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四天王寺ロダンの青春  作者: 日南田 ウヲ
はじまりの跫音
3/107

3 夏休みの学校に彼女が居る理由

(3)



 今は夏休みではなかったろうか?

 確かにそうである。

 そんな夏休みの学校に彼女が居る理由を知りたくないだろうか?

 そう、何故彼女が夏休みに学校に来ているのかと言う理由だが、実は彼女は来年音大の試験受けるのだが、その試験対策として学校が設けた特別講義を受ける為に夏休みに入ってから毎日学校に来ていたのだ。

 彼女の志望は大阪N大の声楽科。中々の競争率で狭き門である。今年の夏を犠牲にしても合格できるかどうかは保証がない。


 いわば彼女はその狭き門を潜る為、受験に向けて今まさに夏の猛勉強中と言える。


 しかしながら夏休みは学生の為の『夏休み(ギフト)』だ。だから少しは遊びたいと思うのだが夏休みの学校には友人は殆ど居ない。校舎ですれ違うのは夏場に工事する業者ぐらいか、よくて部活動している学生ぐらい。本当に寂しいものだ。

 まぁそれは夏休みだから仕方がないことなのだけど、しかし一人ぐらい誰かは居ないだろうかと思って音楽室の窓から外を覗いていたら、偶然にも、いや…選りによって一番仲のいい仲間が渡り廊下を歩いているのが見えたのだ。

 思わず喜色満面になっても仕方がない。

(後でコバやんのとこ行こう)

 恐らく驚くだろう彼の顔を思い浮かべた時、背後から男の厳しい声が飛んだ。

「こらっ!九名鎮。外を見て何を笑ってる!!さぼるんじゃない!!」

 怒声に思わず肩を竦めて彼女が振り返ると音楽室の防音扉を開けて自分を睨む男の顔が見えた。

 眉間に皺寄せて彼女をじろりと睨む男。

 それは——学生からあだ名で『カマガエル』と呼ばれている音楽教師の鎌田だった。


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