初対面
可愛らしい装飾がされた木の扉を開くと、カランコロンと鐘の音が鳴る。その音で店員さんが来てくれたので先に入っている者の連れだと話す。するとすぐに案内してくれた。
短い金髪を持った馴染みの顔を見て,、ふっと笑ってから声を掛ける。
「ユーヴェン、待たせたわね」
私の声掛けに顔を素早くこちらに向け、勢いよく立ち上がった。その勢いで椅子がガタッと揺れる。私達に向けた榛色の目は見開かれ、激しく泳いでいた。
「い、いや全然!ぜんっぜん、待ってませりゅ、ません!」
――わあ、こっちもこっちで問題があったわ。
噛み噛みな挨拶に少し遠い目をして、カチコチに緊張しているユーヴェンの両肩をガシッと抑えた。
「ユーヴェン、落ち着きなさい。じゃないと紹介はなしよ」
ギッと睨むように見ると、ユーヴェンはヒュッと喉を鳴らした。たぶん私が本気なことを悟ったのだろう。
「わ、わかった。お、落ち着くから少しだけ待って、くれ」
頭を手で押さえて何度か深呼吸をしている。
待つと言ってももう既にカリナもスカーレットもいるのだが。
呆れた顔をしていると、後ろからくすくすと笑い声が聞こえた。とりあえず二人を立たせたままは良くないだろうと後ろを向いて声を掛ける。
「カリナ、スカーレット、奥に座って」
二人は私の声掛けに応じて向かいの席に座った。私はユーヴェンの隣に座る。ユーヴェンの真向かいがカリナだ。
ユーヴェンの緊張しいのお陰かカリナも気が抜けたのだろう、さっきから笑顔が見える。これなら大丈夫そうだ。……少し安堵したのか息を吐く。
ユーヴェンは笑顔のカリナを惚けたように口を開けたまま見ている。……そのユーヴェンに突き刺さるスカーレットの鋭い眼光には気づいていないようだ。
仕方なくユーヴェンの腕を叩く。頭をはたきたいが座ったままだと届かない。
「ユーヴェンも座りなさい」
声を掛けるとユーヴェンはハッとして素早く席に座った。
全く、カリナに見惚れ過ぎである。笑顔のカリナが可愛いのは同意するけれど……。
ひとまず全員席に座ったところで店員さんを呼ぶ。人数分の紅茶を頼むと、まずは全員の紹介をしようと口を開く。
「さて、じゃあまずは紹介ね。彼がユーヴェン・グランド。騎士団で事務をしているわ。だからスカーレットは会ったことあるわよね?」
「ええ」
さっきより幾分か目付きを和らげたスカーレットが答える。和らげたといっても鋭さはかなりのものだ。ユーヴェンはその眼差しを何事もないように受け、朗らかに笑った。
「俺もキャリーさんの事は知ってるよ。話したことはあまりないけれど」
深呼吸して落ち着いたのだろう、緊張がだいぶ取れている。
「まあ、そうね」
スカーレットは鋭い眼差しをものともしないユーヴェンに少し気が抜けたように息を吐きながら同意した。
「なら改めて。ユーヴェン・グランドです。今日はよろしくお願いします」
ユーヴェンは爽やかな笑みを浮かべながらカリナ、スカーレットを見て、それぞれに頭を下げる。
「私も改めて、スカーレット・キャリーよ。よろしくお願いするわ」
スカーレットはひとつ息を吐いて、自分も名乗る。敬語じゃないのはユーヴェンを警戒しているから舐められないようにだろう。そんな事は知らないユーヴェンは……知っていても変わらない気がするが……相変わらず笑っている。
カリナもぺこりと頭を下げた所で、私はカリナを紹介する。
「それで彼女がカリナ・メーベル。私と同じ魔道具部署の事務をしてるわ」
「……初めまして。……カリナ・メーベル、です。こちらこそよろしくお願いします」
カリナは少し緊張したようにぎこちない笑みを浮かべた。さっきは笑っていたが、今になって緊張がぶり返してきたのだろう。
そんなカリナを見て胸がざわつく。私も心配になってきてようだ。




