表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

廻るセピアの三月

作者: Yoi

道端に咲く名の知らぬ花たちは寝惚け眼で、まだ寝ていたいのに、とでも言いたげでとてもやる気の無さそうに、それでも春の役割を果たすため桃色や黄色や赤色に路頭を飾る。


ガラスの奥、テナントの中で鮮やかな色が目立つ。イヤホンをして中に入るとワンピースやカーディガンなどの洋服達、その隙間にはハットやネックレスなどのアクセサリーが無駄を余す所なく陳列されている。どれも色彩が道端で見た花に似ている。

ダウンや厚手のセーターなどは店内の一番奥に追いやられて、値札に赤い数字の印字されたシールが上貼りされている。お役御免というわけだ。

商品として命を与えられ、数字をつけられた挙句の果て不要になったら値下げされることを突き付けられる人生は酷だな、と思う。

僕はいくらだろう。定価はどのくらいで、今は何割引の心を抱えているのだろう。


卒業の季節は学生時代を思い出す。

そういえばあの頃の僕は値札を付けられていたな。


景色は日々目眩(めくるめ)くビビットに塗られていく。

一方で僕の心は未だセピア色で、なんだか世界に置いて行かれたような気分になる。別に追いつこうとも思わない。


空は一年通して青でいてくれるので優しいなと思う。たまに灰色になったり、水を被せて僕を困らせたりするけれど、君なら許せる。


春が終われば雨の日が増えてくる。やがて夏が来て、冬になって、また三月が来る。

僕は小さく僕を卒業する。

あの曲をもう聴かなくなったんだぜ。聴かなくても、何とかやっていけるようになっちまったよ。


僕の中にもたまには花が咲いたりして、だけどそれもいずれ枯らす。不思議なもので心の世界ではなぜか雨が降ると花が枯れる。おかしな話だな。

その花は二度と戻ってこないけど、木にはまた花が咲く。雨が降る。枯らす。何度も、何度も、廻る。





なあ、先生、教えて。僕の人生は何点ですか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