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46 才能

(46)



「…確かに…あるね」

 真帆はコバやんの動く指先の下で浮かび上がってくる線を見た。

 その交差する線は元々あったのだ。しかし、自分はそれに気づかずコバやんは気付いた。そこにどんな違いがあるというのだろう。

 そう言えば、加藤も言っていた。


 ――人間の記憶何て…自分が認識している人が映像として入って来ると、理解をするんだけど、知らない人物が近くを通ってもその記憶を残さない。

 つまり脳細胞のシナプスが反応しないんだろうね…。


(だったかな…)

  思うとコバやんを見る。

 つまり自分と彼とでは『そこで』大きな違いがあるのだ。

 そこは正に才能の境目と言えるかもしれない。その才能にコバやんが気付いているかどうかは分からない。

 しかし自分は確かに気付いている。


 ――彼の才能に。


「それで…」

 真帆はコバやんに訊く。

「それが何やと思うん?」

「あ、これ?」

 訊かれてコバやんがはにかむ。

「うん。それ」

「そうやね…」

 言ってからコバやんはもう一度じっと見る。見て数秒、頭を掻きながら彼が言う。

「思うに、是。地図じゃないかな?」

「地図?」

「そう、それもね。街の地図」

「えっ?街の地図…??何でそんなん分かるん?もしかしたら唯の悪戯書きかも知らへんやん」

 そこでコバやんは再び頭を掻いた。そして掻いて真帆に言った時こそ、真帆は本当にコバやんの才能に驚きを隠せなかった。


「きっと是はさ、誰かが作成した手書きの大阪市内の地図の切れ端じゃないかと思う。まぁ他にもそう思わせるのがあるんやけど、今は他所に置いといて、――例えばこの横が中央大通りで。あと縦に伸びる線が御堂筋とか、堺筋とか…そうしたものに見立てたら、何となくこの五線譜の先にそんな碁盤目状の地図が出来上がるんじゃないかと僕考えたんよ。

 碁盤目状と言うと京都もあるけど、まぁ後は直感で大阪にしてみた。 

 でも、笑っちゃうよね。芸名とか加藤の事とか、こんなことを考えてたら眠たくなったから此処で寝ちゃったんやけど。どうやろ?睡眠学習の効果ってやっぱ凄くない?」


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