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77 現見

(77)




(何で()んねん…!!)

 真帆の中でメラメラと気持ちが湧く半面、可笑しみにぷっと噴き出しそうになる。

 真帆は歩みを早めようとして一歩踏み出そうとしたが、突如閃くことが在って足を別方向に向け、そっと脇の茂みに身を屈めた。屈めてコバやんの背を覗き込む様に息を潜めた。

 見ればコバやんは制服である。となると家には戻らず、このまま此処に来たという事か。

 まるで忍者が追跡するかのように真帆は息を細める。

(コバやん、何をしよるんか)

 真帆は帽子の鍔をキュッとして目を細める。

 恐らく、彼もまた昼のニュースで例の『事件』を見たのだろう。そしてこの現場にやってきて何かを調べているのだ。

 それが何か?

 フヒヒと不気味な笑いを浮かべて真帆がコバやんを見つめる。

 遠くから二人の姿を見た人は不思議に思う事だろう。一人はもじゃもじゃヘアを揺らして何かを夢中に探している。その後ろ数メートル後ろで繁みに隠れてその様子をじっと女子高生が見ている。

 何か盗り物の遊びでもしているのか?それとも何か見つけた物でも横取りしようかと猫が構えている様子か、きっとそう見える筈である。

 日常では見れない滑稽この上ない光景である。

「…あった」

(にゃにぃ!)

 確かにコバやんの声が聞こえた。

(コバやん、やっぱ探し物してたな)

 真帆が余計身を屈めてコバやんの動作を注目する。

(何を見つけたというのか…)

 真帆の鋭い視線がコバやんの指に集まる。

 だが、コバやんは見つけた何かを直ぐにズボンのポケットに仕舞った。

 それでは何を仕舞ったのか真帆には分からない。

 ならばデアル。


「こらっ。そこの高校生!!」

 真帆が声を上げる。

 その声にコバやんがビクッとして立ちあがる。やや中腰のままで周囲をキョロキョロ見渡す姿が繁みに隠れて覗き込む真帆にははっきり見えた。

(うわっ、めっちゃおもろいやん)

 イヒヒと真帆は笑った。笑ったがここでいつまでも隠れている訳にはいかない。すっと茂みから立ち上がるとコバやんに向かって言った。

「ここじゃ。探偵!」

 何故か、時代劇言葉である。

 自分自身、忍者にでもなったつもりか真帆が帽子の鍔に手を遣りながら顔を隠しつつ、コバやんに向かって歩き出す。

 そこで真帆の姿に気づいたコバやんがほっと息を吐いて、背を伸ばして歩み寄る真帆に向かって言った。

「九名鎮やん、驚かすな」

 だが、真帆は演技を続ける。

 何故かそれが面白いのか、笑いを堪えつつ。

「私はそんなものではない。『難波(なんば)デンごろ寝助』という忍だ。探偵、きさま、何を見つけた。言え、いま此処で言わねば、筋肉バーガーの特別月見バーガーを私に奢る事になるぞ、うっふふ」

「阿保か、九名鎮。君やんけ」

 コバやんが笑い声を上げて被っていた真帆の帽子をすっと取り上げた。帽子の下から真帆の素顔をが見えた。

 その素顔のままでニッと真帆が笑う。

「バレたか」

「当り前やんけ。それに筋肉バーガーの特別月見を食べれる胃袋を持つのは九名鎮だけやで」

 コバやんが思いっ切り笑う。

 それを見て真帆も笑う。笑うとコバやんが取り上げた帽子を真帆に手渡す。

「はい」

 言ってからコバやんが歩き出そうとするのを真帆が呼び止める。

「ちょい待ち。コバやん」

「えっ」

 振り返るコバやんのアフロが揺れる。

「ここで何してたん?」

「ここで?」

 きょとんとしてコバやんが言う。

「そうや」

 真帆が切り込む。

 切り込まれてコバやんが頭を掻く。

「あ、うん…ほら、昼のニュースで『事件』を聞いてさ。その風船が爆発した場所の一つがここやったやん?だからさ、野次馬根性で此処に来たんよ」

「それだけ?」

「うん」

「違うやろ?此処で何か探してたやん」

 言われてコバやんが再び頭を掻く。

「あぁ…、そうやね」

「それよ」

 真帆が人差し指を立ててコバやんの顔を指してから、ゆっくりとそれをズボンのポケットに向ける。

「ほら、ここに何を仕舞ったか言いなさい」

 真帆がニヤリと笑う。それを見てコバやんが言う。

「良く分かったなぁ。見てたな、後ろで」

(ちゃ)う!勘や」

 真帆が笑う。コバやんがそれを聞いて何か閃いたのか、にんまりして真帆に言う。

「まぁ、見せるのは良いけど。さっきの特別月見バーガーの奢りと交換。勿論、それでいいよね」

(にゃにぃ!!)

 猫言葉で真帆が心で吠えて声を上げる。

「小林、この卑怯者めっ!!」

 時代劇言葉で真帆が叫ぶとコバやんがポケットに手に入れて何かを取り出した。それは小さくて真帆には一目見て何か分からなかった。

 真帆は側に近寄るとコバやんからそれを取り上げてまじまじと見た。

 それは小さなICチップみたいなものだった。





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