初対面
「ユーヴェン、待たせたわね」
喫茶店に入って、すでに来ていたユーヴェンに声をかけると勢いよく立ち上がった。その勢いで椅子が揺れている。
「い、いや全然!ぜんっぜん、待ってませりゅ、ません!」
わあ、こっちもこっちで問題があった。
少し遠い目をして、カチコチに緊張しているユーヴェンの両肩を抑える。
「ユーヴェン、落ち着きなさい。じゃないと紹介はなしよ」
ギッと睨むように見ると、ユーヴェンはヒュッと喉を鳴らした。たぶん私が本気なことを悟ったのだろう。
「わ、わかった。お、落ち着くから少しだけ待って、くれ」
頭を手で押さえて何度か深呼吸をしている。
待つと言ってももう既にカリナもスカーレットもいるのだが。
すると、くすくすと笑い声が聞こえた。
「カリナ、スカーレット、奥に座って」
そう声を掛け、私はユーヴェンの隣に座る。ユーヴェンの真向かいがカリナだ。ユーヴェンの緊張しいのお陰かカリナも気が抜けたのだろう、さっきから笑顔が見える。
これなら大丈夫そうだ。
ユーヴェンは笑顔のカリナを口を開けたまま見ている。……スカーレットの鋭い眼光には気づいていないようだ。
仕方なく腕を叩く。頭をはたきたいが座ったままだと届かない。
「ユーヴェンも座りなさい」
声を掛けるとユーヴェンははっとしてそそくさと席に座った。
全く、カリナに見惚れ過ぎである。笑顔のカリナが可愛いのは同意するが……。
ひとまず全員席に座ったところで店員さんを呼ぶ。人数分の紅茶を頼むと、まずは全員の紹介をしようと口を開く。
「さて、じゃあまずは紹介ね。彼がユーヴェン・グランド。騎士団で事務をしているわ。だからスカーレットは会ったことあるわよね?」
「ええ」
さっきより幾分か目付きを和らげたスカーレットが答える。ユーヴェンはその眼差しを何事もなかったように受けて笑った。
「俺もキャリーさんの事は知ってるよ。あんまり話した事はないんだけど」
一呼吸して落ち着いたのだろう、緊張がだいぶ取れている。
「まあ、そうね」
スカーレットは鋭い眼差しをものともしないユーヴェンに少し気が抜けたのか、ユーヴェンの言葉に息を吐きながら同意した。
「なら改めて。ユーヴェン・グランドです。今日はよろしくお願いします」
カリナ、スカーレットを見て、それぞれに頭を下げる。
「私も改めて、スカーレット・キャリーよ。よろしくお願いするわ」
スカーレットはひとつ息を吐いて、自分も名乗る。敬語じゃないのはユーヴェンを警戒しているから舐められないようにだろう。そんな事は知らないユーヴェンは……知っていても変わらない気がするが……相変わらず笑っている。
カリナもぺこりと頭を下げた所で、私はカリナを紹介する。
「それで彼女がカリナ・メーベル。私と同じ魔道具部署の事務をしてるわ」
「初めまして。カリナ・メーベルです。こちらこそよろしくお願いします」
そう言って少し緊張したように、ぎこちなく笑みを浮かべた。さっきは笑っていたが、今になって緊張がぶり返してきたのだろう。私も心配になってきてしまう。




