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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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日常への約束


 カリナは苦く笑いながらユーヴェンに突っ込む。


「うーん……ユーヴェンさんそれで一緒にいるの気づかないんだ……」


「だって一昨日アリオンと会った時、ローリーとデートするなんて一言も言ってなかったし。いつも三人で出掛けてたのにさー……」


 口を尖らせながら返したユーヴェンに、カリナが困ったように笑った。


「ユーヴェンさんってば……」


 拗ねているユーヴェンに呆れながら声を掛ける。


「ちょっと拗ねないでよ、ユーヴェン」


 それでもユーヴェンは拗ねたまま言ってきた。


「せめてデートするって事くらい教えてくれてもよかったと思うんだよ、俺は!俺だって今まで見守ってたのに!」


 ユーヴェンに見守られていたと思うと恥ずかしくなってまたカリナに隠れる。


「……アリオンだって……恥ずかしかったんでしょ……」


 ユーヴェンがちらりと私をジト目で見てくる。


「ローリーも恥ずかしかったのか?」


 私もユーヴェンに何も言わなかったからだろう。


「私、アリオンがユーヴェンに言わないなら言わないわよ」


 アリオンが一番仲の良いユーヴェンに言わなかったのなら、私からユーヴェンに言う事はない。


「ほらー。ローリーだって俺よりアリオン優先するー」


 ユーヴェンは頬を膨らませて言ってくる。こういう所は相変わらず子供みたいだ。


 確かに最近アリオンを優先しているのは事実なのでふいっと顔を逸らしながら返す。 


「うるさいわね。……アリオンあんたにイラッとしたから言わなかったんでしょ」


 ユーヴェンに腹が立ったと言っていたので、言う気が起きなかったんじゃないかと思う。


「うっ……」


 私の言葉にユーヴェンは呻く。


「そうだよ、ユーヴェンさん。ブライトさんもユーヴェンさんに怒ってたんだから、デートの事を言われなくても仕方ないよ」


 カリナもそう言うと、ユーヴェンはしゅんとして項垂れた。


「……確かに……」


 落ち込んでいるユーヴェンに溜め息を吐く。


「もー、落ち込まないの。ユーヴェンが私とアリオンの事を考えてくれてたのはわかってるわよ。ほら、またみんなで遊びましょ。カリナやスカーレットも一緒に」


「!!」


 私の言葉にカリナが目を見開いた。少し口元が緩んで嬉しそうにしている。

 ユーヴェンも目を輝かせる。


「へへ、そうだな!みんなで遊んだら楽しいよな!そうだ、どうせならフューリーも呼ぼうぜ!最近アリオンとフューリー仲良いし、スカーレットさんとも仲良いんだろ?」


 軽く言うユーヴェンはフューリーさんの気持ちを知って言っているのだろうか。


 ――スカーレットとフューリーさんの事が騎士団事務内で噂になってるって……二人の名前あげてたから……流石に知ってるのかしら……。


 ……でも今のはそれ程深く考えずに言っていそうだ。


「あっ!カリナさんはフューリーと会ったことある?」


 やっぱり深く考えていなかったようだ。


 ジトッとユーヴェンを見るとバツが悪そうな顔をした。

 カリナはそれに微笑んで答える。


「ううん、ないんだけど……スカーレットと仲が良かったから……実は前から会ってみたかったんだ。今なら会っても普通に会話できそう」


 とても嬉しそうに言うカリナに目を瞬く。なんだかフューリーさんに会うのをすごく楽しみにしているようだ。


「そっか……」


 ユーヴェンはいつもならもっと詳しく聞きそうなのに、そこで話を止めた。フューリーさんに会うのを楽しみにしていそうなカリナを見て思い悩んでいそうだ。


 一応助けてやろうとカリナに問い掛ける。


「どうして会ってみたいの?」


 カリナは楽しそうに笑って言う。


「ふふ、よくスカーレットからお話聞いてたから」


 カリナはスカーレットと仲の良いフューリーさんに会ってみたかっただけのようだ。

 少しほっとしたような顔をユーヴェンがしていた。


「そうなのね。どんな話を聞いてたの?」


 私も安心しながらカリナに問い掛けると、にこにこと笑いながらカリナが口を開いた。


「天使みたいに可愛いフューリーさんの話」


 カリナの言葉に一瞬思考が止まる。


「……え?」


「……フューリーが……天使みたいに……可愛い……?」


 私とユーヴェンは呆然としながら目を合わせた。


 いまいち今の長身で騎士をしているから逞しい感じのフューリーさんと、カリナの言葉が噛み合わない。


 カリナが目をパチパチと瞬かせた。


「え?違うの?小さい頃は美少女だと見間違うくらいに可愛かったって……」


「美少女!?」


 ユーヴェンが素っ頓狂な声をあげた。


「た……確かに綺麗な顔は……してたけど……!?」


 美少女……綺麗な顔をしていたから小さい頃はそんな感じでも不思議はない……ような気がするけれど、今の姿と可愛いと言う言葉が繋がらない。


 ――スカーレット……昔は可愛かったって言ってたけど……性格とかじゃなくてもしかして見た目だったの……!?


