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四天王寺ロダンの青春  作者: 日南田 ウヲ
END OF SUMMER 夏の終わり
95/107

95 あきらめない男

(95)




 あきらめない、そんな燃えるような眼差しを持つ男が此処にもいる。

 刑事の角谷譲二だ。

 彼は今、後輩の刑事を運転席に座らせ、自分は後部座席に腰かけている。張り込みをしているのだ。

 刑事が今いる場所がどこかというと、それは大阪環状線「森ノ宮駅」から少し玉造方面に向かった坂ノ途中、そんな閑静な住宅街に居た。

 時刻は夕方、午後五時を過ぎた。夏の日差しはまだ暮れない。まだ優に二時間は夕暮れ時が続くだろう。

 角谷刑事は後部座席で膝を組みながら、目の前に見える一人暮らしのマンションを車内からじっと見つめて、張り込んでいた。

 後輩の刑事はあまり沈黙になじめないのか、どこかそわそわとして落ちつかないそぶりをしている。それがマンションを対角線上の見ている角谷刑事の視界の中に入るのか、やるせないように声を掛けた。

「…落合、じっとしとけや」

 言われて後輩の刑事が答える。

「いや、そういわれても。こう二時間も車内にいては辛いですやん」

「阿保かお前、何が辛いねんや。お前、刑事やろが」

「刑事でもね、譲さん、辛いもんは辛いですよ」

 ふてくされたように後輩が先輩に物申す。

「昨日も別の人らに昼間に張り込みしてもうたんでしょ。でも坊主やった…」

「何がや?それでいいんや。そのお陰で追いかける奴の行動が分かるっちゅうもんや」

 言ってから角谷刑事が腕時計も見る。

「そろそろ動き出すやろ。やっこさんのネットの購買記録や配達の受取記を調べたら、概ね早朝に受け取りすることが多い」

「それにどんな意味が?」

 後輩の質問の角谷刑事が角刈りの頭を撫でて答える。

「落合、簡単やろ?考えてもみぃ、早朝に荷物を取るということは、夜が不在っちゅこと。つまり深夜働きに出てるということや。つまり追ってるやつは、おそらく夕方前に起き出して、働きに出てるという勘が働かんかぁ?」

 最後は身を起こして運転席に投げかけるように声を出した。

「そうですか?」

 後輩が言ってから顔半分振り返る。その後輩を見て先輩が見てにやりとする。

「そうやがな。だからN区役所もそうやろ?」

 そこで後輩が真面目な顔つきになる。なると静かに頷いた。

「…成程。譲さん、そういうことですか」

「そういうことや」

 と、言った瞬間、角谷刑事は後輩へ素早く目配せをした。まるで何かを見つけた合図に誘導された視線の先で落合刑事が見たのはマンションから出てくる一人の若い男だった。

 耳にヘッドフォンをして背にリュックを背負っている。来ている服は作業着だ。

 角谷刑事がにんまりとして後輩に言った。

「ほな、落合行こか。仕事やで」





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