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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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―押し付け合い―


 暫くすると笑いが収まったのか、キャリーが話しかけてくる。


「まあ、来たついでにちょっと話聞かせなさいよ」


「キャリーは昼間も聞いてただろ……」


 思わずそう返す。

 するとメーベルさんも笑いながら言った。


「ふふ、私もちょっとブライトさんに聞きたいんだ」


「そうか……。まあ、最初から断るつもりはないけど……」


「そっか、ありがとう」


「じゃ、よろしくね」


「いや、いいけど……。ちょっとだけ待ってくれ、リックさんに俺がローリーを家に連れて帰る事だけ言っとく」


 キャリーとメーベルさんにやるべき事を告げる。


 二人共すぐに頷いてくれたので伝達魔法を窓の近くで描いていく。描き終わって文章を書き纏めると、窓を少し開けて伝達魔法を飛ばした。


 すると、感心したような声でキャリーが言う。


「ちゃんとガールド隊長に報告するあんたって真面目よね……」


「そりゃリックさんがローリー溺愛してんの分かってんだから当たり前だろ」


 キャリーの声にそう答えると、可笑しそうに笑った。

 メーベルさんも楽しそうに笑う。


「ふふ。応接室にも止まり木設置したから返事が来たらすぐに分かるよ」


「そうか、わかった」


 伝達魔法を送ると、一人掛けのソファーに座るよう促される。

 ちらりとローリーを見るとまだすやすやと寝ている。安心しているような寝顔に思わず頬が緩んだ。


 紅茶を用意してくれたので、礼を言って受け取って飲む。走って来ていたので、少し落ち着いた。


「あ、そうだ、ブライトさん。お姉ちゃん達から何か聞かれたりした?」


 メーベルさんが不安そうに言った言葉になんと答えようか迷って目を逸らす。

 すると、キャリーがなぜか顔を背けていたのが目に入った。

 まさか。


 とりあえずメーベルさんに事実を返す。


「……まあ、ユーヴェンの事について聞かれたよ。それで……俺にユーヴェンの事を聞けばいいってメーベル医務官達に言ったのはキャリーか?」


 俺がそう言うとキャリーはバツが悪そうにこちらを向いた。メーベルさんは苦笑している。


「……晩御飯の時にユーヴェンさんの話題になったのよ。それで聞かれた私とローリーは……ほら、カリナの頭撫でてた事を言った方がいいのかどうか迷ってね……」


「別に言わなくていいよ!」


「ほら、カリナもこんな調子だから……。だから……あんた呼ぼうと思ってたし、つい……ブライトが一番よく知ってるって言っちゃったのよね……。ユリアさんもブライトの事知ってるみたいだったから、ローリーもあんたがユーヴェンさんの事は幼い頃から知ってる、なんて言っちゃってね……」


「お姉ちゃん達は心配し過ぎなの。ちゃんと私が考えるのに!」


 キャリーの言い訳を聞きながら、メーベルさんの少し怒っている突っ込みが入る。


 ――……メーベルさん、こういう所はローリーやエーフィに似てるな……。


 溺愛されている妹の反応は似通うのだろうか。

 そしてローリーまでも俺を売っていた事が判明した。


「……俺、キャリーが判断すると思って言ってねえぞ」


「……私とローリーもブライトが判断すると思って言ってないわよ」


 そう言って睨み合う。


「俺に判断任せるなよ!そこは長年の付き合いのキャリーじゃねえのか?」


「私だってユリアさん達にユーヴェンさんがカリナの頭を撫でてた、なんて言うのは怖いし迷うのよ?ローリーとも相談したけど答え出なかったし、ならユーヴェンさんと親友のブライトに任せようってなったのよ!」


「なんでだよ!結局怖かっただけだろ!?」


 ローリーもキャリーも言う責任を俺に擦り付けようとしてたようだ。


 ――まあ怖いのはものすごくよく分かるが!


 キャリーも俺を睨みつけながらぐっと黙り込む。


 そこにメーベルさんの不貞腐れた声が割って入った。


「もー、なんでみんな私の言わなくていいって意見を聞いてくれないのかな」


「……」

「……」


 メーベルさんの言葉を聞いてから、俺とキャリーは頷き合った。


「そうね、カリナの意見を聞くべきね」


「そうだな、やっぱりメーベルさんの意思が大事だもんな」


 本人の意思を尊重すべきだ。それがいい。


 ――……エーフィの兄としての俺だったら知りたいとは思うけど、告げ口する勇気は持てねえ……!


