75 伏線
(75)
――真帆、大丈夫。自宅マンションに帰って自転車を置いたら、警察が来てさ。昨晩、何してか、聞かれただけだよ。
まぁ、急に聞かれて驚いたんだけどさ。
ほら、壁画あったよね。あれが最近、ここら辺一体の商店街のシャッターや公園とかの壁に描かれているらしくてさ。その内の何処か防犯用のカメラに僕らしき姿と自転車が映っていたみたいでね。
それで僕を『確認』しに来たみたいさ。
まぁでも確認したらカメラに映っていた自転車と違うみたいで、嫌疑は何とやらさ。
何せ、昨晩は小林君とちょっと扇町公園で話をしたいたからね。
警察には悪いけど『証拠』はあるんだ。
それで真帆。
小林君は何か言ってたかな?
例の白狐面について?
チャットアプリのメッセージをそこまで読むと真帆はスマホを枕元に置いた。それからベッドの上に見える天井を見る。
(まぁ…何かあった訳でもないか)
真帆は躰を横に向ける。
学校から自宅に戻り、制服を着替えることなくベッドに転がって甲賀からのメッセージを読み直したのは、自分自身に気になることがあったからだ。
それは自分自身と言うか、友人が言った言葉。
――「大丈夫、計算の内さ」
(どういうこっちゃ)
真帆は顔を横に向けたまま頬に掛かる髪を手でどけた。どけたままじっとスマホを見つめる。
どうも、自分だけが何かに届いていない。そんな蟠りが湧き上がる。
確かに物事の推察力や観察力と言うのはコバやんには追い付かないし、全然敵わないというのはここ数日で良く分かった。
然しながら、何か物事の伏線がありそうで、そこを感じるがはっきりと見つけれていない。
――うむむ、
そんな蟠りが自分の内面から湧き上がりるが、声にならない。
声にはならないが代わりに何かが鳴った。
…ぐぅうう
(あ、鳴った。御腹)
正午を過ぎているのだ。
御腹が鳴いても仕方がない。
真帆は起き上がると階下の部屋に入ってテレビをつけた。
両親は店に出ている。だから昼ご飯は自分で用意しなければならない。
と、言っても簡単だ。
ジャーを開けてご飯を盛り、佃煮を乗せて食べるだけ。
シンプルだが、これが一番美味しいし、小学生の頃から自分がしてきた習慣だ。働いている両親の邪魔にならないように、自分が決めて来たルール。
それに従いご飯を用意してテレビの画面を見た。
ニュースが流れている。
それを見ながら箸をご飯につけた時、アナウンサーが語った速報に思わず視線を凝視させた。
それは…
大阪市内の複数の地点に突如、風船が現れ、同時に爆発。
その爆発後、炎に包まれた鳥が出現して消えたというニュースだった。




