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心強い友人


 玄関の前まで帰ってきた所でユーヴェンがふと言ってくる。


「そういやさ、気になってたんだけどその色変え魔法の色、アリオンの髪みたいな色してるよな?そんな色あるんだなー」


「!!」


 ニコニコ笑って言ってきたユーヴェンに顔を赤くしてまって、カリナに隠れる。

 カリナはふふっと微笑んだ。


「ローリー……そうなんだね」


 カリナの背中に顔をつける。


 魔道具店で買った魔道具だから、少し複雑な色合いも指定できたのだ。

 だからついアリオンの髪みたいな色を再現してしまった。


 ――アリオンにも言わなかったのに……!


 流石に恥ずかしくて言えなかった。


「なんでそういう事には目聡いの!ユーヴェンは!」


 恥ずかしさをぶつけるようにユーヴェンを睨んで責める。


 ユーヴェンは苦笑している。


「思った事言っただけだったんだけど……まさかほんとにそうとは……」


 本当にいらない事を言ってくれる。橙色だな、くらいで留めておいてくれたらよかったのに。


「うるさいわよ!ちょっとカリナと一緒に着替えてくるからあんたは外で待機!」


 ユーヴェンにそう命じるとすぐ頷いた。


「わかった」


 カリナは目を瞬かせてきょとんとしている。


「外で?」


 昨日アリオンから怒られた事をカリナにも言う。


「そうよ!ユーヴェンだって何を考えてるかわからないから!こんなに可愛いカリナの着替えを一緒の家で待たせるなんてできないわ!鍵掛けて外で待たせとくの!」


 カリナの事を考えれば当たり前のように思う。


 昨日は私とアリオンだったから気にならなかったけど……。

 アリオンが鞄やコートを顔に押し付けていたのを思い出す。あれは……考えてしまうのをやめようとしていたのだろうか。


「すっげえ誤解を招くような事言うなよ、ローリー!まあ俺も二人が着替えてる家にわざわざ上がんねぇから!外で待っとく!」


 少し恥ずかしそうに言ったユーヴェンは玄関の横の壁に凭れかかった。そこから動かないつもりらしい。


 カリナも思いあたったのか、頬を少し染めた。


「わ、わかった……」


 頷いたカリナと一緒に家の中に入って鍵をかけておく。

 そして私の部屋で制服から普段着に着替える。魔道具も発動を終わらせてテーブルの上に置いた。


 制服を脱いだところで首元のネックレスを少し触って口元を緩めた。着けているだけでも心強いけれど、やっぱり見える方が嬉しい。


「……ローリー、そのネックレス……」


 カリナが目を輝かせながらネックレスと私の顔を交互に見る。

 顔が真っ赤に染まってしまった。


「ふふふ、ローリー真っ赤」


 微笑んでいるカリナに、着替えながら説明する。


「あ、アリオンがね……くれたの……」


「ブライトさんの色だね」


「うん……」


 カリナの問いに頷いて頬を緩める。

 アリオンの色のネックレス。これを着けているだけでも側にいてくれているように感じる。それは魔力も入っているからだろうか。


 ――暖かくて、優しい……アリオンの魔力。


 胸がきゅうっと締め付けられる。

 今アリオンはどうしているんだろうか。事件の解決に心血を注いでいるのだろうけど、早くまた会いたいと思ってしまう。


 ――昨日会ったばかりなのに……。


 そんな想いを紛らわすようにカリナに昨日の事を話していく。


「え、えっとね……わ、私も……アリオンに……私の、瞳の色の……あげたの……」


 しどろもどろに告げると、カリナはとても良い笑顔だ。


「そっか。魔力も入ってるんだね」


「うん……。あ、アリオンに……渡したのも……魔力、入れたの……」


 恋人同士のようなやり取りをした公園の出来事を思い出す。


 ――ち、近くて甘くて……ドキドキした……!


