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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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叱責と心配


 ドギマギしながらアリオンの責めるような鋭い視線に、目を伏せながら答える。


「わかってるわよ……。……あの時は……伝達魔法成功した喜びでちょっと……気が緩んでたの……」


 魔力切れを起こしかけた時は魔法の授業がない日だったから、かなり伝達魔法の練習をしていた。そして成功したので伝達魔法を飛ばそうと思って、魔力交換をしていたのだ。

 ……でもアリオンに魔力を流し過ぎて、私は少しくらっとしてしまった。


「あん時もそう言ってたけどな、緩んだからって魔力切れ起こしかけんな!魔力切れ起こしたら倒れる事もあるんだからな!?」


 アリオンの思い出して再燃した怒りに目を泳がせる。あの出来事は私が油断したせいなので言い逃れできない。


 魔力切れしないように、なんて子供の頃から言われる当たり前の事だ。しかも魔力を完全に空にしてしまったら生命の危険がある。……まあ空にする前に眩暈や吐き気、立ち眩み、酷い時は意識障害が起こるので、完全に空にする事はあまり起きない。

 あの時も相当アリオンとユーヴェンから心配されたし、後でお兄ちゃんと両親にも報告されてしまってかなり怒られた。


「わ、わかってるってば……。あの時はアリオンが魔力くれたから……ほら、問題なかったじゃない……」


 そう言うと、アリオンは目を厳しくした。


「結果的に問題なかっただけだろ!俺が魔力変換魔法覚えてなかったら、倒れてたかもしれねえからな!?」


 当時も回復した後にこうやって怒られたのを思い出して縮こまる。


 魔力変換魔法は魔力の波長を合わせてくれる魔法だ。魔力を他人へ渡すのは魔力の相性が良くないとできないが、この魔法を使うと渡す相手に波長を合わせられる。それに魔力渡しには伝達魔法の魔力交換とは違ってちょっとしたコツが必要だったらしいが、この魔法は発動させるだけでも相手に魔力を渡せるようになっているのでこの魔法を覚えておくだけでいいという、近年開発された画期的な魔法だ。

 昔は魔力切れで危険な状態に陥る事が多かったが、今はこの魔法のお陰でほとんどそういった事は起きていないという。


 あの時だってくらっとした私に気づいたアリオンが、魔力交換の為に触れていた手からすぐに私に魔力を渡してくれたから、大事にならなかった。


 ――確かにアリオンが魔力を渡してくれなかったら、そのまま倒れてたかもしれないけど……。


 バツが悪くなりながら、どうにかアリオンの怒りを収めてもらおうと口を開く。


「……まだちょっとくらっとしたくらいだったから……大丈夫だったわよ。もっとやばい時は立てなくなるから……」


 そう言った途端アリオンは目を丸くする。


 ――あ、余計な事言ったかも……。


 気づいた時には遅い。アリオンは目つきを鋭くして、更に私の顔に近づいた。近すぎて心臓が早鐘を打ち始める。


「もっとやばい時ってなんだ、お前!?んな事あったのか!?」


 逃さないように私の目を灰褐色の目で覗き込まれる。アリオンは今怒っているから気づいてないけれど、キスしてしまいそうなくらいに近い。


 ――は、早く離れてもらわなきゃ……!


