした。


「……俺……ローリーの幼い頃の写真とか見た事ねえから……見てみたいと思ったんだよ……」


 きゅっと唇を嚙み締めながら顔を伏せる。

 駄目だ。顔がとんでもなく熱い。いや、全身熱い気がしてきてしまう。


「ほらローリー。お前がいいなら今度見せてあげたらいいんじゃないか?」


 兄の言葉に顔を伏せたままこくりと頷く。

 ちらっとアリオンを見ると、顔を輝かせて笑った。


 胸が熱くて、苦しい。


「ありがとな、ローリー。可愛いお前のちっちゃい頃が見れんの、すっげえ嬉しいよ。楽しみにしてっから!」


 崩した笑みで言われたアリオンの言葉に、息が詰まった。兄の背中に完全に隠れる。


 ――ど、ドキドキし過ぎて……む、無理……!


「うわー……アリオンすっげー。いっつもメリアに俺が猛アタックしてたってお前ら言うけど、アリオンのがすげぇんじゃね?」


「いや……シオンも大概だったぞ……。……まあこれは……想定以上だけど……。これはローリーが恥ずかしがっても仕方ない気がする……」


「そうか?しっかし……ローリーもアリオンの事だいぶ意識してるなーって思ってたけど……これされてたら意識すんのも当たり前に思えるな……」


「それは俺も思う……。アリオン……今まで頑なに認めてなかった癖に、気づいた途端こうなんのか……」


「なー」


 シオンとユーヴェンの会話がまた聞こえてくる。……私の気持ちはバレていなさそうな事に安堵した。


 ――ど、どう見たって……アリオンの猛攻すごいものね……!


 マスターやリュドさんも言っていた通り、溺愛がすぐわかるような態度なのだ。


「目の当たりにしたらすごいわね、カリナ……」


「うん……。ローリーから聞いてはいたけど、実際に見るとなんかすごいね……」


 スカーレットとカリナもそんな事を話している。


 私は顔を伏せたまま、兄の背中から離れてカリナとスカーレットの元へと向かう。

 二人共優しく私を受け入れて頭や背中を撫でてくれた。


 二人の元からアリオンを見るとなんだか申し訳なさそうな顔をしているので、軽く微笑んだ。

 するとアリオンはほっとしたように目元を緩めた。それに私も安心する。


 そうして落ち着いた所でスカーレットへの頼み事を口にした。


「スカーレット、今度フューリーさんの写真をカリナに見せましょうよ。まずは写真からの方がいいと思うのよね……」


「もー、ローリー……平気だってば……」


 私が言った事にカリナが頬を膨らませると、スカーレットが得意気に笑った。


「カリナ、私さっき今のカインの写真撮ってきたわよ!」


「え、そうなの?」


 カリナが驚いたように目を見開く。私も目を瞬かせてしまった。


 ――さっき連れて行った時に撮ったのね……。


 行動が素早い。


「カリナ、見る?」


 そうカリナに聞くとカリナは息を吐いた。


「大丈夫だよ、ローリー」


「ほら、カリナ。これよ」


 そう言って魔石の映写魔法を起動させたスカーレットは写真を宙に映し出した。


 そこにはスカーレットとフューリーさんが並んで映っていた。

 てっきりフューリーさんだけだと思っていたので少し驚く。


「二人で撮っているのね」


 そう呟きながら写真を見ると、スカーレットがふふっと微笑んだ。


「なんだか一緒に映って欲しいって言われたのよ。きっと一人で写真に映るの嫌だったんじゃない?カリナに見せるって最初から言っていたし」


 そう言ったスカーレットに目を丸くする。


 ――それ……スカーレットと一緒に撮りたかっただけね……!


 ……ちょっと羨ましい。


 ――私も……アリオンと一緒に写真撮りたいかも……。


 アリオンへと視線を向ける。

 今は兄とユーヴェン、シオンで話している。聞こえる内容的には仕事の話をしているようだ。


 ――もう少ししたら魔道具部署に行かないといけないわね……。


 ……学園の頃に一緒に撮った写真でも持ち歩いたら少しは寂しいのがなくなるだろうか。


 そんな事を考えながらアリオンを見ていると、アリオンがこちらを向いて目が合った。

 ふわっと綻ぶように笑ったアリオンに、きゅうっと胸が鳴いた。


 ――駄目……!す、すごくドキドキしちゃう……!


 本当に告白なんてできるのだろうか。告白する時は心臓が止まってしまいそうだ。


 百面相にならないように顔に力を入れていると、ふとカリナが何も言っていない事に気づく。

 カリナの方に顔を向けると、ぽそっと呟いた。


「…………本当にあの可愛さ残ってない……」


 カリナはとても残念そうに眉を下げている。


 やっぱり少しは可愛さが残っているんじゃないかと期待していたらしい。

 スカーレットと苦笑し合ってから、肩を落としているカリナを一緒に慰めた。


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