 まさかそんな事は……どうなんだろう。性格も見た目も、という事はある。

 とりあえず今はカリナに確認する事が先だ。


「……カリナ、フューリーさんの話はどこまで……いつまで、聞いてたの……?」


 そうやって聞く。

 もしかしてカリナが聞いているフューリーさんの話はだいぶ前のことなんだろうか。


 ――でもスカーレットが『昔は』可愛かったって言っていたし……今はそうじゃないって……事よね……?


 いや、そういえば見た目には言及していない。カリナは見掛けた事があるくらいだと言っていた。


「フューリーさんの話は小さい頃からスカーレットがしててね。天使みたいに可愛くって守ってあげたくなるって言ってたの」


「……守って……」


「あげたくなる……」


 ユーヴェンと目を合わせる。

 フューリーさんの気持ちを知っているだけに複雑だ。


「見掛けた事があるって言ってたわよね?それっていつ?」


「え?小さい頃の写真を見せてもらったのと……学園入学した時にスカーレットに遠くから教えてもらったの。写真よりは大きくなってたけど可愛かったんだ」


 ふふっと楽しそうに笑いながら言うカリナに、弱々しく相槌を打つ。


「そう……なの……」


 恐らく学園入学時はまだ幼くて、可愛い感じが強かったのだろう。


「学園に入学してからはクラスも違ったから、スカーレットはフューリーさんにあんまり会ってなかったみたいなんだ。なのに急に突っ掛かられるようになったって言ってて……突っ掛かられるようになってからは、私は近づいちゃ駄目だって言われてたから……」


 その話で理解する。つまりカリナは今のフューリーさんを見たことがない。しかも突っ掛かられ始めてからはわざわざ容姿に言及する事もなく、突っ掛かられる事自体に文句を言っていたのだろう。

 だからカリナは、フューリーさんが可愛らしいまま成長していると思っているのだ。


「ユーヴェン……」


 ユーヴェンに言えと目配せをする。


「え!?なんで!?」


「?どうしたの?」


 ユーヴェンが急にあげた声にカリナはきょとんとしている。

 もう一度ユーヴェンに目配せをしてから睨んでやる。シオンに言ったのだからこれぐらいはしてもらおう。


 ユーヴェンも観念したのか一度息を吐く。そして意を決してカリナに話し掛けた。


「……あの、カリナさん……」


「うん?」


「フューリーは……今はもう……可愛いというより……かっこいい感じになってるから……。むしろ可愛いという単語が結びつかないんだ……。身長も高くて逞しいし……だから……天使みたいに可愛くは……ない」


 ずいぶんとはっきりユーヴェンは否定した。ユーヴェンも流石にフューリーさんを可愛いとは思えなかったんだろう。

 ……可愛いなんて思ってたらユーヴェンの趣味を疑ってしまう。


 ユーヴェンの言葉を聞いたカリナは目をパチクリと一度瞬かせた。

 そして気が抜けたように返事をする。


「…………そう……なんだ……。可愛く……ないんだ……」


 悲しそうなカリナは天使みたいに可愛いフューリーさんに会いたかったのだろう。


 カリナの背中を撫でる。落ち込んでいるみたいだ。


 私の撫でた手にハッとしたカリナは、笑顔を作った。


「だ、大丈夫!その……スカーレットと仲が良いから会いたかったのは本当だよ?だから……会えるの楽しみ!」


 ぽんぽんとカリナの背中を叩く。


「ええ……大丈夫。わかっているわ……。それに……遊べるの、今の事件が解決してからになるから……すぐじゃないわ」


 ショックを受けているカリナにそう言う。

 すぐにはみんなで遊べない。


「それは……そうだね……」


 苦く笑いながら頷いたカリナはこくりと頷いた。顔も難しいものになっている。


 そんなカリナと私を見て、ユーヴェンは力強く笑った。


「大丈夫。早く解決してくれるよ。優秀だからな、うちの騎士団は」


「そうだね」


「うん」


 ユーヴェンの言葉に兄やアリオン、スカーレット、シオンやフューリーさんを思い浮かべる。


 『ちゃんとローリーの所に帰ってくるから』


 そう言ってくれたアリオンと、その後にされた額へのキスを思い出す。カリナとユーヴェンにバレないように少しだけ手で額に触れた。


 ――信じて、待ってる。


 心の中で祈るように呟いた。



読んで頂きありがとうございます。

更新が遅くなってすみません。

これからも読んで頂けると嬉しいです。


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