 心臓が持たない。


 自分の失言を後悔しながら、少しでも早く離れてもらえるよう観念して白状しようと重い口を開いた。


「…………学園入る前に自分の魔力を使い過ぎるとどうなるかをちょっと試してみたというか……」


「お前はなんて危険な事やってんだ!?」


 言うと同時にアリオンの叱責が飛ぶ。アリオンの顔は眉を寄せてかなり怒った顔だ。……それに心配も混じっているのは分かっているので、大人しくアリオンの叱責を受ける。


「…………家族全員にとことん怒られたわよ……」


 私の言葉にアリオンは私を睨みながら同意した。


「当たり前だ、馬鹿ローリー!」


「うっ……」


 確かにそんな実験みたいな真似は今思うと馬鹿以外のなにものでもない。家族からも相当怒られた。

 それに魔力交換で魔力を流し過ぎて魔力切れも、かなり馬鹿だったので何も反論できない。


「あー……ったく、お前は……。……もうやんなよ?そんで魔力を直接交換したりすんのが一番魔力いるんだから、そういう時はちょっとずつ流すんだぞ?一気に流すな」


 アリオンが眉を寄せてじっと私を見ながら細かく注意してくるので眉を下げた。


 まだ、距離は近い。


「わかってるわよ……。ほら、スカーレットとカリナと魔力交換した時はちゃんとそうしてたから……」


 この前の事を持ち出すと、アリオンも思い出したのかほっとしたように寄せていた眉を緩める。それと一緒にかなり近づいていた顔が少し離れた。

 ほっとしていたら、アリオンは頬を挟んでいた手を私の片頬に優しく当てる。その表情は心配そうだ。


「そうだったな。……お前がちゃんと忠告聞くことはわかってるけどな……時々無茶したりすっから心配なんだよ」


 コツンと額を当てられる。


 また、近い。アリオンといると、心臓が壊れてしまうんじゃないかと心配になる。けど……傍にいたい。


「ちゃんと気をつけるから……」


 アリオンが心配しないよう、しっかり頷く。


「ん、頼むな。まあ俺がいる時には魔力渡してやるけどな……心配で寿命縮まるからあんまりやんなよ?」


 きっとアリオンの事だから、ちょっとでも顔色を悪くしてしまったら渡してくれそうな気がする。


「わかった」


 真面目に頷くと、アリオンは安心したように頬を緩めた。


「よし」


 そう言って額を離して頭を撫でてくるので、私も頬を緩めて微笑む。


「ん、アリオンありがと」


 心配してくれる気持ちは嬉しいのでお礼を言っておく。


「おう。……怒って悪かった。でも思い出したら、つい……またやらかさねえか心配になっちまった」


 アリオンが眉を下げながら謝ってくる。今は普段使いの魔法しか使わないから、魔力を切らすことはほとんどない。

 ……まあ、魔力切れを起こしかけたのは魔法の授業もない日だった。私の気が緩まないか心配なのだろう。


「アリオンが心配してくれてるのはわかってるからいいわよ。……確かに馬鹿な事したし……」


「そうだな」


 苦笑交じりに私が返すと、アリオンが真面目な顔で頷いたので口を曲げる。


「……頷かないでよ……」


「頷くしかねえだろ」


「うう……」


 呻き声を漏らすとアリオンが楽しそうに笑う。その笑顔に私もつられて笑ってしまった。


 アリオンの楽しそうな笑顔は少し幼い。

 私もアリオンと初めて会った時の事を思い出しながら、今日伝えてくれたアリオンの気持ちと重ね合わせる。


 ――アリオン、一目惚れ……だったのよね……。


 それなら、学園時代はずっと……アリオンの想いに包まれていた、という事だ。恥ずかしくて耐え切れない思いも湧くけれど、それ以上に嬉しい感情が大きい。

 思わず顔を緩めながら、アリオンを見上げる。


「あのね、アリオン。私ね、嬉しかった。アリオンが……一目惚れ、してくれたって聞いて。最初からそんな風に思って、素で私に接してくれてた事も嬉しかった」


 笑みを溢れさせながらアリオンに伝える。そうすると、アリオンはとても優しく笑ってくれた。


「そうか……」


「ふふ、アリオンを初めて見た時はね、私かっこいい男の子だなあって思ったの」


 私もアリオンと初めて会った時に思っていた事を話し始める。

 アリオンが話してくれたのだから、私も思っていた事を話したい。


「!!」


 私の言葉に驚いたようにアリオンは目を見開く。そしてカッと顔が真っ赤に染まった。


 なんだかずっとアリオンにドキドキさせられていたから、少し仕返しができたように思えてくすっと笑う。


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