7 逢魔が時
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逢魔が時というのがある。
帰る時に帰らねば魔に遭遇する。
そんな時を逢魔が時と言う。
そんな言葉を浮かれて走る真帆が知っているとは思わない。それにまだ逢魔が時には程遠い正午前なのである。
真帆は走る。
学校の廊下を渡り廊下に向かって。
そしてその先にいる仲間――あの、マッチ棒君に会う為に。
真帆は廊下を曲がり、渡り廊下扉に手を掛けて勢いよく引いた。引くと渡り廊下を横切るように強い風が吹いて彼女の長い黒髪を巻き上げた。
この渡り廊下は学校自体が都会のビル群に在る為かビル風の通り道になって、時間によっては目が開けられないくらいの強い風が吹く。
その風は遠く生駒山から吹き下ろしてくるのかもしれない。そしてその強い風が吹く時、一斉に裏の雑木林の木々も揺れ、渡り廊下はちょっとした木々にざわめきを感じる風の通り道になる。
まさに扉を開けた時がその時だった。
強いビル風が一気に通り抜け、木々のざわつく音の中、真帆は強風に巻き上げられた髪を手で押さえながら風に背を向けて過ぎるのを待った。
その間、約数秒――
真帆は身体を元に戻すと足を踏み出そうと正面を見た。
見たが、真帆の足はそこで止まってしまった。
何故なら、そこに狐の白面を被って赤い更紗で頭を被って制服を着た奇妙な人物が居たからだった。