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好きな人を友人に紹介しました  作者: 天満月 六花


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告白


 暫くそのまま涙を流していると、アリオンの撫でていた手が髪を梳いてくる。撫で終わりにするその仕草に、パッと顔を上げた。


 ――まだ、撫でててほしいのに。


 顔を上げると、柔らかく笑っているアリオンがいた。その顔は、片側を夕日の橙色に照らされている。


「ローリー、ほら、夕日綺麗だぞ」


 そう言ってくるアリオンに促されて、体を起こして太陽の方を見る。


 それと同時にアリオンの手が頭から離れたのが、寂しく感じてしまった。


「なんで今言うのよ」


 だからかつい、悪態をつく。


「見逃してたら後で文句言うだろ」


 私の性格を把握してるアリオンが、少し憎たらしい。


「もちろん。……綺麗ね」


 少しだけぼやけた視界に映る、夕日の橙色に染まった王都はとても綺麗だった。

 王都にあるはずの喧騒もこの場所からは遠くて、だんだんと沈んでいく橙色の太陽が、目に染みる。


「だろ?」


 得意気に言うアリオンに笑ってしまう。


 綺麗な景色をもっとよく見たくて、借りたハンカチで目の辺りをぐいぐいと拭く。


「おい、あんまりこするな」


 アリオンから注意をもらってしまう。そういう所は兄みたいだ。


「ふふ、アリオン、お兄ちゃんみたい」


 思ったことを零すと、アリオンはちょっと苦いような顔をする。


「お前なぁ……」


「だってアリオンも過保護なんだもの」


 お兄ちゃんと同じくらいか、もしかしたらそれよりも過保護かもしれないと思う。


「はー、そうだな。過保護だよ、俺はローリーに」


 溜め息を吐いて仕方ないように肯定するアリオンに、嬉しくなって頷く。


「うん!」


「なんか、嬉しそうだな」


 私の様子を不思議そうに見ているアリオンに、笑って理由を説明する。


「だって、そんなアリオンだから私も甘えられるし、頼れるし、我儘も言えるんだもの」


 アリオンが過保護だからこそ、私はアリオンに色々と言えるのだ。


「っ!……そうか……」


 アリオンは目を逸らして私の言葉に頷く。


「ふふ、そうなの」


「なら、いいよ」


「うん!」


 アリオンの優しい声音に、また頷いた。


 目の前にある王都の夕日を見ていると、アリオンがここに連れてきてくれた時に言っていた事を思い出した。


「ね、アリオンの家ってあそこら辺?」


 橙色に染める王都を眺めながら、街の様子を自分の記憶と照らし合わせて聞いてみる。


「ん?ああそうだよ。あの赤い屋根のとこ。ローリーん家は……あそこら辺だな」


 当たっていたことに嬉しくなりながら、アリオンの指した方向を見る。すると、見慣れた形の青い屋根が見えた。


「うん、たぶんあの青い屋根のよ」


「だな」


 なんだか探すのが楽しくなって、知っている家を探してみる。


「としたら……カリナとスカーレットの家はあっちの方ね」


 私達の家とは別の区画を指す。流石に行った回数が少ないので、当てるまではできなかった。


「へぇー、メーベルさんとキャリーは向こうなんだな」


 アリオンも興味深げに言うので頷く。


「そうなのよ。カリナとスカーレットは家が隣同士なんだって」


「なるほどな……そんでキャリーは小さい頃からメーベルさんを守ってたんだな」


 幼馴染だとは言ったけれど、家が隣同士なことまでは言ってなかったなと思って言うと、納得したような声が返ってくる。


「ふふ、そうなの」


 あんなに可愛いカリナとずっと一緒だったら、守りたくなるのも頷けてしまう。


 そして、その可愛いカリナの隣にいるのは、きっと。


「……あそこがユーヴェンの家かしら?」


 ――ユーヴェンこそ、相応しいと思う。


 そう思いながら、指差した。


「……ああ、たぶんそうだな」


 肯定したアリオンの、私が握ったままの手に力を少し入れて握る。そうすると、アリオンも同じ様に握り返してくれた。


 ――アリオンに、言おう。


 だって言うなら、アリオンがよかったもの。


「ねぇ、アリオン。聞いてくれる?」


 きっとアリオンはいきなり話始めても聞いてくれるのに、悪足搔きとばかりにわざわざ聞いてしまう。


「ああ、聞くよ」


 アリオンの柔らかい言葉に安心して、アリオンの肩に凭れかかった。

 私の突然の行動にアリオンは肩を揺らしたけれど、それ以上は何も言ってこないのでたぶんそのままでいいということだろう。もともとアリオンは私の行動をほぼ許してくれるので、そのアリオンの優しさに甘えよう。


