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リベンジ  作者: たらふく
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三十一 始動




「すみません、こちらにA総合商社の副社長が来店されているはずなんですが・・」


薫は中華レストランに入り、客席を見たが副社長が見当たらないのでレジの女性に訊いた。


「あっ、今井さまですね」

「はい、そうです」

「こちらでございます、どうぞ」


薫は個室へ案内された。


「今井さまがお見えになりました」


女性がドアを開けると、副社長と島泉が円卓を囲んで座っていた。


「今井さん、どうぞ」


副社長が手招きをした。


「失礼します・・」


薫は副社長と、一つ席を開けて座った。


「先ほどは失礼しました」


薫は副社長に詫びた。


「なにが?」

「弊社の社員が失礼な態度を・・」

「あはは、いいんだよ。僕、慣れてるから」

「そうですか・・」

「もう頼んであるから、たくさん食べてね」

「すみません・・」


そこで島泉が資料を取り出し、副社長に渡した。


「はい、これ」


薫は副社長から資料を受け取った。


「ありがとうございます」


薫は早速資料を見た。

そこには、C企画という会社名が書かれてあり、住所も電話番号も記載されていた。

そして、来春に放映予定のドラマ名も書かれてあった。


「僕ね、そこへ連絡したんだけど、通じなかったよ」

「え・・そうなんですか・・」

「それとテレビ局にも。でもそんなドラマの撮影もしてないし、放映の予定もないらしいよ」

「あの・・ロビーをお貸しになったのは、本当なんですよね」

「そうなんだよ。広報が許可したんだよ。わが社の宣伝になるってね」

「そうでしたか・・」

「僕にも社長にも上げずに許可したんだよ。ちょっと緩んでるよね」


副社長は、ほんの少し顔がこわばった。


「それでね、今井さんの親友のことなんだけど、なにがあったの」

「実は・・」


薫は沙月と飯田のことを、知ってる限り丁寧に説明した。


「酷い話だね・・赤ちゃんまで・・」

「私は・・必ず偽物の飯田を見つけ出し、報いを受けさせるつもりです」

「一人で大丈夫なの」

「一人で見つける覚悟です」

「手掛かりはあるの?」

「それは・・」

「僕でよければ協力するよ」

「え・・」

「僕の名を語って酷いことしたんだからね」

「いえ・・これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいきません」

「まあまあ、そう頑なにならずに」


「失礼します」


そこで扉が開き、様々な料理が運ばれてきた。


「ああ、来た来た~」


副社長は手を叩いて喜んだ。

その態度に薫は、またほんの少し能天気だと思った。


「ここね、美味しいんだよ。たくさん食べてね。島泉、きみも遠慮せずに食べなさい」

「恐れ入ります」


島泉は頭を下げて言った。

そして食事が始まった。

薫は食事どころではないと思いつつも、資料を提供してくれたことや、自分の話を真摯に聞いてくれたことなどもあり、副社長の厚意を素直に受け入れた。


「女性にこんなこと訊くのは失礼だけど、今井さんはおいくつなの」

「二十八です」

「へぇ~若く見えるね」

「そうですか・・」

「僕は三十五だよ」


副社長はふっくらとしていて、四十は超えていると薫は思っていたので意外だった。


「生まれは東京?」

「いえ、北海道です」

「わあ~いいね。北海道のどこ?」

「札幌です」

「札幌かぁ。何年か前に雪まつりを見たことがあるよ」

「そうですか」


ルルル・・


そこで島泉の携帯が鳴った。


「はい、はい、そうですか、わかりました」


島泉は電話を切り「副社長」と言った。


「なに」

「羽田に到着されたそうです」

「ああ・・トーマスだね」

「はい」

「今井さん、僕たちは行くけど、ゆっくり食べてってね」


副社長は口を拭き、席を立った。


「あ・・そうですか。色々と本当にありがとうございました」


薫も席を立って一礼した。


「それじゃ」


副社長は個室を出て、島泉も薫に一礼して出て行った。

一人残った薫は、食事はそのままにして、少し時間を置いたところで店を出た。



「島泉」


車の後部座席に乗った副社長は、島泉を呼んだ。


「はい」

「Rにコンタクトして」


Rとは、興信所のことである。


「はい」

「それと広報の三輪(みわ)に、聞き取りをやり直して。詳しくね」

「承知しました」

「それにしても、今井さん、健気だよね」

「はぁ・・」

「友達のために、あそこまで動ける人はなかなかいないよ」

「仰せの通りで・・」

「僕のために、動いてくれる人はいるかな」

「副社長、なにを仰せですか。この島泉、副社長のためならばどんなことでも」

「わかってないな」

「と・・申されますのは」

「きみは僕の秘書だ。それは仕事だからだよ」

「そのような・・」

「ま、いいよ。今言った件、頼んだよ」

「はい」


副社長の飯田は、ある意味孤独だった。

何千人という社員を抱え、会社も安泰。

けれども個人としての飯田を真っすぐ見る者と、なかなか出遭えないのが現実だ。

その飯田にとって、薫はまぶしい存在に映った。



その後、島泉は広報の三輪を会議室に呼び出した。


「三輪くん、きみが担当した企画会社の人物のことたが、詳しく話してくれ」

「えっと・・あれは数か月前でしたかね、越智(おち)と名乗る女性が来訪し、既にお話したドラマの件を持ち込んできたわけです」


薫に渡された資料には、越智(おち)(ゆずる)と記載されてあった。


「女性だったのか」

「ええ。それで、まあ・・私としましては、よい宣伝になると・・」


三輪はバツが悪そうに言った。


「それはいい。で、女性の特徴は」

「そうですねぇ・・サングラスを掛けていたものですから、顔はよく覚えておりませんが、背は高く細身で、まあ綺麗な人でした」

「ドラマの撮影はいつから始まったのだ」

「それがですね、大っぴらに撮影するのではなく、とにかく自然体で録りたいとの要望でして」

「どういうことだ」

「望遠で録ると言ってましたね」

「望遠?」

「ええ。ですからロビー内にはカメラもなく、いわばいつもの風景と変わりがない、というか」

「受付には、別人がいたらしいのだが」

「はい。撮影がある日は、入れ替わっていたようです」

「きみはその女性を見たのか」

「いえ・・交渉が成立してからは向こうに任せっきりで・・」

「では、副社長の偽物も見てないんだな」

「はい・・申し訳ありません」


島泉は、この聞き取りでは手掛かりが掴めないと諦め、副社長の命どうりRへコンタクトした。

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