 だってそんな事を言ったらユーヴェンはメーベルさんに近付けなくなるような気がしてしまう。……メーベル医務官ならやりそうだ。

 流石に友人の恋路を閉ざす可能性があることは言えない。


「え、急に態度が……」


 メーベルさんが俺とキャリーの様子を戸惑いながら見ている。


 俺とキャリーは快く笑い合う。


「ということで言わない事に決定ね」


「わかった、それで決まりだ」


 あとでローリーにも伝えておこう。きっとローリーも気にしているだろうから。


 ――……こいつ俺をメーベル医務官達に売ったから、少し頬を引っ張って意地悪してやろう。


 そうしたらきっとローリーは、謝りながら眉を下げるんだ。そんな顔も可愛いから見てえし。引っ張るといってもあんまり痛くないように摘むぐらいにするが。


 少しだけローリーをまた見る。俺が意地悪してやろうと考えた事なんて知らずに、変わりなく寝ている。


 ――ずっと見てられるな……。


 そう思ってはいるが、流石にそれはローリーに失礼なのですぐ視線を外す。


「……まあ、いいけど……」


 少し納得いかなさそうにメーベルさんが呟いた。


 そんなメーベルさんにキャリーが苦笑交じりに謝る。


「ごめんなさい、カリナ。あなたの意見を聞いてない訳じゃないのよ?ただ……ほら、ユリアさん達がカリナを溺愛してるの知ってるから……報告した方がいいのか迷ってただけなのよ」


「俺も悪かった。妹を溺愛してる兄としては言いたい気持ちもあるし、でもユーヴェンの友達としては言わない方がいいんじゃって思って迷ってたんだよ。メーベルさんの意見を無視しようとしてた訳じゃなくて……メーベル医務官達の立場としてどうかなって考えてたんだよ……」


 キャリーと俺はそれぞれメーベルさんに謝る。メーベル医務官達の気持ちも分かるから迷ってしまったのだ。


「いいよ、二人とも。最後は私の意見を聞いてくれたし」


「ふふ、ありがとう」


「助かる」


 仕方なさそうに笑ったメーベルさんの言葉にほっとしていると、キャリーがふと思い出したように言った。


「……そういえば……ユリアさん、不思議な事言ってたわね……」


「え?」


 メーベルさんが不思議そうに首を傾げる。


「『みんな、ブライト君に聞けって言うね』……そう言って、笑ってたじゃない。なんか、前にも誰かに言われたみたいじゃない?」


「……そういえば、お姉ちゃんそんな事言ってたね……?」


 キャリーの言葉に考える。俺に聞けと言う事は、俺を知っている誰かだ。しかも俺がユーヴェンと仲が良い事を知っていて、メーベル医務官と俺が知り合いだと知っている誰かで……。……俺に聞いたらいい、なんて言えるのは……俺と仲が良い、誰か、になるような気がする。

 そう考えながら呟く。


「……俺がユーヴェンと仲良い事知ってる誰かに聞いたのか?」


「まあそうなんでしょうけど……誰なのかしら?」


 キャリーのその言葉に、さっき打ち消したリックさんがまた思い浮かんだ。


 ――俺がリックさんのお気に入りって言われてるみたいだし……険悪な仲でも聞くのは有り得るか……?


 俺とユーヴェンが仲良い事はローリーに聞いて知っていたんだろうし。……でもわざわざ険悪な仲のリックさんに聞くぐらいなら俺に直接聞いてきそうな気がする。


 ――やっぱ仲良いのか……?


 こんな風に考えてしまっている時点でさっきの馬鹿みたいな考えを振り払えていない。

 一度疑念を抱いたらなかなか消えてくれないのは困りものだ。自分でも少しだけ抱いた疑念だし、リックさんとメーベル医務官の様子を見ていたら違うだろうと思っているのに……。

 しかも、勧誘をリックさんからいつも聞いているという一点だけだ。


 ――……普通に考えて、煽ってるだけだよな……それ。


 あんなに仲が悪いんだ。煽るぐらいしそうではある。


 そう考えると腑に落ちた。やっぱり気のせいだ。


「……いくら考えてもわからないわね……。ユリアさんの交友関係までわからないもの……」


「確かに……。お姉ちゃん、あんまり自分の事話さないし……」


「……俺もわかんねえな。メーベル医務官と仲良い人は思い浮かばねえ」


 だから二人にそうやって答える。たぶん険悪な仲のリックさんには聞かないと思われる。

 ということは……俺と仲の良い見習い騎士か先輩に、メーベル医務官とも仲が良い人がいるのだろう。そう考えた方が現実的だ。


「ふふ、なら仕方ないね。あ、ブライトさん、お姉ちゃんとお兄ちゃんとダリルがごめんね……」


 メーベルさんがそう言ってくるので首を振る。


「別に気にしなくていい。俺も聞きたい気持ちはよく分かるから」


「そっか、ありがとう」


 俺だってアレンの親友が来たら絶対に引き止めて聞き出す。そう思うとあまり責める気にはなれなかった。



読んで頂きありがとうございます。

昨日は更新できずすみません。

今日は遅くなるかもしれませんが、二話目も更新できたらと思っています。

これからもよろしくお願いします。


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