 ――だって、甘えていいんだもの。


 アリオンに触れている頬と腕、繋いでいる手が温かくて、落ち着く。


 息を吸って、吐く。


 そして、目の前の夕日に染まる王都を眺めたまま、口を開いた。


「私ね、私……ユーヴェンのこと、好きだったみたいなの」


 口に出すと、今まで感じていた想い全てを思い出してしまう。


 胸が痛くて、苦しくて、熱い。


「……そうか」


 相槌だけ打って急かさない。そんなアリオンに、私はどれだけ救われているだろう。


 ――優しいアリオンがよかった。


 どうして……私はユーヴェンを好きになってしまったのだろう。

 好きになったのが、私の傍にいたいって言ってくれる、アリオンだったら、よかったのに。


 ぎゅっとアリオンの手を再び握ると、また優しく握り返してくれる。


 ――アリオンなら、よかったのにな。


 一度目を瞑ってから、開いて、また話し始める。


「私ね、全然気づいてなかったの。ユーヴェンにカリナを紹介するって言ったときも、カリナに私がユーヴェンのことを好きだと思ってたって言われたときも、気づかなかったの。アリオンにも、いいのかって聞かれたのに」


 自嘲した笑みが出る。


 今度はアリオンの方から手を握ってくれる。心が温かくなって、私も握り返した。


 何も気づかなかった、いや気づかないふりをしていた。


「……本当はね、なんだか不安のような嫌な感覚がしていたの。でも、私はそれを無視したの。些細なことだろうって。そうしたらね、取り返しのつかないことだった。取り返しのつかない、気持ちだった」


 ユーヴェンがカリナを見つけてから、ずっと感じていた陰りのような嫌な感情。

 ずっと表に出ることはなかったその感情が表に出てきた事で、初めて私は自分の気持ちを自覚することになってしまった。


「うん」


 相槌を打ってくれるアリオンが、優しい。


「どうしてなのかな。私……どうして……カリナの事も大好きなのに、ユーヴェンに想われてるカリナが羨ましくて、妬ましいの。どうして紹介なんてしてしまったんだろうって思っちゃうの。私が言い出したのに。私が言ったことなのに。私、なんで気づかなかったのかな。なんで、どうして……こんなにも、苦しいのかな」


 そう震えてきた声で言うと、繋いでいたアリオンの手が動いた。指と指を絡ませて、もっとしっかり繋いでくれる。触れる箇所が多くなった分、アリオンの手の温かさがもっと伝わってくる。

 それが心強くて、私もぎゅっと握り返す。


 王都を染め上げる夕日はとても美しくて、目を逸らさずに見ていた。それがだんだんとぼやけてきて、ただオレンジ色の光だけが残る。

 それでも前を向いたまま、アリオンの肩に顔を寄せた。


 声が震えて、涙が落ちていく。


「二人が……お互いに、惹かれ合ってるの、わかってる、のに。私、それ以上、進んで……欲しくないって……気持ちがあって。カリナはきっと、私の気持ちを、わかってて……だから進まないように、してるのも、わかってるの……。それなのに私、何もっ……言えなかった……!」


 言葉が詰まる。嗚咽が漏れ始めて苦しいのに、言葉は止まらない。


「ほんとはっ……言うべき、だったのに!今度……話をしよう……って……。友達なら……尚更、言うべき……だったのに……!きっとカリナなら、ちゃんと……話を聞いて、くれたのに……」


 今まで考えないようにしていた、カリナへの想いも、全部零れ落ちていく。


 アリオンが、うん、と相槌を打つ。 


「でも、でもっ……私、勇気が出なくって……カリナに言ったら……もしかしたら、気持ちをしまい、こんじゃうんじゃ、とか……だから……私が諦めれば、いいだけだって……思ったの。ずるいの、私……!ユーヴェンに、告白する、勇気も……持てなくて……カリナに、自分の気持ちを言う、勇気も、持てなくて……カリナのせい、に、しちゃうの……。だから、ずるいの、私……。ちゃんと、話……するべきだ……って……わかってるのに……」


 アリオンが、先程より強く、手を握ってくれる。


「だから……だからね!アリオンに紹介、頼んだの。誰かを好きになれたらっ!この気持ちを上書き、できて……それで、ユーヴェンへの想いを忘れて、カリナを、応援できて……全部、解決できるって思ったの!でもね、ほんとはね、アリオンが一人で……ほっと、したの。全然、覚悟なんて……できてなかったの……」


