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縁遠いもの


「……ローリーはあまり恋愛する気がないの?」


 カリナが小首を傾げて聞いてくる。それに笑って答える。


「ま、今はそうね。今で十分楽しいから」


「ローリーがそれでいいならそうするけど……」


 私のその返事にスカーレットが頷くが、カリナと一緒に戸惑っている顔だ。二人共心配してくれているのだろうことに、笑みが零れる。


「ふふ、心配ありがとね。アリオンが否定してるけどなかなか消えないって言ってたから、どうせ消えないなら利用しようと思ってね」


 そう言うと納得したように頷いて、スカーレットは新たな情報を話しだす。


「あー、なるほどね……。そういえば、本人は否定してるけど絶対にローリーの事好きだと思います!って言ってた女の子がいたわ……」


「え?そうなの?」


 初耳の話に驚く。なるほど、アリオンがいくら否定してもそんな風に決めつけられていたら噂が消えないはずだ。

 思わず渇いた笑いが出る。たぶんこれは否定すればするほどなぜか信憑性が上がっていく負のループだ。今度噂を消すのは諦めたほうがいいと言っておこう。


「やっぱり他の女性とローリーへの接し方の差でそう見えるのかしら」


「うーん……ほんとに友達なんだけどなぁ。アリオンも、私をユーヴェンと変わりない扱いしてくるだけよ?」


 苦笑しながらいうが、これは学園でも通った道だ。しかし学園とは違って人が多く、自分達を知ってもらう機会もあまりない。この噂はこのままなんだろうな、と悟ってしまう。

 まあ、それならそれでいいのかもしれない。友人達はわかってくれているし、もし好きになる人が現れたとしても勘違いされてしまうならそれまでのことだ。そう思ってしまうのはいまだに好きな人がいた事がないからだろうか。


「それが特別に見えちゃうんじゃないかな?女の子って恋愛事大好きだから。別のことだけど、私も誤解しちゃってたし」


 眉を下げながら言ったのはカリナだ。ユーヴェンとのことを勘違いしたのを言っているのだろう。


「カリナは私とアリオンが話してるの見たことないんだっけ?」


「うん、そうだね。いつもローリーを呼ぶ声がしたら走ってどこかに行って、少ししたら戻って来てたから……たぶん話してるのはその時なのかなって思うけど」


「そうね、私もそんなことしてたわね……」


 仕方ない。少し前まではアリオンはおろかユーヴェンでさえも会わせる気がなかったのだから。

 ユーヴェンとカリナの前で話すようになったのは、カリナが男の人に少しでも慣れたいと言い始めた頃だ。それでも直接は会わせていなかった。呼ぶ声がしたらその場で待つようにしただけだ。先に行ってていいよ、とカリナに声を掛けて。見るだけでも慣れる一因になればいいと思っただけだったのだが……ユーヴェンが先にカリナに気づいた。

 少し過保護だったなと、この前思ったのがまざまざと思い返されて溜め息を吐いた。


「今度、ブライトさんとも会ってみたいな」


 そう前向きに言ったカリナに嬉しくなる。

 もしアリオンと会っているのをカリナが見ていたら、私がアリオンを好きだと勘違いされていたのだろうか。そう考えてくすっと笑う。


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