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初めて


 彼……ユーヴェン・グランドと私、ローリー・ガールドは学園時代からの同級生で友人だ。彼は金の髪にはしばみ色の瞳、顔は整っているが人懐っこい性格でクラスの人気者だった。

 同じ委員になったのがきっかけでいつの間にかよく話すようになった。王宮志望だったのも私と同じで、希望部署は違ったけれど、だからこそよく励まし合ったりもした。

 彼とはいい友人関係で、気負わなくていいのが楽だった。冗談を言い合って笑いあう、それが楽しかった。

 その関係は王宮に就職してからも続いて、互いの部署の愚痴を言ったり他愛のない話をしたり変わらない関係が心地良かった。


 だからこそ、気づかなかった。


 ***


 無事王宮へ就職して一年。仕事にも慣れてきた頃だった。


「なぁ、さっきの人って……先輩?」


 少し呆けたような顔で私にそう言い出したのは、金の髪と榛色の目を持つ学園時代からの友人、ユーヴェン・グランドだ。


 ユーヴェンが私を呼び止めた時に一緒にいた同僚のことを聞いているのだとすぐに思い当たる。

 彼女はとても美しく大人っぽい。同い年だとは思わなかったのだろうな、と思いながら笑って返した。


「同僚なの。同い年よ」


 ユーヴェンが女性に興味を持ったことは珍しい。少しからかってやろうと更に言葉を重ねる。


「あの子があんまり綺麗で大人っぽいから驚いた?」


 そういうと彼は呆けたような顔から一瞬で真っ赤になった。

 さらには。


「そ、そうだよ悪いか!」


 言い当てられたのが恥ずかしいのだろう、どもりながらも誤魔化さない。正直な性格なのだ、ユーヴェンは。


「へえー、そっかあ」


 私はにんまりと笑った顔をして、いいおもちゃを見つけたわ、と呟いた。それに対しユーヴェンはなんだよおもちゃって、と赤い顔をしながら抗議している。


 なんだろう、少しいつもと違う。

 こういった話題は面白いはずなのに……なんだろう、どこか気分が晴れない。


 でもそうだ、いい機会だ。ユーヴェンには彼女の踏み台になってもらおう。

 踏み台として考えたことに罪悪感でもあるのかな、そう思いながらにやりと笑ってみせる。


「見返り次第では協力してあげてもいいわよ」


 そう言うと、キラキラと期待に満ちた目で私を勢いよく見た。


「本当か!?」


 うん、悪い気はしない。やっぱり気のせいね。


 その安堵と共に見返り次第ね、と返した。


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