172、時間切れ。
「ハァハァ...。」
2代目フェイズを瞬殺したミアだったが、それには理由がある。
神器を2段階解放している状態の魔力消費が桁違いだったからだ。
初代ゴルマはそれだけの強敵だった。
解放1段階目でも戦っていればそのうち勝てたのだろうが時間が掛かりすぎるし、
結果的にもっと魔力を消費すると考えたから二段階目で戦ったのだ。
ミアは魔力を消費を抑えるため神器の解放を一段下げてマナポーションを飲んだ。
そして、天を見上げて2代目に謝った。
喋らせてあげなくてごめん。...と。
「残りは3か...。」
祖父プロペトは遠距離からの魔法攻撃を得意とするから対処は簡単だが、
残る黒いローブの2人の力が未知数の為に慎重になる。
「いや~、ここまでやるとは思いませんでしたよ。そう思いません?」
「ふん!人間の駒なんてこんなものだろ?
それよりも、そろそろあの御方も到着する頃だぞ。」
「それもそうですね。そろそろ仮面を取りましょうか?」
「ああ、仮面が鬱陶しくて仕方がない。」
そう言って黒いローブの2人は付けてた仮面を外した。
ミアとプロペトは絶句する。
「お母さん...お父さん...。」
黒いローブの2人は死んだはずのミアの両親、サンドラとユリウスだった。
ミアは言葉にならない声で名前を呼ぶ。
「サンドラ...ユリウス...。お前達まで...。
貴様ら、この外道がぁぁ!!殺してやるぅぅ!!」
プロペトは激怒するが身体は依然としてミアの方を向いている。
「ミカエル様!!
見ました?あの2人の顔!!笑えますね!
アハハハハ!!」
「そうだな~!これは中々に愉快だな!
こんな事思い付くなんてアリエルは天才だな!ハハハハハ~!」
ミアの母サンドラに憑いているのはアリエルと呼ばれ、父ユリウスに憑いているのはミカエルと呼ばれていた。
ミアにしたら関係はなかった。
死んだハズの父と母が目の前で喋っている。
他の誰かに乗っ取られながら。
笑いあってる2人の笑顔がまた見れただけで嬉しかった。
ただそれだけだった。
ミアは知っている。
一度前の世界でコウを失った時に、大切な誰かを無くす事の痛みを。
そしてこの世界の両親とのお別れしたあの日を。
もう過去を振り返らない。
ここに居る両親は別の何かだ。
ミアは神器マリアージュに言う。
「マリアージュ。神器を全解放するよ!」
(ちょっと待ってそんな事をしたらミア、貴女が...。それにまだ完璧に制御出来るわけじゃないのに...。)
「大丈夫。これは私の手で終わらせなきゃ行けないの...。」
(いいのね...。どうなるか分からないわよ...。)
「うん、お願い。.....マリアージュ。」
(...何?
ありがとうなんて気持ち悪い事言わないでね!それを何て言うか知ってる?)
「死亡フラグでしょ。そんな事は言わないよ。」
(じゃあ、何を言おうとしたのよ!?)
「勝つよ!!」
(...だね!)
それもフラグじゃね?
と思ったマリアージュだったが、
本人のやる気を削ぐのはいかがなものか?
と考えミアに同意した。
「「神器、全解放!!」」
二段階目の解放より刀の刀身は伸び羽織の裾も伸びた。
そしてミアは神々しく光輝くと同時に背中に大きな翼が生え、頭の上には天使の輪浮かんだ。
ミアの神器全解放は成功した。
「ミ、ミカエル様。これは何だか危険じゃありませんか?」
「どうだろうな...。」
ミカエルとアリエルは構える。
プロペトは聖光の光を強く浴びて弱体化し全く動けなかった。
それに伴いアリエルが掛けた死者の輪舞曲の魔法が消えかかっていた。
ミアはプロペトが動けないのを知ると、
狙いを父ユリウスに憑いているミカエルにした。
直感で2人の中で強い方を選んだのは、
魔力消費が二段階目の非ではなく時間がないからだ。
ミアが動く。
その瞬間、ミカエルはアリエルを盾にしてミアの攻撃を躱わした。
盾にされたアリエルは真っ二つにされた。
「グハァ...。ミカエル様...。何故ですか...?」
「お前には今の攻撃見えてなかっただろ?
私の役にたったんだ。光栄に思え。」
「そ、そんな...。」
聖光属性をもろに食らったアリエルは再生できなくその場で動かなくなった。
そして、プロペトも事が切れたかの様にその場に倒れたのだった。
ミアは不思議な声を聞く。
ミア...。私の可愛い娘、ミア...。
貴女には2度も辛い思いをさせてごめんなさい。
天から貴女とカインの幸せを願っています。
そして、ユリウス...。先に逝って待ってるからあんまり遅くならないでね...。
聞こえてきたのは母サンドラの声だった。
そしてその声を聞いた父ユリウスの目には涙が流れた。
「何だ、これは!何故私が泣いている!?」
「泣いてるのはミカエルじゃない...。父ユリウスの魂だ!!お前が父を汚すなぁぁ!!」
ミアは刀でミカエルに斬りかかるが、
紙一重で躱わされカウンターでミカエルの剣がミアを斬りつけた。
しかし、ミアは無傷だった。
神器を全解放してミアの属性が聖光になった為、ただの闇属性が効くはずもなかったのだ。
「なっ...!?」
完璧に決まったと思ったミカエルは呆気に取られる。
「ミカエルの攻撃なんて効くわけがないだろう。...これで終わりだよ。秘技・無明斬り。」
ミアは刀を縦に振り抜く。
ミカエルは刃が当たる瞬間、
身体を捻らせて致命傷を避けようとするが、
ミアの無明斬りには躱わしても意味のない事だと気づく。
何故なら無明斬りは振った所とは全く違う所が斬れていくからだ。
全く見えない斬擊。それが無明斬りなのだ。
瞬時に理解したミカエルは闇の力を全開にして守った。
結果ミカエルの片腕が飛んでいった。
「チッ!あれを躱わすか?もう一撃だぁぁぁ!!!!」
そうミアが言って刀を振りかぶった瞬間、
ミアは電池が切れたように動けなくなった。
全解放の時間が来てしまったのだ。
動かないミアを見てミカエルはニヤッと頬を上げた。
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一ノ瀬 遊
 




