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26 壁画(グラフティ)
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「…何だ…あれ?…」
甲賀が目を細めて指差す。その指先に真帆とコバやんの視線が伸びて行く。
視線の先は学園の正門。
そこに一台のパトカーが停まっている。そのパトカーの周りに部活生か補講を受ける学生達だろう、数人が顔を上げて何かを見上げている。
夏休みの学園に一体何があったというのだろうか。
「なぁ、どうした?」
甲賀が他の学生に声を掛ける。その声に一人が反応して声を出す。
「あれです」
下の学級生だろうか、甲賀の言葉に反応して指を指した。
「あれ?」
甲賀が指差す方を見る。真帆もコバやんも自然追ってそちらを見た。
――見た瞬間、
「…何なん?…あれ…」
真帆が声を出す。
コバやんはそれを見て何も言葉が無いのか口を少しぽかん開けてそれを見ていた。
三人夫々の視線が見つめる先に見えた物、それは…
「……何よ、あれ、思いっ切り…らくがきやん…」
それは校舎の外壁に描かれた強大ならくがき――いや、真帆にはそう見えたのだろうが、その正体は白黒のペイントで線描された壁画だった。




