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リベンジ  作者: たらふく
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三十三  復讐心




副社長の自宅は、都内の一等地に建っていた。


「それでは副社長、わたくしはこれで失礼します」


駐車場に車を停めた島泉は、副社長に一礼した。


「はい、ご苦労さま」


薫は家の大きさに圧倒されて見上げていた。


「今井さん」

「あ・・ああ、はい」

「遠慮しないでね」


副社長は薫の前を歩きだし、薫は後に続いた。


「坊ちゃん、お帰りなさいませ」


玄関のドアを中年の女性が開けた。


久美(くみ)さん、今日からしばらくこの人にここで泊まってもらうから、お世話をよろしくね」

「はい、かしこまりました」

「あの・・今井薫と申します。突然、押しかけまして申し訳ありまん」


薫は久美に、丁寧に頭を下げた。


「久美と申します、精一杯お世話をさせていただきます」


久美は優しく微笑んだ。


「久美さん、夕飯は出来てる?」

「はい」

「うん、ありがとう」


副社長は薫に「こっちだよ」と言い、一緒に来るよう促した。

薫は、あまりキョロキョロ見回しては失礼だと思い、黙って副社長の後に着いて行った。


ダイニングに着くと「僕、着替えて来るからここで座っててね」と副社長が言った。

薫はとても居心地が悪い気がしたが、言われた通り椅子に座った。


「ただいま、料理をお運びいたしますね」


キッチンで久美がそう言った。


「ほんとにすみません」

「なにを仰せですか。どうぞごゆっくりなさってください」

「ありがとうございます」

「坊ちゃんが、女性をお連れになるのは初めてなんですよ」

「そうですか・・」

「私は嬉しゅうございます」


薫は、久美が完全に勘違いをしていると思った。


「こらこら、久美さん」


そこに部屋着に着替えた副社長が来て、薫の向かい側に座った。


「久美さんはね、僕が生まれる前からここで働いてくれてるんだよ」

「そうなんですね」

「さて、まずは腹ごしらえね」


薫と副社長は、テーブルに並べられた和食を摂った。


「今、この家には僕だけなんだよ」

「そうですか」

「父は母を同行させて、海外。弟は留学中」

「こんなに大きいお家なのに、淋しいですね」

「全然。ずっとこの環境で育ったから慣れてるよ」


薫は、大会社の経営者というのは、ある意味、孤独なのだと副社長が憐れに思えた。

やがて食事を済ませ、薫と副社長はリビングへ移動していた。


「それで、これなんだけど」


副社長は資料をテーブルに置いた。


「興信所の調査結果だよ」

「え・・興信所?」

「うん、調査を依頼したんだ」

「飯田さん・・そこまでして下さったのですか・・」


そこで副社長は、調査結果を薫に話した。


「役者だったんですか・・」

「そうみたい」

「でも、なぜ沙月が狙われたんでしょうか」

「そこが謎だね」

「沙月は人に恨みを買うような子じゃないんです」

「そうなんだね」

「しかも、こんな大掛かりな・・」

「謎を解明するには、この人たちにコンタクトする以外にないね」

「はい」

「で、これが写真ね」


副社長は十五枚の顔写真を置いた。


「あっ!これ、この人が偽物の飯田です!」


薫は偽物の飯田の写真を、副社長に示した。


「そうなんだね」

「あっ!これ、この人坂槙って人です!こいつが沙月に、偽物の飯田と付き合うようゴリ押ししたんです!」

「そっか・・」

「あああ!これ、こいつが受付の女です!」

「うん、わかった」

「この住所、確かなんですか」

「確かだと思うよ。Rの調査は、まず間違いがないよ」

「そうですか・・」

「今井さん」

「はい」

「一人で行くのはダメだからね」

「・・・」


薫は図星を突かれて、言葉が続かなかった。


「飯田さん」

「なに」

「もうここまでして頂いただけで、十分すぎるくらいです」

「・・・」

「突き止めてくださって、心から感謝いたします」

「何を考えてるの」

「もうこれ以上、飯田さんに迷惑をかけるわけにはいきません」

「またそれを言うの」

「・・・」

「これは僕の問題でもあるの」

「でも・・」

「きみが何をしようとしているのか、僕にはわからないけど、このままにして置かないことは確かだよね」

「あいつ・・沙月を殺したんです。直接手を下してないだけで、殺したんです」

「・・・」

「私は、許せないんです。どうしても許せないんです」

「で、今井さんはこの人を殺すの」

「えっ・・」


薫はそこまで具体的には考えていなかったが、心の隅にそれにも似た気持ちがあったことは否めなかった。


「そんなことして、二之宮さんが喜ぶと思う?」

「・・・」

「殺人犯になった今井さんを、二之宮さんが喜ぶと思う?」

「だったら・・どうすればいいんですか!」

「僕に考えがあるんだよ」

「考え・・?」

「だから今井さん、絶対に早まらないでね」

「その考えってなんですか」

「この件は僕に任せて」


副社長はそれ以上は言わなかった。

薫は思った。

私に手を出させないために、副社長は私をこの件から遠ざけようとしていると。

それは同時に、私の身を守るためでもあると。


薫は副社長の気持ちをありがたいと思ったが、どうにも収まらない怒りを抑えることは出来ないでいた。

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