42 騒動
(42)
翌日も夏期の特別講習は休講になった。
原因は緊急メールの通り、市内で複数の爆弾が爆発したからだ。
いや、正確には爆弾ではなく巨大風船が破裂したといった方が良い。
この事件について市民が知り得ている情報はテレビ報道によるものだが、おおむね今回の騒ぎはこのようなものだった。
――大阪市内の複数施設で午後二時ごろほぼ同時に果物を模した巨大風船――バナナ、ブドウ、林檎等の風船が突如破裂。
破裂後、通行人の頭上に風船内部に仕込まれた液体が散布され、それにより一時的に集団恐慌が発生。
救急車両及び警察並びにテロ特別班が夫々の現場に急行し、急病人の保護、及び散布物の化学分析を行うが、液体は劇毒物の類ではなく水道水であることが判明。
負傷者は無いが、気分を悪くした者が数人病院へと運ばれ処置を受けた。
尚、風船が置かれ破裂した施設は次の通り。
・国立国際美術館
・大阪富国生命ビル
・梅田スカイビル
・心斎橋ルシアン ぺラフィネ
・国立文楽劇場
これら施設に関連することを調査した結果、有名な建築家が設計されたアート建造物であることが判明。
また破裂した巨大風船を分解析した結果、風船が破裂する迄の仕組みについては、まず携帯電源を利用した空気注入機で風船を時間指定に膨らませた後、風船の外側に貼り付けられた電極へ軽微な電流が流れて、それにより風船が破裂するという至って簡単な仕組みだったと言うのが分かった。
犯行当日、各施設には夏休みを利用した客で溢れており、一連の犯行を実施した人物を特定することは難しい状況だったが、この一連の犯行に関して予告する趣旨のメールと電話が大阪市役所に届いており、それによりこれらの事件は或る団体が関与していることが明らかになった。
その団体名は
環境芸術集団「忍(SHINOBI)」
現在、大阪府警が総力を挙げて彼等について捜査を行い、また犯行の目的等について調査をしている。
それが今回の騒動で報道されている内容である。
そしてその情報の上に乗っ掛かって真帆は先程迄自分の部屋のベッドで夏休みの惰眠を貪っていた。
青春は時折、こうした爆発を伴うものかもしれない。
青春は爆弾のようなものを抱え込んで時にそれが爆発して周囲を吹き飛ばす程の力を持っている時代。
――青春爆弾、即、爆発。
そんな寝言を言った気がした真帆が目を覚ますと同時にチャットをしたのはコバやんだった。




