友人と友人の初対面
食べ終わってもまだ待ち合わせよりは早いので、気になっていた事を聞く。
「そういえばさ、あんたスカーレットにどんな対応したの?」
話し合いを持つにしてもまずどうだったのかを知るべきだろう。
「あー、そっか。キャリーも一緒だったんだもんな。キャリー、俺の事嫌ってたろ?」
「うーん、まぁ、ね」
歯切れ悪く答える。やはりアリオンも嫌われていたことはわかっていたのだろう。
「でも、あんたの話したらわかってくれた。これからは避けないって。勝手に色々と話したのは、ごめん」
そう言って頭を下げようとすると、軽く額に手を当てられ止められる。
「いいよ。お前もユーヴェンも俺が嫌われてるってこと、見過ごせなかったんだろ。ありがとな」
「……そう言われると、恥ずかしくなるわね」
「はは。恥ずかしがっとけ」
笑うアリオンを照れ隠しに小突く。アリオンは更に楽しそうに笑った。
「で、何があったのよ」
ひとつ溜め息を吐くと、頬杖をついてアリオンに向き直ってもう一度聞く。するとアリオンはバツが悪そうな顔をして話し始めた。
「あー……そうだな。あれは俺が悪かったと思う」
アリオンがスカーレットに初めて会ったのは入隊して一ヶ月程経った頃だった。訓練している隊が違ったので見かけたことはあっても話したことはなかったらしい。
訓練する隊は一ヶ月毎に変わっていき、見習い騎士の全員と顔を合わせるようになっている。これは騎士服で判断するのではなく、顔で騎士と分かるようにするためだということだ。見習いの2年間はそうして同じ騎士の顔を覚えながら訓練をしていくらしい。
そして一ヶ月経って隊が変わった時、スカーレットと同じ隊になる。隊が変わった日の訓練後、一休みしていると背後が騒がしく振り向いた。するとスカーレットとフューリーという同僚の男が喧嘩をしているように見えた。フューリーという男ともその日初めて会ったらしい。
「だから仲介しようと思って……。いつもなら職場に入ったし学園と同じようにはできない、って思ってたんだよ。でも喧嘩だと思って焦っててな、つい……『キャリー嬢、怒らないで。貴方は笑っていたほうが輝いていますよ』って言っちゃったんだよ。フューリーとの間に入ってな」
「あのキラキラ笑顔で……ね。そう、それは……うん。スカーレット、嫌いそうね……」
苦笑いしながら思い浮かべる。嫌そうな顔をしそうだ。
「タイミングも悪かったな。フューリーとの喧嘩内容がどうも……どちらが女性に人気があるかって喧嘩だったらしい」
「え?」
その言葉に目を丸くする。喧嘩内容がなんだか……思っていたのと違う?
「あの二人の喧嘩も日常茶飯事だったらしくてな。俺は隊が違ったから知らなかったんだけど。どうもいつもフューリーが突っかかってくるらしくて」
「……いや、スカーレット私から見てもかっこいいから人気があるのも分かるけど、喧嘩の内容それなの……?」
「ああ、まあな。お陰で俺は学園の時みたく多数の女の人から追っかけられなくて楽」
そういえば学園の時はあったアリオンとどういう関係なのか聞かれる、というのが仕事をし始めてからはほとんどなかった。てっきり大人だからだと思っていたが、別の要因もあったらしい。




