表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

ただただ愚痴

 



「あんたってホントに性格悪いよね(笑)」



 最後に会った時、十年来の友はこんな失礼な言葉を吐きやがった。


 それを言われた時はショックだった。

 自分の性格良いとは思ってなかったけども、「性格悪い(笑)」と言われる程嫌な性格はしていないと思っていた。

 そもそも十年も付き合ってきてから「性格悪い(笑)」ってなんだ。

 実感が籠りすぎてる年月が辛いわ。

 確かに私は少し愚痴が多かったかもしれない。

 あ、少しではない。かなり多かった。そこは認める。

 でも直接誰かに危害を加えるような酷いことはしていないのだ。

 ちょっと大きな声で隣の席の男子を「キモい」と言ってその男子が虐められかけたりとか数日の登校拒否みたいなのとかあったかもしれないけど、私がやったのはついつい大きな声で「キモい」と言っただけだ。

 そもそも十八才にもなってちょっと悪口言われたくらいですぐ登校拒否とか、メンタル弱すぎるのが悪いと思うんだ。

 だからあの件は私は悪くない。


 そう言うところが性格悪いんだよ。

 とかはっきり言っちゃう友だって相当性格悪かったと思うんだけどね?


 ショックを受けた後はじわじわ怒りになるもので。

 私は数日間をこの友の「性格悪い(笑)」によってもやもや悩まされ続けることになった。


「性格悪い(笑)」ってなんだよ、マジで。

 そろそろ卒業も控えたこの時期に、今更「性格悪い(笑)」ですか。

 でも、確かにそれまでの私はツンツンしてた。

 見るもの全てにイライラしてた。

 全部が不快で、だから私はずっと何かの悪口を言い続けていた。

 つまり、ただの愚痴だ。


 隣の男子の鞄に付いてるオタクなぬいぐるみが不快でキモいと言い続けていた。

 隣の男子に聞こえているかなんてどうでも良い。

 私はただそう言いたかったから言っただけだ。

 別に誰かに聞かせたかった訳でもない。

 その時そう思った感情を口に出して発散させたかっただけだ。


 愚痴を散々言い続けて早数年。

 愚痴り続けてやってきた私に、やっと心境の変化が訪れた。

 高校卒業が間近になって、心がちょっと落ち着いた。

 働き出したらお金を貯めて家を出る!

