54、指の一本も...
「クックック。コウ・タカサキ！本当に素晴らしい！！私も気に入りましたよ！」
辺りは俺の張った闇の結界で覆われている。
そんな中何が出来るって言うんだ...。
「この闇ですが、出したのは失敗でしたね。」
「何！？」
「暗黒吸収。」
そう唱えるとルシフェルにドンドンと俺の闇の力が吸収されていく。
俺は斬撃を放っていくが、斬った剣の先から闇の魔力が吸収されていった。
「アハハハハ。素晴らしい！素晴らしすぎるぞ！！コウ・タカサキ！！
力が、私の力がドンドン溢れてくる！」
（マスター、危険です...）
わかってる...
俺は闇纏いを中断するが、時すでに遅し。
全ての闇の力がルシフェルに吸収された。
後、俺に出来ること...
ヴォイス。俺の身体は身体能力向上は何倍まで耐えられる？
（ギリギリ１０倍位です。
ですが、今の状態だとかなり厳しいと思います！動けなくなりますよ！
それに魔力ももう底が見えて...）
それでも、俺がやらないと誰がやるんだ...
このままだと確実にじり貧だ...
（そうですね。）
よし！限界を越えてやる！
俺は剣を破邪の双剣に変えて、残りの全ての魔力を身体能力向上に当てた。
「身体能力限界向上！！」
唱えたとたん、俺に異変が起きた。
「ぐぁぁぁぁぁ.....。」
魔力枯渇症で頭痛がガンガンする。
それに、身体の全ての筋肉が弾け飛ぶそうになるほどの激痛が伴っていった。
これは、時間がない...
一撃で決める。
俺は目をつぶり集中する。
「心眼。」
集中すると、ルシフェルの身体の中心に光る何かがある....
あれが、核...
「瞬歩。」
俺の闇の力を吸収して油断しまくっているルシフェルに近づく...
「一閃突き！」
グサッ！！！
刺さった感触がした...
勝った...
しかし、聞こえた声から絶望を感じた...
「危ないですね。気付くのが少し遅れてたら完全に殺られてましたよ...。」
「チクショウ....」
俺の剣はルシフェルの腕を刺していた。
咄嗟に防御したみたいだ。
俺は全ての力を使い果たし崩れ落ちた。
指の１本も動かせない...
「もう一歩も動けない見たいですね...
運んで行くのが楽になりますね。クックック。」
ルシフェルが俺を担ごうとした瞬間だった。
「ちょっと待った！！」
俺は視線を声の方に向けると大きな剣を背負ってる中年の男が立っていた。
誰だ....？
「何ですか貴方は...
私の任務は終わったのでこれから帰る所なんですが...邪魔するなら殺しますよ。」
ルシフェルは闇の影の手を伸ばし中年の男を攻撃した。
「闇の力か...こんなもん...ハッ！」
中年の男が気合いを入れると闇の影の手が吹き飛んでいく。
「俺にとってはこんなの屁でもねーよ！
今度はこちらから行くぞ！」
男が大剣を構え踏み出す。
とんでもない速さでルシフェルに近づくと大剣を振りかざした。
ルシフェルは俺が刺した腕で防御するが....
ズシャン！！
グルグル....
ボトッ！！
ルシフェルの腕が肩の根元から斬られていった。
「闇の力でパワーアップした私の腕を吹き飛ばすとは...しかし、何度斬られようとも私には関係ないですけど。」
ルシフェルは切られた腕に闇の影の力でくっつけようとするが出来なかった。
「何故だ？貴方何かしましたね...？」
「何かしたかって？俺はただ聖光気を全身に纏い斬っただけだが、
お前には効果抜群だったみたいだな！」
「厄介な事をしてくれますね...
今日はここまで見たいです...
私はここで退散しますね。
コウ・タカサキ...また逢いにきますね。では...」
ルシフェルのその言葉で俺の意識は途切れて行った...
「逃がすか！！」
中年の男は剣を振るがルシフェルはその場から消えて空ぶった。
「ちっ！逃がしたか...おい少年大丈夫か？
ってもう意識ないか...無茶したな...全身の骨にヒビ入ってるじゃないか...」
「おーい！アルト！ちょっと手伝ってくれ！」
「はい！今いきます。」
アルトはデュークの側に駆け寄った。
「コウ君は大丈夫なんですか？」
「とりあえずヒールかけてやってくれ。全身の骨がヒビ入っているし、多分筋肉が断裂しているかも知れない。ヒールかけてくれたら俺がおぶっていくから。街に戻るぞ。」
「はい！わかりました！」
こうしてモンスターの大進行は、死傷者を最小限に抑えて止められた事にアバドンの街は大いに盛り上がったのであった。
その功労者としてコウのパーティーの評価はコウが知らない所でうなぎ登りしていたのだった。
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