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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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幼い可愛さ


 少しそわそわとしているユーヴェンがシオンに聞きにくそうに問い掛ける。


「……シオン、昨日スカーレットさんからカリナさんの事を聞いてたのか?」


 不自然に目を泳がせているユーヴェンは、さっきまでやり取りを微笑ましく見ていたくせにまた変に考えているのだろうか。


 ――シオンがメリア一筋だっていうのをユーヴェンだってよく知ってるはずなのに……。


 はあっと溜め息を吐くと、隣にいたアリオンの小さい笑い声が聞こえた。そちらに目を向けるとアリオンがにっと笑った。

 心臓がきゅっと鳴る。


「ユーヴェンって嫉妬深いよな。まあ俺もだけど」


 こそっと耳元で囁いてくるので恥ずかしくなってアリオンの腕をバシッと叩く。アリオンはおかしそうに笑ったままだ。


 ――うっ……あ、アリオンかっこいい……!


 もうかっこいいしか言葉が出て来ない。心臓が破裂しそうだ。


 とりあえず落ち着こうとアリオンから目を外すと、こちらを見ていたカリナとスカーレットと目が合った。

 カリナとスカーレットは生温かい目で私を見ている。


 ――す、スカーレットにはまだ……アリオンをす、す、す、す……き……って言ってないはず、なのに……!なんだか……ば、バレている気がするわ……!


 頬に熱が集まらないように必死に耐えていると、シオンがユーヴェンの問いに楽しそうに返した。


「昨日キャリーがフューリーの可愛さを熱弁してて、その話の延長線上でキャリーの幼馴染であるメーベルさんの話を聞いたんだよ」


 シオンの言葉に思考が止まった。


「……フューリーさんの、可愛さを……熱弁……」


 思わず呟きながらスカーレットを見る。ユーヴェンも同様だ。


 スカーレットは少し照れたように笑った。


「カインが可愛かった事を広めたかったから……つい」


 照れた笑顔でフューリーさんのことを言っているのに、そこにある好意は……その可愛さ故のような気がしてならない。


 私はアリオンを縋るように見た。もしかしてこれは……一切脈無しなのだろうか。

 アリオンは遠い目をしてまた首を振った。駄目らしい。


 ――自業自得なところもあるけれど……不憫、だわ……。


 目を伏せる。まさかスカーレットが今でもフューリーさんの昔は可愛いかった見た目を称賛していたとは……。


「ローリー達も見る?カインの可愛い写真」


 スカーレットの満面の笑みで言った言葉にアリオンを伺うように見ると、アリオンはふっと楽しそうに笑った。もう見ているらしい。アリオンが楽しそうな事に興味を引かれる。

 そんなに可愛かったのだろうか。気になる。


 パッとユーヴェンと目を合わせて頷き合う。ユーヴェンも気になるらしい。


「へえ。フューリーはそんなに昔可愛い感じだったの?」


 そこに傍にいた兄も話に入ってくる。少し興味が湧いたみたいだ。


「はい。天使のような美少女でした」


 スカーレットは目をキラキラさせながらそう言う。……スカーレットの話を聞いていく毎にフューリーさんが不憫になってくる。


 ――まあ……制裁は手を抜かないけど……。


 しっかり反省して一から頑張ってもらおう。……マイナスからかもしれないけど……。


「……ガールド隊長も見ますか?」


 スカーレットが興味を持っている兄におずおずとそう問い掛ける。兄は悪魔のような笑みで笑った。


「うん。見せてもらおうかな」


 アリオンとシオンが同時に顔を覆った。同情しているのかと思ったら肩が震えている。


 ――……笑っているわね……。


 ジト目でアリオンとシオンを見ると、視線に気づいたアリオンが笑うのを止めようとしたのに失敗して咳込んだ。そんなアリオンの背中を撫でると、笑いながら悪いと途切れ途切れに言っていた。


 ――アリオンの背中大きい……。


 抱き締められた時もすっぽりと私が収まったのだ。大きいのは当たり前だけど、なんだか触れているとその大きさがよくわかって頬が火照りそうになる。


 そんな事を考えている間もアリオンは笑いが止まらないみたいだ。小刻みに震えている。

 ……ツボにでも入ってしまったらしい。


 フューリーさんの知らないところで上官にまで過去を暴露されるなんていいのだろうか。

 まあ兄が興味を持ってしまった時点で遅かれ早かれ暴露されていたと思う。


「えっと……じゃあ……その、これ……です」


 スカーレットは少し緊張したように魔石のついたペンダントを取り出す。写真を魔石に刻んでいるようだ。


 その写真に思わず目を見開いた。


 そこには銀髪で淡い紫色の瞳を持つ笑顔の美少女がいた。かなり幼くてユーヴェンの弟であるノエルくんとフィルくんくらいの年齢に見える。


 ――か、可愛い……!確かにこれは美少女だわ……!


 じーっと写真を見つめてしまう。……面影は髪と瞳の色だけしかないような気がする。


 アリオンの背中が震えていたのが止まったので、アリオンの方を向くと目が合った。ふっと柔らかく笑ったアリオンに一瞬息が止まった。


 パッとフューリーさんの写真へと向き直る。


 ――……アリオンの小さい頃は……かっこいい感じだったわね……。


 アリオンの家で飾ってある家族写真を見た事がある。それにユーヴェンの家にもアリオンが一緒に映った写真もあったのだ。でもここまで幼くはなかった。確かエーフィちゃんが2、3歳の頃のだと言っていたから、アリオンも8、9歳だった。


 少し幼くて可愛い感じはしたけれど、やっぱりかっこいい感じが強かったと思う。


 ――それにアリオンは今でも可愛い感じの所、あるもの……。


 そう考えると幼い頃の面影が今も残っていると言えるのだろうか。アリオンのもっと幼い頃の写真も見てみたいな……なんて考える。


「ふふ、可愛いでしょ?」


 スカーレットは楽しそうに言ってくるので素直に頷く。


「ええ。可愛いわね、フューリーさん……!」


「ほら、言った通りでしょ?」


 カリナもにこにこと笑っている。これを見ていたら可愛く育っていて欲しいと願うのも当然なのかもしれない。


 ――……今は可愛い感じじゃないんだけど……。


 ……確かに少し残念に思ってしまうかもしれない。


「ほんとに可愛いな……」


 ユーヴェンも眉を寄せて言うと、アリオンがユーヴェンに近づいて両肩をがしっと掴んだ。


「けどエーフィの方が可愛いだろ?ユーヴェン」


 アリオンがにっこりと笑いながらユーヴェンに詰め寄る。ユーヴェンは口端を引き攣らせた。


「……うん、そうだな……。エーフィちゃんの方が可愛いよ……」


 ユーヴェンの言葉にアリオンは満足したように満面の笑みで頷いた。


 相変わらずのアリオンのエーフィちゃんの溺愛ぶりにふふっと笑って……ハッとする。


 兄の方にすぐさま目を向けた。兄は私の視線ににっこりと笑う。


 ――い、嫌な予感がするわ……!


 私が目の前にいるのに小さな頃の話をされては恥ずかしくて堪らない。


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