言わせてもらう
「これで制裁は終わり!だからこの話も終わりよ!」
デコピンをした額を触りながら、アリオンは目を瞬かせる。
「やっぱローリーはかっこいいな」
堪え切れなかったように笑い始め、そう言う。私はにっと笑って返した。
「いい女でしょ?」
「ほんとにな」
アリオンもにっと笑って楽しそうに返したが……そういえば問題は他にもあるからこのままでは終われないと思い直した。
「で、そのいい女が彼女になってるはずのアリオンさんは、フューリーって人にも馬鹿正直に私が彼女じゃないって言ったの?」
私がにっこり笑いながら言うと、アリオンは笑うのをピタッと止めた。
「あー……いや、お前に迷惑がかかるかもと思ってな?」
そう言って目を逸らすアリオンに少し苛つく。
「あんたの気持ちはありがたいけど、そういう時くらい噂を利用しなさいよ。というかまず、私に言っていたら全部解決した話よね。あんたが目をつけられるなら彼女役くらいやったし。スカーレットのことだって、あんたは私が仲いいの知ってたはずだし。それにそもそもね、私に噂を隠そうとするなんて、あんたは……」
「待った!その話は終わったのでは……?」
「うるさいわね!文句ぐらいは言わせなさい!」
「う……」
一喝すると自分の不利を悟ったのか黙り込む。
ここから説教してやると意気込んだ時、恐る恐るといった感じの声が聞こえた。
「あのー……アリオン、ローリー……取り込み中?」
「「ユーヴェン!」」
そこにいたのは今日約束をしていたもう一人のユーヴェンだった。少し縮こまるようにしながら私とアリオンを交互に見ている。
さっき聞いた話ではユーヴェンもアリオンの共犯者だ。そう思ってユーヴェンに笑いかけた。
ユーヴェンはなぜだかビクッと肩を揺らした。笑いかけただけなのに失礼ね。
「ちょうどいいわ、ユーヴェンもこのベンチに座りなさい」
「え……?」
ユーヴェンが驚きながらアリオンを見る。アリオンはバツが悪そうな顔をしてから、ユーヴェンに向かって謝るように手を合わせた。
「えっと……何が……」
私はベンチから立ち上がると、ユーヴェンを押しやってベンチに座らせる。
「私に噂を隠そうだなんて、いい度胸じゃない?」
そう言うと察したのか、ユーヴェンがバッとアリオンを見る。アリオンが悪いと呟いた。
「さて、私に隠そうとした罰として文句くらいは聞いてもらうわよ」
私がにっこり笑うと、ユーヴェンとアリオンは口の端を引き攣らせた。
***
「ふふ、美味しそうね!」
あれから二人にたっぷりと文句を言った私は、昨日の結果報告をするために三人で喫茶店に移動した。
フルーツがたっぷり乗ったタルトと、クラシックチョコレートケーキが目の前にある。
向かいにいる二人は疲れた表情をしている。




