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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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惹かれたもの


「これくらい自分で買うわよ。魔道具だし、使わなくなったら持ち歩かないじゃない」


 ――アリオン、私の元からの瞳の色好きって言うし……。


 そう思うと、この騒動が終われば恐らく使わなくなるだろう。


 アリオンは私の言葉に目を瞬かせる。それに首を傾げると、アリオンが聞いてきた。


「……ずっと持ち歩けるもんなら欲しいってことか?」


「!!ち、違うもん……!」


 アリオンの言葉に思いっ切り首を振って否定する。

 それでも顔に熱が集まっているのは分かる。


 ――そ、そんなつもりで言ったんじゃないもん……!ど……どっちかって……言ったら……ほ、欲しいけど……!


 思わず考えてしまった事を頭を振って追い出す。

 今日は私がアリオンに奢る日だと決めているのだ。


 アリオンは意地悪気に笑う。


「そうか、違うか」


 それに顔を赤くしてアリオンから顔を逸らす。

 目の前にあった魔導メガネを手に取って耳にかけて、アリオンにいつものように問い掛けた。


「これ似合う……?」


「んー……ローリーなら、こっちのが合うんじゃねえか?」


 アリオンがそう言って、先程かけていた魔導メガネを優しく取ってから、別の魔導メガネをかけてくれる。耳に少し、アリオンの指が触れた。


 ――い、いちいち距離が近いわ……!


 今まで出掛けた時にこんな風に距離が近い事はなかったから、今日はいちいち心臓が鳴ってしまう。


「ん、やっぱりこっちのが似合う。可愛い」


「!!」


 にこにこと笑って言うアリオンに更に顔が赤くなる。


 ――い、いつもの感じに……か、可愛いが付け足されてる……!


 アリオンに負けないように少しは素直になろうと、はにかみながら口を開く。


「……あ、アリオンが可愛いって言ってくれる、なら……これに、しようかな……」


 そう言うと同時にアリオンがぐっと眉を寄せて苦々しく言った。


「やっぱりもうちょい可愛く見えねえやつを……」


 そのアリオンの言葉に思わずジトッとした目で見て、責めるような声を出す。


「ちょっとアリオン、どういうつもりよ?」


 可愛く見えないやつを選ぼうとするとはどういう了見だ。


「だってこれ以上可愛くなってどうすんだよ、お前は。可愛いからってナンパされたりしたら意味ねーだろ。いや、ナンパさせる隙なんて与えねぇけどな」


 アリオンが早口でそんな事を宣ってくる。


 ぎゅっと唇に力を入れた。

 むず痒くなって、口元が緩みながら突っ込む。


「もー……バカアリオン……。私はアリオンが可愛いって言ってくれるこれ買うもの」


「ぐうっ……」


  少し悔しそうに呻くアリオンに笑う。


「それに眼鏡の方が、多少でも顔の印象変えられるでしょ?」 


 顔を覚えられている可能性があるのなら、少しでも印象を変えておきたい。だから魔導メガネを選んだのだ。


「まあな……わかってるけどな……」


 アリオンはそれでも難しい顔でじぃっと私を見てくる。そしてぽそりと「……やっぱり可愛い……」と呟いた。

 その様子に心が跳ねる。

 アリオンに笑みを零しながら、かけていた魔導メガネを外して言う。


「買ってくるわね」


 アリオンは苦虫を噛み潰したような顔をしてから、苦笑交じりに頷く。


「……おう……」


 ――ふふ、そんなに可愛いって思ってくれるなら嬉しいわ。


 顔を緩ませながら魔導メガネを持って会計場へと持って行った。


 ***


 はずんだ気分で店から出ると、すぐにアリオンと手を繋ぐ。

 それに笑みを零しながらアリオンを見上げる。


「ほら、今度はちゃんとアリオンの欲しいもの探しましょ」


「ん、わかったよ」


 ふっと笑ったアリオンに、自分も笑い返してからハッとしてアリオンの手を引っ張る。


「あ、魔導メガネかけるから……ちょっと人がいない所に……」


 今はアリオンが魔法を掛けてくれているのだ。ずっと魔力を使わせていてはいけないだろう。


 私の言葉にアリオンが目を瞬かせた。


「今日は別に俺が魔法かけといてやるぞ?」


「……いいの?魔力大丈夫?」


 アリオンの言葉は有り難いけれどいいのだろうか。


 ――ちょっとアリオンに魔法かけてもらってるの……嬉しいし……。


 アリオンは軽く笑う。


「大丈夫だ。俺は昔から姉さんとエーフィの色変え魔法を一日中維持してた事多かったし、それでもまだ魔力は余ってたぞ」


 その話に(おのの)く。アリオンの魔力量が多いことは知っているけれど、正直どれほど多いかまではわからない。


 ――そしてやっぱり色変え魔法はフェリシアさんとエーフィちゃんの為だったわね!


