表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/107

62 音声

(62)





 喧騒が止んだ。


 それは部屋に持ち込まれた外部メディアが入った音声レコーダが動き出したためだ。その部屋にいる誰もがその音声を漏らすことなく聞こうと息を飲む様に黙っている。

 注意深く探る様な意思の上を音声が流れ始めると、低い声がそこに蹲る意思を巻く様に部屋中に響いた。



 ――皆さん、昨晩の僕達『(SHINOBI)』のパフォーマンスは如何でしたか?

 多くの市民の方が真夜中のビルに映し描かれた作品に今は賛否両論と言うところでしょうか。

 でもこうした芸術に街が彩られるのは、決して悪くはないとは思うのです。

 これには大阪を良くしようとする僕等『(SHINOBI)』の理念が在るのです。

 それをお話ししましょう。

 現在の大阪は過去の『大大阪』時代以降、東京を凌ぐような魅力的な都市になっていると言えるでしょうか?

 ましてや東アジア全体に目を向けても上海等の大都市(メトロポリス)に比べ都市としての魅力はいかがでしょうか?

 まぁそれらの都市との差と言うのは残念ながら強大な消費地としての魅力とそこに住む人々の飽くなき欲求を満足させようとするあらゆる誘惑や刺激の強さ故に量られるかもしれませんが。


 しかしながらこの大都市大阪がそれらの都市を越えて真の国際都市として浮上する手段があります。

 それは何か?


 皆さん、

 パリを思い起こして下さい。

 ウィーンを思い起こしてください。

 そこに在るのは『芸術』です。

 芸術こそが大阪を浮上させる手段であるのです。

 その為には何が必要か。

 それには多くの芸術家が必要なのです。その芸術家たちによって大阪は新たに造られる。それには集まる多くの芸術家が豊かに暮らせなければならない。それには潤沢な資金が必要です。

 大阪はこれから現代芸術を生み出し胎動させる子宮にならなければ真に国際的な都市にはなりえないでしょうし、それを成せばパリ、ウィーンに並ぶとも劣らない芸術都市(アートポリス)になるのです。


 …いかがですか?

 今僕の声を聞かれているのは大阪市政を束ねる幹部の方達。

 どうぞ、芸術支援と言う一時的助成金などと言うまどろっこしい事は金輪際やめて、芸術家が活動できるよう潤沢な予算を回していただけるようお願いします。

 そうしていただければ昨晩の様なパフォーマンスを含めて、カジノ等とは違った方法で魅力的な都市へと大阪を変えることが出来ます。

 そう、言っておきますがこれはあくまでひとつの市政への提案にすぎません。

 唯、提案にすぎませんが、少し僕等『(SHINOBI)』はどうも執拗さと凝り性なところがあるようです。

 ですので一つ言わせていただくと、市政が僕等『(SHINOBI)』の提案を考えていただけるように、ある仕掛けをさせていただきました。

 それは本当の爆弾、――『イカヅチ』を大阪のどこか地中深くに埋めたということです。

 何を馬鹿な事を言っているのかと思うかもしれませんが、もし何か疑われているようでしたら、ひとつまたここで爆発騒ぎをさせて貰いましょうか。


 今回、予告はしませんよ。

 不意に実施します。


 大阪の空で何かが爆発したらそれが僕等の仕業だと思って下さい。

 そして思われたら――僕等が『イカヅチ』を大阪の何処かで爆発させることは容易な事なのだと思って下さい。

 もし、探されたいのなら僕らが創り出した、『アート』を探して下さい。せめてものヒントです。その側に『イカズチ』は埋めてあります。でも、見つかりますかね、アートが何かわからない、あなた達に。


 言っておきますが、脅迫とかそうした事ではありません。あくまでこれは市政への提案にすぎません。


 それでは、次のパフォーマンスを期待してください。


 夏空の下で僕等の芸術が爆発するのをお楽しみに。

 

尚、市民には危害は加えませんのでご安心を。


 では。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