第三十五話:ヒロセと、超級マンションの新しい住人2
「ヒロセー、大変ですわー。木が生えてきましたわ」
俺が屋上で気持ちよくお昼寝していると、農作業中のシアが大声で叫んできた。
「ふわっ~~~、そりゃあ、土があるんだから、木の芽くらいはえるだろー」
ゆるふわと気持ちよく寝てたのにそんなことで起こすなよなー。俺は目をコスコスしながら、あくびをした。
「ち、違うのですわー。これは木の芽なんてものじゃないですわ。3mはありますわ」
ふわっ~~~っと、シアは何を言ってるんだか……。
俺もさっき屋上の庭を見たばっかりだけど、そんな木はどこにも生えてなかったぞ。生えてたのは、シアが植えた野菜とか、ちょっとした花だけだったぞ。
「はいはい、分かったわかった」
そう言って俺はもう一度、眠ることにした。。だって、気持ちいいんだもんな。あ~、屋上に庭作ってよかった。
「ヒロセ~~~、なんで寝るんですの~。早くこっちに来てこれを見るのですわー」
「Zzz……、Zzz……、Zzz……」
「ヒロセー、っ。そっちがその気なら。。」
…………。
……。
…。
ミチ。
何か頭がきしんでいるような。。
ミチミチ。
ミチミチミチ。
ミチミチミチミチ。
「いたい、いたい、いたい。シア何しているんだ?」
頭が痛いと思って俺が目を覚ますと、シアがアイアンクローで俺を持ち上げていた。ナニコレ? こんなことできるの?
「いやですわ。ヒロセが起きないから、わたくしがよく見えるように運んであげるのですわー」
こわい。こわい。いつもはかわいいシアの2本の角が鬼の角に見えるぞ。。目もぎらついている。
「分かった。自分の足で見に行くから、下ろしてくれ」
このままでは俺の首と頭が持たないぞ。
「はい、ですわー」
シアは何事もなかったように俺を下ろしてくれた。その細腕のどこにそんな力があるのだろうか? 魔族はやはり戦闘民族なのだろうか?
「うーいたたた、それで、その木はどこに……」
いたたたと伏せていた顔を上げた瞬間だった、俺が寝るまでは何もなかったはずの場所、ちょうど屋上の真ん中くらいに3mくらいの木が生えてたのだ。
「あ、、あれは」
俺はポカーンと口を開けてつぶやいた。だって、おかしいだろ。何もなかった場所に急に木が生えるなんて。。あっ、そーか。
「おい、シア。ちみっこ妖精と相談して、俺にどっきりをしかけたな。じゃないと、こんなのありえないぞ。ちみっこ妖精も出て来いよー。ま、まさか、スラちゃんも?」
きょろきょろと俺は屋上を見まわした。どうせ、その辺に隠れてるんだろ。。
「……、まったくですわー。ドッキリでこんな面倒くさいことしないですわー。だいたい、どうやってヒロセが寝入っていた少しの間にこんなでかい木を植えるのですわー?」
シアがちょっとあきれたように、やれやれとやっている。
……、ドッキリじゃないのか。じゃあ、あの木はなんだ?
てくてくてく。俺は木に向かって歩いていく。
コンコン。木をたたいてみる。
「ぁう」
ん?
「何か聞こえたな……」
「聞こえたですわー」
シアも聞こえたらしい。
さすさす。木をさすさすしてみる。
「フフフ」
……。。
シアを見る。シアもこっちを見ている。シアは目線を木のほうにやって、もっと何かしろと合図してきた。
よ~~~し。
こちょこちょこちょ。こちょこちょこちょ。
こちょこちょ。こちょこちょ。
こちょこちょ。こちょ。
ゆさゆさ。
おや、俺がこちょばすと、何か木が揺れだしたぞ。よし、もっとこちょばしてやる。
こちょこちょこちょ。こちょこちょこちょ。
ゆさゆさ。
こちょこちょ。こちょこちょ。
ゆさゆさゆさゆさ。
…………。
……。
…。
それから、俺がもうひとこちょばししようとしたその時だった。
「っふ、わ~~~、こちょばいですー」
おやっ、なんか女の子が木から飛び出してきたぞ。




