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―隊の面々―


「ギートもルノーと変わりない事言ってるわよ」


 そうやって呆れた声を掛けてきたのはピンク味が強いベージュの髪をショートカットにしている、金の瞳を持ったエリー・コーズ先輩だ。

 その後ろには青みがかった長い黒髪をポニーテールにしている、濃い紫色の瞳を持ったライラ・ジュード先輩もいた。


「コーズ、ジュード」


 ギート先輩がそう声を返すと、ルノー先輩が反応する。


「なんだ?」


 その返しに一瞬目を瞠るが、そういえばルノー先輩はジュードという名前だったと思い当たった。


 そんなルノー先輩をジュード先輩がきつく睨んだ。


「ちょっとルノー、やめなさいよ!あんたわかってるでしょ!?今のは流れ的に私の事に決まってるじゃない!それにギートはあんたの事名前で呼ばないでしょ!」


 ルノー先輩はご飯を食べながらジュード先輩を胡乱な目で見る。


「俺だって名前がジュードだから反応するに決まってるだろー。紛らわしいんだって」


 ルノー先輩は人当たりがいいのにジュード先輩に対しては少し対応が違う。馬が合わないんだろうか。


 ――でも……俺……今日俺の見る目は節穴だと思い知ったばっかりだしな……。


 まあ俺だけじゃなくてリックさんとメーベル医務官はみんなを欺いているので仕方ないとは思う。もしも仲が良いことがバレたらリックさんの作戦に支障をきたしてしまう。


 そんな事を思っていると二人の先輩の言い争いは更に白熱していた。

 シオンやフューリー、キャリーはどうしようか迷っている顔だし、ギート先輩とコーズ先輩は溜め息を吐いていた。


「あんたの名前の方が紛らわしいわよ!」


「お前の苗字の方が紛らわしいんだ!」


 いつ止めたらいいんだろうと考えていると、凛としている冷えた声が割って入った。


「ルノー、ジュード」


 二人に呼び掛けたのはヴァネッサ・ルーリー副隊長だ。

 白金の肩までの髪を靡かせ、淡い緑の瞳を鋭く細めて二人の先輩を見ている。


 ルーリー副隊長に呼び掛けられた途端、ルノー先輩もジュード先輩もビシッと背筋を伸ばして立ち上がる。


「「はい!何でしょうか、ルーリー副隊長!」」


 二人共冷や汗をかいている。恐らく騒ぎ過ぎたと気づいているのだろう。

 ……あれだけ言い争っていたのに息は合っているのが流石だ。


 ルーリー副隊長は呆れを滲ませた声で注意する。


「見習い騎士の模範となるべき正騎士であるあなた達が騒がしいのはどういう事?そんなにガールド隊長に報告して欲しいのかしら?」


 ガールド隊長に報告と言う所で二人共ビクリと肩を揺らした。


「「……すみませんでした……」」


 猛省している様子に、俺はさっきリックさんが言っていたわざと怪我をさせた隊員がいた事を思い出す。

 ……いや、あれは懲りない輩と言っていたからまた別だろう。


 ……変な考え方が増えてしまった。リックさんが恐れられているのがよくわかった気がした。


 二人に注意し終わった所で俺達はルーリー副隊長に声を掛ける。


「「ルーリー副隊長!お疲れ様です!」」


「お疲れ様。全く……あなた達は喧嘩ばかりよね……。最近仲良くなったキャリーとフューリーを見習うべきじゃない?」


「え!?」

「へ!?」


 ルノー先輩とジュード先輩への小言の後、いきなり話題に出されたキャリーとフューリーは揃って驚きの声をあげた。


「無理を言うのはよくない、ルーリー。フューリーとキャリーでは状況が違うだろう」


「イフリータ」


 そこに現れたのはもう一人の副隊長、アイザック・イフリータ副隊長だ。

 淡い紫色の髪と青と紫が混じったような瞳。この人の瞳もかなり珍しいんだろうが、いかんせんイフリータ副隊長は高身長な上にかなりガタイがいいのだ。しかもイフリータ侯爵家の次男なので、貴族の方特有の気品が今でも漂っている。どう考えても囮は無理だ。


