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スラムの片端で私は『それ』を見つけた。上質な服、傍には剣が転がっている。ツカツカと近づいて、近くにあった木の棒で『それ』を突いた。『それ』は呻き声をあげると髪は黒色で真っ赤な瞳が現れる。


私は『それ』を闇魔法の影で持ち上げ、寝ぐらにしているボロい小屋へと運んだ。怪我をしてる部分に予備にとっていた薬草を塗り込む。大きく胸元を切られている。その他にも所々怪我をしている。


男は痛みで目を覚まし、瞬時に一緒に運んできてあげた剣に手を伸ばすが、私が子供だったのだろうか剣に手を伸ばすのを辞めた。


「お兄さん、何でこんなボロボロなの?お金持ちなんでしょ?」


「……王座を狙った骨肉の争いだ。王座等興味等無いのに側室の母も殺され、もう俺には何も残ってない……それでもこうして生き延びてしまった……」


「ふーん、よく分かんないけど全員殺したら?スラムでは日常茶飯事だよ?」


「無駄だ。後ろ盾も派閥もない俺には何も出来ない」


「ご飯いっぱい食べさせくれるなら、わたしが味方になってあげるよ?闇の魔法は全部壊す魔法だから使っちゃいけないって死んだお母さんが言ってたけど、スラムで生き残るには使うしかないんだもん。……それでどうするの?」


「希少な闇魔法を持つ人間がスラムにとはな……そうか、全部壊す魔法か……ははっ、良いなそれ……もう全て壊してしまおうか」


「じゃあ約束。味方になってあげるからご飯いっぱい食べさせてね。じゃあ早く怪我を治さなきゃ」


そう言うと男は気を失うように眠ってしまった。小さな手で額に手を当てると熱があったので、ボロ布を雨水を溜めた桶に浸し額に乗せてやる。


呻き声を上げながら魘される男の怪我が治ったら、皆んな殺してあげよう。そうしたらいっぱいご飯が食べられる。




ーーーーーーーーーー




「何故、闇の魔法を使える薄汚い子供が王宮にいる!!ぐあああ!!」


知らない偉そうなお兄さんの腕を切り落とすがギャーギャーと喚いて煩い。あの日拾った男の名はシグル。シグルには殺さない程度で痛めつけてくれと頼まれていたから殺しはしない。その他にも沢山の人間を捕まえて、影で引きずりながらシグルの前に持っていく。


「シグル、殺さないでお城の偉そうな人皆んな捕まえたよ?どうして殺しちゃダメなの?」


「殺すのは俺の仕事だ。ノエル、影でこいつらを押さえながらお前は下がってろ」


「はーい。あ、これ食べてても良い?さっきご飯がいっぱいあるところで持ってきたの」


「好きにしろ」


わたしはシグルの後ろに下がり座って美味しそうな果物をもぐもぐ食べる。お城の人は皆んな美味しいものを毎日食べてて羨ましい。スラムではこんなまともな食べ物なんか無いのに。


「シグル!!貴様か!!何故お前が闇使いを従えている!!何処で見つけた!!」


「スラムの片端に偶然いた……いや必然だったのだろうな。今日という日のために」


シグルがわたしがさっき腕を切り飛ばしたお兄さんの首をはねる。シグルは面白いくらい次々と首をはねていく。男も女も関係なく無機質に唯淡々と。


わたしはそれを眺めながら新しい果実をもぐもぐと食べ始める。うん、これも美味しい。


「……全部殺したな。ははっ、たった一人の子供の力でここまで簡単に殺せてしまった」


「全部壊せた?」


「いや、まだだ。この腐り切った国を変えるにはノエル、お前の力が必要だ」


「次は国を壊すのかあ。ご飯またいっぱい食べれる?」


「ああ、いやと言う程食わせてやる」


そうしてシグルは王様になって腐り切った国を壊し始めた。わたしはご飯が食べさせてもらえるからシグルの側で力を使い続けた。




ーーーーーーーーーー



「ノエル、また調理室で堂々と摘み食いするな」


「だってお腹すいたんだもん。それより何?執務室で書類仕事してたんじゃないの?」


「隣国と戦争になる。準備をしておけ」


「なんでまた戦争に?」


「縁談を断っただけだ。隣国は此方を見下しているからな。見下してる相手から縁談を断られて、さぞやプライドが傷付いたんだろう」


「うーん、馬鹿だよね。戦場で戦うのは全然その話と関係ない人達なのに本人達はぬくぬくと王宮なんてねえ」


「ああ、そうだな。だから俺とお前で隣国の王宮に殴り込みに行くぞ。無闇に労働力を浪費したくは無い」


「王様が殴り込みしていいの?その位だったら私一人でも大丈夫だけど」


「お前を一人で行かせると被害が余計に広がる」


「また『狂王』と『死神』のコンビって言われるのかあ……嫌だな」


「今更だろう。諦めてついて来い」


「帰ってきたら、美味しいご飯用意してね?」  





ーーーーーーーーーー




「きあああああ!!!!」


「兵はどうした、何故来ない!!」



隣国の王宮に堂々とシグルと私は乗り込み、城にいた兵士は全員殺した。もうこの城には非戦闘員と目の前の王族くらいしかいない。


「皆んな殺したから助けは来ないよ?」


「直接出向いてやったんだ、喜べ」


目の前の王様とお姫様はガタガタと震えている。

あ、お姫様漏らしちゃったみたい。


「む、娘をやるから見逃してくれ!!どう扱っても良いから!!金もやる!!」


「お、お父様!?」


「シグル、どうする?」


「女の方はお前にやる」


冷めた声でシグルは私にお姫様を押し付けた。面倒だなあっと思い、影で作った鎌でお姫様の首を刈り取る。お姫様に罪はないかもしれないけど、面倒くさいから、早々に死んでもらった。


横目でシグルを見ると、シグルは冷淡に剣で王様の心臓を貫いていた。なんだ、やる事は二人とも同じってことか。私はお姫様の転がった頭を持ち上げ、シグルに言う。


「このお姫様、中々可愛かったんじゃない?何で縁談断ったの?」


「……俺にはお前だけがいれば良い。その他なんていらない」


「……愛の告白?」


「……帰るぞ」


「ねえねえ、今のって告白だよね?」


「煩い、黙れ、喋るな」


「素直じゃないなあ、もう」




これは『狂王』に餌付けされた『死神』の物語り


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