 その目標が目に見える形になってきたら今まで荒れていた嵐の海も凪いだ海にまで近付いてきたのである。


 私も大人になったものだ。

 そもそも十八才にもなって今までと同じような愚痴り人生なんてナンセンス。

 就職を機に去らば愚痴ばかりの嫌味女。ごきげんようレディなニュー私。


 とちょっと変なテンションで友に会いに行けば「性格悪い(笑)」である。


 確かに友には何年も私の愚痴聞き係をさせてきた。

 どうでも良いことがほとんどの聞くに耐えない愚痴である。

 そんな愚痴を友は上手に聞き流してきた。

 つまり、ほとんど聞いてなかった。

 同じ事を何度も言ってしまう私には聞き流してもらえるのは丁度良かった。

 そもそも聞く価値のない愚痴である。

 口に出すことで心の平穏を保とうとしていた私は相手が聞いていなくてもどうでも良かったのだ。


 良かったな、友よ。

 あんたも私の愚痴聞き係を卒業だ。

 そして私もあんたの腐った話ともお去らばである。

 ほとんど聞いてなかったけども、ゴリゴリ精神を削ってくる腐った話を聞いていた私の心は広いと思う。

 ほとんど聞いてなかったけど。

「このメス豚め(褒め言葉)」とか「この鬼畜野郎(興奮)」を聞き流すしか私には出来なかったヨ。

 私はこれでも純心で無垢な心を持った乙女だからな。

 ただちょっと愚痴が多いだけで。

 十年来の友に「性格悪い(笑)」とか言われるような人間だけれども。


 でもこれだけは言わせてくれ。

 隣の男子のぬいぐるみは確かにキモかった。

 だけど私が一番キモいと思っていたのはオタクなぬいぐるみだからじゃない。

 彼はやたらぬいぐるみを代えてきたのだ。

 一人のキャラに心を捧げるなら腐った趣味の友を持つ私は温かい目で傍観出来た。

 嫁一筋じゃないんかい。何人推しがいるんだよ。

 と言うところがキモかったのだ。


 そして友よ、十八年たってやっと大人に近付いてきていた私に「性格悪い(笑)」なんてよくも爆弾落としてくれたな。

 その言葉あんたにも返してやるわ。

「このメス豚め」が褒め言葉な女に「性格悪い(笑)」とか言われたくないわ。



 さて、分かるだろうか?

 私は自分の性格悪いことを認めた。

 確かに私は性格が悪い。

 そこまでの悪意がないにしても私が発した不用意な言葉で傷付けてしまった人がいることも事実なのである。

 彼に何人嫁がいようと私には関係なかったじゃないか。

 悪かったな隣の男子よ。

 ついでに名前も覚えていないことも謝っておくよ。

 ごめんね?(軽)


 私は性格悪いからさ、私に対して「性格悪い(笑)」と言った友も許さん。

 例え二度と会うことがないと分かっていても、広い心で許そう、とは思わない。

 むしろもう会えないと分かっているからこそ許さん。

 やっと落ち着いてきていた私の精神を乱してくれたこの怒りはまだまだ収まらないから。


 だけど友よ、あんたは真実を口にしただけだ。

 私が他の人にしてきたように自分の気持ちをただ吐露しただけだったのだろう。

 ただの自分に返ってきたブーメランなのである。

 だからこんなにタイミング悪くいなくなってしまった私のことを、自分のせいかもなんて気にしないで欲しい。



 まさか私が異世界召還なんて目に遭い、会えなくなるなんてお互い思ってなかったしね。

 しかも従姉妹と一緒に来ちゃったよ。

 従姉妹が聖女だってさ。

 私は多分巻き込まれ召還ってやつ?

 これ私が悪役のパターンじゃない?ヤバくない?

 ぶっちゃけあんたが私のこと「性格悪い(笑)」って言ったのも私の従姉妹に対する態度もありだよね。

 知ってる。

 確かに私は従姉妹に冷たかった。

 可愛くて性格も良くてスタイルも良い従姉妹に嫉妬してた。

 けどね、それは従姉妹という近い距離ありきで出来の悪い妹についつい厳しく言っちゃうとかそういう範囲なんだよ?

 ちょっと従姉妹に対して他の人より冷たく接してたからって何だよ。

 ただでさえ自分の感情コントロールの下手な私は従姉妹に冷たく接するしか出来なかったんだよ。

 従姉妹だってそんな私に近付いて来なければいいのに近付いてくるしね?

 イライラを抑えずぶつけてしまってた。

 そこは反省してる。


 だから従姉妹と異世界召還された時は私は本当にヤバいと思った。


 これって私が「ざまぁ」されるやつ!?って。

 今までの恨みとか従姉妹から返されちゃうやつか。

 皆に大切にされる従姉妹を虐めてたとかでブーメランが返ってきちゃうやつね。

 ヤバい。

 せっかく心を入れ換えようとしたらこれだよ。

 従姉妹に対しての態度を入れ換える自信がなかったとはいえ、私は本当にヤバい状況になってしまったと怯えた。


 でも従姉妹よ、

「聖女は私じゃなくてきっと知耶ちゃんの方です」

 とか言わないでマジで。


 私が聖女の訳がないだろう!

 聖女は十年来の友人から「性格悪い(笑)」なんてきっと言われたりしない。

 あんたは面倒だからって聖女を私に押し付けようとしたな?

 こら、本物の聖女、逃げるんじゃない!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