「「お疲れ様です、イフリータ副隊長!」」


「ああ、お疲れ様。ルーリー、フューリーとキャリーは昔馴染みだという話だったじゃないか。ルノーとジュードは違うから仕方ないだろう」


 そう言ったイフリータ副隊長にフューリーが思わずと言ったように声を漏らした。


「知ってたんですか……」


 その言葉にイフリータ副隊長は優しげに微笑む。


「ふ、暫定とは言え我々の隊に入るんだからね。調べて当然だろう?」


 見習い騎士の俺達四人は揃って息を呑んだ。


「そう……なんですか……」


 フューリーはイフリータ副隊長に戸惑いながら頷いた。

 まさか調べられていると思っていなかったんだろう。しかも情報源が謎で少し怖く感じてしまう。


 ――いや、こうやって思うからいけないんだ。


 気をつけようと気合を入れていると、ルーリー副隊長が大きく溜め息を吐いてイフリータ副隊長をジト目で見た。


「イフリータ、あなたそんな事してるから怖がられるのよ?」


 ……やはり怖がられているらしい。


 イフリータ副隊長は眉を下げる。


「私は仲良くしたいんだけどな。一緒に食事を……」


 言いかけたイフリータ副隊長の言葉をルーリー副隊長は遮った。


「あなたがいると部下の気が休まらないわ。ほら、行くわよイフリータ。ルノー、ジュード、もう騒がないのよ」


「「はい……」」


 神妙に頷いたルノー先輩とジュード先輩を確認してからルーリー副隊長は別の場所へと向かっていく。

 確かに副隊長達と食べるのは緊張してしまう。ルーリー副隊長が気遣ってくれたのは有り難い。


「ルーリー、待ってくれ。それじゃあね、みんな」


 朗らかに笑いながらイフリータ副隊長が挨拶をしてルーリー副隊長を追っていった。


「相変わらずイフリータ副隊長は気品があるな……」


 フューリーが小声でそう零すので頷く。


「イフリータ侯爵家の次男だからな……」


「なー……」


「ほんとに……」


 俺の言葉にシオンとキャリーも小声で同意して、副隊長達の後ろ姿を見ていた。


「もー……ルノーのせいでルーリー副隊長に怒られた……」


 ジュード先輩がトレイをテーブルに置きながら、大きく溜め息を吐く。


 ……一緒に食事をするくらいには仲が良いらしい。


 ――まあ、同じ隊だから一緒に任務こなすんだもんな……。


 ルノー先輩はジュード先輩を見ながら言った。


「俺だけのせいじゃねえだろ。ライラのせいだろ」


 ルノー先輩がジュード先輩を名前で呼ぶので、やっぱり仲が良いのかと思っているとジュード先輩がルノー先輩を睨みつけた。


「あんたは勝手に私の名前を呼ぶな!」


「なんで俺と同じ名前の苗字を呼ばなきゃなんねぇんだよ。間違えようのない名前でいいだろ」


「あんたに名前を呼ばれるだけで鳥肌が立つのよ!」


 また言い争いが始まりそうな雰囲気の中、コーズ先輩がパンッと一度手を叩いた。

 それにルノー先輩とジュード先輩が止まる。


「ちょっと、ライラ、ルノー。あんた達はまた怒られたいの?」


 コーズ先輩の言葉に肩を落としてジュード先輩は謝る。


「う……ごめん……」


 そうジュード先輩が謝ると、ギート先輩もルノー先輩に突っ込む。


「ルノー、お前も悪いぞ」


「……悪かったよ……」


 ルノー先輩も少しバツが悪そうに謝った。


 俺達四人は初めて見た先輩達の様子に目を合わせて小声で話す。


「ルノー先輩とジュード先輩って……あんな感じなんだな」


「な……訓練とかじゃあんな風になったの見た事なかったもんな……」


 俺の言葉にシオンが頷く。


「あんまり仲良くないのね……」


「……確かにな……」


 キャリーとフューリーもそう話す。


 ――でも一周回って仲いいような気もするけどなぁ……。


 同じ隊という事は連携は取れているはずである。

 仲が良いからこその喧嘩のようにも思えた。……違うかもしれないけれど。



また朝の更新になってすみません。

読んで頂けて嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。


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