「流石アリオン……。アリオンって魔力使い過ぎて少し体調悪くなったりとかした事ないの?」


 感嘆しながらそう聞くと、アリオンは首を傾げながら答える。


「かなり無茶な使い方もした事あったけどな。それでもねえぞ?」


 無茶な使い方……と考えて少し思い当たる。学園時代の私が抜けた後の男子の遊びは魔法を使っている事が多かった。


「……確かにあんた、魔法を使った遊びしてる時魔力量でゴリ押ししてたわよね……。しかもちょっと魔法を使い過ぎてやばそうな奴がいたら遊んだ後に魔力を分け与えてた……」


 クラスの男子は頭が良いクラスのはずなのに馬鹿が多かったから、遊びで魔力切れを起こしかけるような私よりも馬鹿な奴がいたのだ。

 その時助けていたのはクラス一魔力量が多かったアリオンだった。


「だろ?だからお前に色変え魔法一日掛けとくなんて朝飯前だ。なんならお前に魔力何回かぐらいやれる余裕もあるからな。ま、今日は基本的に俺が魔法使うから、ローリーが魔力切れになる事なんてねえだろうけど」


 笑いながら言ったアリオンの言葉にギクッとして顔を背けて目を伏せる。


 ――今日中には渡したいけど……いつ渡そうかしら……。


 ペンダントを渡せばアリオンにまた怒られそうだ。……昨日みたいに詰め寄られるんだろうか。


 ――あ、あれ……す、すごく近かった……!


 思い出すだけで心臓が早鐘を打つのを聞きながら、早くアリオンの方を見なければ疑惑を持たれてしまうと思って目を上げる。

 すると、ちょうどガラス細工のお店が目の前にあった。キラキラと輝くガラス細工に思わず見惚れてしまう。

 でも今日はアリオンの欲しいものを探しに来ているんだと思ってパッと目を外す。


「この店入るか」


 アリオンの言葉に振り向く。


「え」


 目をパチパチさせると、アリオンはにっと笑った。


「俺の欲しいものあるかもしれねぇだろ?ついでにお前も見ろよ。ローリーも楽しんでくれる方が嬉しいぞ、俺。それにお前、リックさんに羽伸ばせって言われてんだから、色々見とけよ」


 そう言ってくれるアリオンに頬が緩む。


「……うん、ありがとアリオン」


 アリオンは柔らかく頷いてくれた。


 お店に入ると綺麗なガラス細工が広い店内に所狭しと置いてある。


「わあ……綺麗」


 キラキラしているガラス細工を見ていると、心が浮き立ってくる。


「だな」


 アリオンも店内を見渡しながら言う。


「色んなのがあるわね」


「おう」


 広い店内をアリオンと付かず離れずで見ていると、ガラス細工のアクセサリーもあった。興味を惹かれてとてとてと近づく。


 イヤリングやピアス、ネックレス等を綺麗なガラスで細工されている。


 ふと、あるネックレスに目が奪われた。


 カランコエを模したと思われるネックレスで、花びらは橙色だ。少しだけ茶色に近い橙色は、アリオンの髪色に似ている。中央には少し灰色がかった魔石が置いてあった。大きさからして、魔力を入れる為の物だろう。

 お互いの魔力を入れたものを贈るのが恋人同士での昔からのやり取りだから、その目的の為に魔石なんだろう。

 職人さんの作品なのか、名刺みたいな物が置いてある。一点物みたいだ。お値段は……少し高めだ。


 ――職人さんの一点物だものね……。でも……ちょうど……アリオンの色みたい……。


 そんな事を考えながらついじっと見てしまった。


「ローリー、欲しいもんでもあったか?」


 背後からの声掛けに肩を跳ねさせる。

 すぐに振り向いた私はふるふると首を振った。


「ううん、色々あるなぁって見てただけ。アリオンは欲しいものあった?」


「……ちょっと向こうの方見てえなって思ってんだけど」


 広い店内なので行く前に声を掛けてくれたのだろう。

 私もアリオンについていこうと決める。


「あ、私も見に行く」


「おー」


 アリオンの軽い返しにほっとした。たぶん見ていたものはバレていないと思う。

 色んなアクセサリーがいっぱい置いてあったし、私の背中でたぶん隠れていた。


 流石にあのネックレスを買うのは諦めよう。ちょっとアリオンの色の物を勝手に買うのは気が引ける。


 ――アリオンの色過ぎたし……!


 後ろ髪を引かれる思いを頭を軽く振って断ち切りながら、アリオンの後ろについていった。


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