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リベンジ  作者: たらふく
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三 春が来た




「おおっ、この上トロ、美味しいね」


私と飯田は席に戻り、飯田は上トロを口に含んだところだった。


「そうですか」


私は、さっきの飯田の言葉に、また頭が混乱していた。


「これも美味しいよ」


飯田はウニを口に含んだ。


「そうですか」


私は何も口にせず、淡々と返事だけしていた。


「これも」


飯田がそう言いかけたが、私は「飯田さん!」と強く遮った。


「なに?」

「あの、この際ですからはっきり申しますが、からかってるなら止めて頂けませんか」

「からかうって、なにを?」

「だから、私をからかってるのでしょう?」

「どうしてそうなるのかな」

「どうしてって・・じゃ、なぜ他の女性に声をかけに行ったのですか」

「だってね、ここは婚活パーティーだよ」

「そうですけど」

「ずっと同じ人同士でっていうのも違うと思ったんだよ」

「・・・」

「主催者側の意向も汲まないとね。ほら「ふり」ってことで」

「ふり・・」

「僕はきみに決めているけど、他の人たちとも話さないとね」

「そう・・ですか・・」


ほんとにそうだったの・・?

私ってからかわれたんじゃなかったの・・


「二之宮さん」

「はい・・」

「参加者全員が最初から特定の人同士で話すのであれば、パーティーの意味がないよね」

「あ・・まあ・・」

「交流が目的なんだからね」

「は・・い・・」

「ただそれだけのことだよ」

「そうですか・・すみませんでした・・」


私は何だか納得がいったようないかないような、複雑な心境にかられながらも、飯田の言ったことは本心だと受け止めた。

そう考えると、飯田は周りをよく見て気遣いのできる大人な男性だとも思った。


「ほーら、食べて」


私が俯いていると飯田が促した。


「あ・・はい」


私は箸を手に持ち、お寿司を頬張った。


「ね?美味しいでしょ」

「あの・・」

「なに?」

「飯田さんは、なぜ私なんか・・」

「ん・・?どういうこと」

「いえ・・その、とても素敵なのに、私なんか・・」

「僕が二之宮さんを素敵だと思ったからだよ」

「え・・でもっ・・私って平凡だし・・」

「だからなんなの?」

「なにって・・」

「僕の気持ちを勝手に決めないでほしいな」

「・・・」

「僕は二之宮さんに一目惚れしたんだよ」


私は思わず俯いてしまった。

一目惚れ・・か・・

私もそうかも知れない。

だとしたら・・両想いってことで・・

いいよね、いいんだよね・・


「あの・・」

「なに?」

「私も・・飯田さんに決めました」

「ほんとっ?」

「はい・・」

「嬉しいな。来た甲斐があったよ」


飯田はほんとに嬉しそうに笑った。

私も満面の微笑みを飯田に返した。



こうして私は飯田とカップルになった。

パーティー会場を出て、飯田と並んで歩いた。


「二之宮さん、携帯の番号を交換しようよ」

「あ、はい。そうですね」


そして互いに番号とメアドを教え合った。


「今からどこか行く?」


飯田が誘って来た。


「私、お腹一杯だし」

「あはは。そうだよね。たくさん食べたもんね」

「お茶でもしませんか」

「うん、いいね」


そして私たちは近くのカフェに入った。


「それにしても、初めての参加で意中の人が見つかるとは思わなかったよ」


席について飯田が言った。


「はい、私もです」

「これからよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

「あ、そうそう、二之宮さんっていくつなの?」

「二十八です」

「僕は三十だよ」


三十か・・

もし結婚することになったら、年齢もちょうどいい。

でも、そんな話はまだ先のことだ。

これから付き合っていくうちに、色んなことがわかるだろうし。


それから私たちはお互いのことを色々と話し合った。

飯田は都内のマンションで一人暮らし。

ご両親と弟さんは地方の実家にお住まいらしい。

大学を卒業した後、現在の会社に勤めて八年とのことだった。


飯田の話しぶりはとても誠実で、最初に受けた「女性慣れした」印象は、私の中から早くも消え去っていた。


「じゃ、二之宮さん。僕から連絡しますね」


飯田は店を出たところでそう言った。


「はい、お待ちしてます」

「んじゃ、握手」


飯田は右手を差し出してきた。


「あ、はい」


私も手を差し出し、互いに笑って握手を交わして別れた。


私は帰る道すがら、飯田の手のぬくもりを思い出していた。

そしてとうとう私にも、春が訪れるのだと期待感で胸が膨らむ思いだった。

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