 想っていた、全部の気持ちが溢れていく。


「そうか」


 その優しい声に私は思わず考えていた事が零れた。


「アリオンがほんとに、彼氏だったらよかったのに」


「え?」


 アリオンの驚いたような声が返ってくる。馬鹿な事を言っているのはわかっていた。


「好きになったのが、アリオンだったらよかったのに。なんでこんなに優しいアリオンを好きにならなかったんだろう。どうして……ユーヴェンを好きになっちゃったのかな」


 ぎゅっとアリオンの手を握る。


「……俺はそんなに優しくないよ。俺の優しさなんて、ローリーへだけだ。ユーヴェンはみんなに優しくて真っ直ぐな、本当にいいやつだよ」


 アリオンは自嘲気味にそんな事を言う。そのアリオンの言葉に、私は縋り付くようにアリオンを見た。


「アリオンは優しいもん。それが私限定でも、私は嬉しいもの。今、こんな風に優しくしてもらって、どれだけ、どれだけ感謝してもしきれないぐらいなの。だから、アリオンは……優しいの……」


 涙が零れてしまう。こんなに優しいアリオンが、優しくないなんてそんなことあるわけない。

 それが私限定だとしても、それだったら私が優しいと言えば、アリオンは優しいという事になるはずだ。


「……ん、わかった。ありがとな」


 首の後ろを掻いて、それでも優しい声音で言う。それに安心して、泣いていたのに笑みが零れた。


 そうしてはっと気づいて、縋り付いていた手を離す。


「ご、ごめん、アリオン!わ、私なんだか……変なこと言ってたわね!?アリオンの事を好きになればよかった、とか……め、迷惑よね?私に想われても……って感じよね、ごめん!」


 慌てて言い募ると、アリオンは灰褐色の瞳でちらりと私を見た。


「……別に迷惑なんかじゃねぇよ……むしろ……」


 はっとして、顔が赤くなる。

 流石にその先を言ってもらったら悪い。アリオンなら肯定してしまいそうな感じがする。

 そう思い、大袈裟に声を上げて遮る。


「アリオンほんとに優しい!感動で泣いちゃいそうよ」


「…………ん、泣けよ」


「ふふふ、うん……うん……」


 きっと気を遣ってだ。まだ泣きたりないのなら泣けばいい、ということなのだろう。その言葉に甘えよう。


 アリオンの胸にまた倒れ込んだ。すると先程と同じように、頭を撫でてくれた。言わなくても優しく撫でてくれるアリオンの胸にすり寄った。

 一瞬だけアリオンの手が止まったけれど、また撫で始めてくれる。


 ボロボロと流れる涙と一緒に、言葉が溢れる。


「あのね……この前、見たの……。ユーヴェンが……カリナの、頭、撫でてる……ところ」


「うん」


「ユーヴェンね、真っ赤だった……。私を撫でる時なんて……なんでも、ないように……撫でる、くせに……。それがね、見ていられ、なくって……逃げ出したの、私……」


 アリオンの繋いだ手に力が籠もった。私も握り返す。


「そうか」


「うん……だから……ね……諦めなくちゃ……ってわかってるの……。私には……望みなんて、ないんだから……」


 そう諦めなくちゃ、いけない。わかっているのに考えていくと、涙が流れていく。


 アリオンの撫でる手が、いつもより深い。アリオンのごつごつした手の感触を直に頭に感じて、いつもは軽く撫でられていた事がわかる。


「……ローリーに想われてるなんて……俺にとっては、嬉しいことだけどな……」


 絞り出すように言うアリオンに、恥ずかしくなる。


「……アリオン、またそういう事言う……」


 赤くなっている気がして、顔をアリオンの胸に押し付けた。


「事実だ」


 はっきり断言するアリオンに、思わず悪態が口をつく。


「ばか……」


「ばかでいい」


 低い声で肯定したアリオンは、私の頭を撫でていた手を止めると、頭を抱え込むように力を入れた。


 そのアリオンの行動に、少し驚く。


「ローリー。少しこのままでも、いいか?」


 アリオンの声が、頭の上で響いた。


「うん……」


「ありがとな」


 抱き込まれるようにされていることに、流石にドギマギしてしまう。

 アリオンの大きい手が、私の後頭部にしっかり差し込まれていて、アリオンの手の感触が、近い。

 アリオンの大きな胸もしっかりしていて硬くて、男の人なんだと、当たり前の事を意識してしまった。アリオンの鼓動がさっきよりもはっきり聴こえてくる。


 握られている手をアリオンがしっかりと握ってくる。私は、この状態では流石に握り返せなかった。


「ローリーは、優し過ぎんだよ。自分の気持ち背負いこんで言わないようにしてんのが、その証拠だ」


 近いアリオンの声が、優しい言葉を紡いでいく。


「でも……ほんとは、言うべき、だもん」


 反論の声は、小さかった。


「わかんねぇだろ、んな事。俺は、ローリーの気持ちでいいと思ってる。全部言うことが正解な時もあっけど、正解じゃねぇ時もあんだろ。それこそ、ローリーの言うようにメーベルさんが気持ちをしまい込んじまうかもしれねぇし」