 思わずきゅっと目を瞑ると、優しい声でカリナが笑う。


「可愛い、ローリー」


「ふにゅ……」


 思わず声を漏らしてカリナを見ると、にこにこと楽しそうな笑顔だ。


「ユーヴェンさんからなんだか色々ブライトさんのやらかし聞けてよかったね」


 その話題にさっきユーヴェンを騙して聞き出した事を思い出す。


「あんな事してたなんて……アリオンってば、もう……」


 頬が少し熱を持つ。どう考えても恥ずかしい。


 ――アリオンの行動って過去も今も……何もかも心臓に悪いわ……!


 カリナはふふっと笑みを零して言う。


「ブライトさんがローリーを大好きだからだよ?」


「みゅ……」


 カリナの言葉に赤い顔が更に赤く染まる。


 ちょうど着替え終わったので手で必死に顔を扇ぐ。顔が熱い。


「ふふふ。ほら、ユーヴェンさん入れてあげよ」


 同じく着替え終わったカリナの言葉に頷いた。


 階段を降りながら顔の熱を冷まして、玄関扉を開ける。


「ユーヴェン、待たせたわね」

「ユーヴェンさん、お待たせ」


「ううん」


 二人で声を掛けて家に入ってもらう。ユーヴェンはカリナの姿をちらりと見たと思ったら私を見てきた。

 ……恥ずかしかったのだろうか。


 そんな事を思っていると、ユーヴェンは私を見て何故か目をパチパチさせている。


「ローリー……そのネックレス……」


 ユーヴェンが呟いた言葉にカリナの後ろに隠れる。

 そうするとユーヴェンは少し目を彷徨わせた。……制服ともお出掛け用の服とも違うから、カリナを真っ直ぐ見れないらしい。


 こちらに向いていない事に安堵しながらユーヴェンに大きめの声で返す。


「突っ込まないでよ、ユーヴェン!もうカリナに突っ込まれたんだから!」


 そういうと横目で私をジトッと見てくる。


「えー、気になるに決まってるだろー。なんかもうほぼ付き合ってる感じなんだけど、お前ら……。俺は一昨日聞いたばっかりなのに……!いつの間に……!」


 悔しそうに眉を寄せるユーヴェンにふいっと顔を背ける。カリナの背にくっつくようにしながら話す。


「……別に告白されたのは……一週間前ぐらいだし……」


 そう、一週間前だ。

 ……色んな事があったからもの凄く濃い一週間だったように思う。


 ――気持ちが変わるの……早い……の、かしら……?でも……アリオンの事は……元から悪くなんて思ってないし……むしろ……けっこうす、す、好き……だし……。


 それにユーヴェンの事は元から諦めないと、と思っていたのだ。そんな時に告白された。

 思い出しただけでも心臓が早鐘を打つ。


「ん?あ、ローリーがなんか元気なかった時ぐらい?」


 元気がなかった事はバレていたらしい。ユーヴェンは鈍感だけれど人の事はよく見ている。

 誤魔化せてなかった事に複雑な気持ちが湧くけれど、それだけみんな私の事を気にしてくれていたということだ。

 今は素直に嬉しいと思う。


「まあ色々あって……少し、落ち込んでたん……だけど……アリオンが話を聞いてくれて……それで……」


 アリオンが泣かせてくれた。甘やかして、私の話を全部聞いてくれた。

 きっとあれは……アリオンだから、言えたと思う。

 そして……告白、された。


 告白を思い出して真っ赤になる。カリナが私の頭を撫でてくれた。


「へえー。でもあいつ、いつ自分の気持ちに気づいたんだろ。今まで全く気づく気配もなかったのに……」


 ユーヴェンの疑問に肩が跳ねる。


 それは私が泣いている所を見たからだ。他にも色々な要素が絡まっていたけれど、言えるものではない。


「……それは……その……」


「私とスカーレットがローリーへのブライトさんの態度を見て、好きな人への態度みたいに思われても仕方ないとか信じられないって言ったからだよ。だから改めて考えたんだって」


 答えに詰まっているとカリナがそう答えてくれる。


 やっぱりカリナは頼もしい。カリナがいる時にユーヴェンと話せてよかったと思う。私だけじゃユーヴェンの質問攻めにたじたじだっただろう。

 カリナを見ると優しく笑ってくれている。

 それに私も笑い返した。



今日も更新が遅くなりすみません。

これからもよろしくお願いします。


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