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四天王寺ロダンの青春  作者: 日南田 ウヲ
はじまりの跫音
11/107

11 九名鎮の質問

(11)




 強烈な酸味の効いた何かを喉奥に放り込まれた気分だ。

 真帆はその酸味に思わず言葉が出た。

「どういうことよ?それ?」

 そして酸味を舐めた後の苦々しさに顔が渋面になる。渋面になって放り込まれた酸味を吐く出す様に言う。

「あんた誰よ?それになんか色々言うけどさ、一番はどうしてこいつを私が持ってるのを知ってるのよ」

 真帆は天鵞絨のファイルを上げる。渡り廊下から覗く空の下で群青の塊が世界を停止させる。

「言いなよ」

 真帆が狐の白面を睨む様に言う。

 白面の下の表情は探れない。探れないが、真帆は感じとりそれに応じるつもりだ。


 ――無論、リスクの及ばない範囲で。


「九名鎮って…」

 白面下で唇が動く。

「意外と強気何だね、音楽家の生徒だからどこか大人しいのかと思ったけど」

(何さ、この状況で私に対する個人的感想?)

 真帆の応じる心が微笑する。

 微笑した瞬間、真帆の黒髪が勢いよく横に流れた。見れば狐の白面が手にしている風車が勢いよく回転している。

 風が強く吹いたのだ。吹いた風が二人の間を勢いよく去って行く。去ると風車とは反対の手で指が二本立っていた。

「君の質問はふたつ。一つは『僕が誰か?』二つ目は『何故、九名鎮がそいつを持ってるのを知っているか?』だね」

 間髪入れず真帆が言う。

「ちょっと、それ追加よ」

「えっ?」

 狐の白面が驚く。

 白面の下の生の表情を想像して真帆がニヤリとする。

(何さコイツ。驚いてやんの)

 真帆は大きく息を吸う。

「何でさ、ここに居るのよ、それも夏休みに。それに田中イオリって誰よ?」

 真帆は風で流れた髪を後ろに払うとリスクの及ばない範囲で狐の白面に分からぬように――ふふっと小声で笑った。


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