 アリオンの言葉が、耳に入っていく。


「そうかも、だけど」


「だから、ローリーのしたいようにすりゃいい。んで、メーベルさんに気持ちを言いたいと思ったならそうすりゃいい。…………ユーヴェンに、告白したいと、お前が思ったなら、そうすりゃいいんだ……。……もしかしたらそっから、考えてくれるかもしんねぇだろ……」


 私の心を軽くしようとしてくれる、アリオンの優しさが、嬉しい。


「……うん」


「俺は、ローリーの意思を、尊重すっから」


 きっとアリオンなら、私がどんな選択をしても、肯定してくれるんだろう。


「うん、ありがと、アリオン……」


「ん」


 アリオンの優しさが温かくて、アリオンの手をぎゅっと握って目を瞑る。


「ね、もうちょっと泣いていい?」


「ああ、ちゃんとずっと傍にいてやる」


「うん……」


 私が返事をすると、頭を抱え込むように抑えていた手が、また頭を撫で始めた。

 なんでかそれが、むず痒くて、そして、少し寂しい気がした。

 それでも優しく撫でるアリオンの手に、涙腺が緩んでいく。そのまま嗚咽を漏らしながら、アリオンの胸の中で泣いた。


 もうここに、気持ちを置いていきたかった。

 アリオンの傍で思いっきり泣いて、ユーヴェンへの想いを、断ち切りたいと、願った。


 どのくらい経っただろう。辺りはもう日が落ちて、魔導灯がついている。かなりの時間が経ってから、私の涙はやっと止まりはじめた。


 正直目がパンパンだ。少し残った涙をこすらないようにハンカチで押さえて拭く。


 目を閉じて、一度深く深呼吸をした。


 ――うん、もう大丈夫だ。


 そう思って、アリオンを見上げる。感謝の気持ちで笑って、言う。


「ありがと、アリオン。落ち着いた」


「なら、よかった」


 アリオンはそう言って、柔らかく笑った。その近くで見る柔らかく優しい笑顔に、少し恥ずかしくなって目を逸らす。

 けれど気になって、また視線を上げた。


「どうした、ローリー?」


 その仕草が不思議だったのだろう。怪訝な表情に変わってしまう。

 もう少しあの笑顔を見ていたかったのに、残念に思った。


「なんでもなーい」


 教えるのもなんだか恥ずかしいので、何も言わない。


「落ち着いたなら、そろそろ行くか。日も落ちたしな」


 そう言って、アリオンは髪を梳いてくる。ずっと撫でられていたからか、終わるとなると、少し寂しい。でも今日は、長めに髪を梳かれている。きっと、ずっと撫でられていたからか、少し乱れているのだろう。地肌に少し触れる指が、温かい。

 乱れた髪が直ったのか、アリオンの手が離れていく。同時に、絡めるように繋いでいた手も、解かれる。

 なんでか、もの寂しくなった。


 きっとぎゅっとすれば、まだ繋いでくれていたとは思うけれど、それは、なんだか、まるで……。


 アリオンは立ち上がって、少し伸びをしていた。そんなアリオンに話し掛ける。


「ね、アリオン」


「なんだ?」


 振り向いて、座っている私を見てくる。


「あのね……私が聞いた、紹介の話、どうするの?」


 私のその言葉に、アリオンは驚いたように目を見開くと片手で顔を覆った。


 アリオンが紹介しないなら、しないでいいと思う。アリオンが傍にいてくれるなら、私も別に彼氏はいらない。アリオンから離れなくちゃと思って、もともと言い出したことだ。

 でも、アリオンがもし考えてくれていたら悪いので聞いてみた。


 アリオンは何も答えずに、指の隙間から私を見ている。


 これは……考えていたり、したんだろうか。どうなのかわからない。 


「えっと……いい人、いたり、するの?」


 首を傾げて聞くと、アリオンは俯く。

 そのまま暫く俯いていたと思うと、頭をぐしゃぐしゃと乱暴に掻いて大きく溜息を吐いた。


 次に顔を上げたアリオンの灰褐色の瞳が、真っ直ぐ私を見つめた。その真剣な眼差しに、胸が詰まる。


 アリオンは椅子に座らず、私の目の前に膝を付いて座った。

 アリオンの灰褐色の瞳と私の青い瞳が、絡む。


「ローリー」


 アリオンのその行動に、戸惑いながら返す。


「な、何?」


「……迷った、けどな。俺は、ローリーに対して適当に誤魔化すのも、嘘を吐くのも嫌なんだ。だから……ローリーに、聞いて、ほしいことが、ある」


 アリオンの真剣なその声に、真摯なその灰褐色の眼差しに、頷いた。


「うん……」


 ――なんだろう。なんだか、まるで……。


 考える暇もなく、熱を帯びたアリオンの灰褐色の瞳が、私の青い瞳を貫いた。


「俺は、ローリーが、好きだ」


 アリオンの言葉に、呼吸が止まった。


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