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リベンジ  作者: たらふく
24/35

二十四 首の皮一枚




―――永埜が沙月に断られてから、一ヶ月が過ぎた。


「須田、二之宮の生活は変わりがないんだな」


権藤が訊いた。


「会社と家の往復。時々、合コンに参加しいてますが、相手は見つからないようです」

「今井も同じです」


薫に張り付いている根本もそう言った。


「これ以上日を延ばすと、取り返しがつかなくなりますね」


永埜が言った。


「よし、ここらで派手にやるか」


権藤はある提案をした。


「二之宮が飲みに出かけた時、永埜と泊はチンピラに絡まれることにする」

「二之宮が出掛ける時は、必ず今井もいますよ」


須田がそう言った。


「それはかまわん。それでだ、絡まれているところを二人に見せるんだ。おい、永埜」

「はい」

「お前、すまんが本当に殴られることになるが、いいか」

「えっ・・フリじゃないんですか」

「フリでは信憑性がない。ここはガチでやってもらう」


そしてチンピラ役には、尾上(おがみ)大吾(だいご)西脇(にしわき)浩介(こうすけ)が選ばれた。

この二人は、婚活パーティーにも参加していた。

派手な女性役には、大橋(おおはし)水穂(みずほ)が選ばれた。

この大橋も婚活パーティーに参加し、沙月と同じテーブルに座っていた女性だった。



「おっ、今日は行くつもりだな」


沙月を張っている須田が、根本にそう言った。


「そうみたいだな」

「永埜さんに連絡をする」


須田は電話をかけ、いつでも指定の場所に来れるよう連絡を入れた。


何も知らない沙月と薫は、呑気に合コンへ参加していた。


「永埜さん、そろそろ準備お願いします」


須田が永埜に電話をした。


「わかった」


比較的近くでスタンバイしていた永埜、泊、尾上、西脇、大橋は、現場へ到着した。


「出てきたのか」


永埜が須田に訊いた。


「もうすぐだと思います」


ほどなくして、沙月と薫は店から出てきた。


「よし、始めるぞ」


永埜の号令によって、尾上と西脇は大声を挙げた。


「ああっ?どうしてくれんだよ!」


尾上がそう言い、続いて西脇が「人の女に手を出しやがって!」と怒鳴った。


彼らの思惑通り、沙月と薫は次第に集まってきた人だかりの中にいた。

しばらく言い合いが続いたあと、尾上が永埜を殴った。

そして二発目を食らわせた時、沙月は永埜の前に飛び出していた。


永埜は「やったぞ」と心の中でガッツポーズをした。

そして殴られた左の頬を、わざと痛そうに抑えた。

沙月は、尾上、西脇、大橋の顔を見て、不思議そうな表情をした。

そう。見覚えがあると思ったのだ。

けれども結局、思い出すことができなかった。

少なくとも、ここで思い出していれば、沙月の悲劇はなかったであろう。


その後、沙月たち四人は、永埜の顔を冷やすため居酒屋へ入った。

沙月と薫に張り付いている、須田と根本も少し時間を置いて入った。


席に着いて話が始まり、沙月はほぼ黙っていたが、薫は次から次へと質問を繰り返し、主導権を握っていた。


「あの女・・マジで邪魔だな」


近くの席で会話を聞いていた、須田がそう言った。


「そうだな」


根本はビールを口に含み、薫を見た。


「二之宮が渋ってるのも、あいつの影響だな」

「二之宮だけなら、イチコロなんだけどな」


そして永埜は・・


「僕、こんなに人を好きになったの初めてなんだよ。そりゃこれまでも何度か恋愛したこともあったけど、なんか盛り上がらなくてね。まあ言いにくいけど、やっぱり相手の女性は僕じゃなくて会社を見てたんだ。だから僕は、この先もちゃんとした恋愛なんてできないと思ってたんだよ。そんな中、あのパーティーに参加することになってね。だから最初は沙月に嘘をついたんだ。沙月は僕が社長の息子だとわかって、もっと押してくると思ってけだと引いちゃったんだよね。それで僕には沙月しかいないって確信したんだけど、結局ダメだった」


と、心にもないセリフを吐いた。

それに続いて泊が「沙月さん、今からでもダメですか」、「社長の人柄は、僕が保証しますよ。八年もずっと見てきた僕が一番よく知ってます」

と、畳みかけた。


そして永埜と泊は席を立ち、トイレへ行った。


その後の沙月と薫の会話を、須田と根本は聞き逃すまいと、耳の穴をかっぽじって聞いた。


「沙月はまだ好きなの?」

「えっ」

「あ・・好きなんだ」

「・・・」

「すぐ顔に出るんだからさ。それでどうすんのよ」


この会話を聞いた須田と根本は、沙月に脈があると確信した。



アジトへ戻った四人は、権藤に事の経緯を説明した。


「よし」


権藤は、ひとまず胸をなでおろした。


「それにしても尾上、痛てぇよ」


永埜は腫れた左の頬を見せた。


「すみません」

「永埜、悪かったな。でもおかげで首の皮一枚繋がったぞ」


権藤がそう言った。



―――そして次の日。


「もしもし、永埜さん!」


須田が永埜に電話をかけた。


「どうした」

「まずいですよ。二之宮がA社へ向かっています」


その知らせを聞いた権藤は、慌てて永埜と浅井をA社へ向かわせた。

同時に権藤は「撮影の日」ということをA社に知らせた。

権藤は事前に、A総合商社にテレビドラマの撮影を打診し許可を得ていた。

事のからくりは、のちに判明することとなる。


「ああ、そうだ。おい!不知火(しらぬい)柄川(えがわ)!」


権藤は二人を呼び「不知火、お前は社長、柄川は秘書兼運転手だ。永埜たちの後を追え」と言った。


「はい」


二人は慌ててアジトを出た。


「うまくいってくれよ・・」


権藤は手を合わせて、祈るような仕草をした。


やがて沙月はA社の受付に声をかけた。

浅井は、いかにも一流企業の受付嬢らしく、丁寧な対応をした。

そして永埜は、スタンバイしていたエレベータから下りてきた。


沙月がなにしに来たのかわからない永埜は、へまをしてはならないと、少し様子を見た。

沙月は、永埜のケガの具合と、電話で断ったことを詫びに来たのだ。


ここで永埜が、また付き合いをほのめかすと、反って逆効果になると判断し、沙月との別れを承諾せざるを得なかった。


「不知火さん、二之宮が出ました」


沙月がロビーを出たところで、永埜は不知火に電話をかけた。


「了解」


そして不知火と柄川は、沙月を横切った。


「社長、今日の予定はここまでです」


柄川がそう言った。


「そうか。で、陸斗は」

「まだ勤務中かと」

「あいつに今夜のこと伝えてるのか」

「はい、伝えております」


そして二人は、高級レンタカーに乗り込んだ。

沙月に張り付いている須田は、沙月の表情を見て、まだ脈があると確信したのだった。

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