第十二話:ヒロセ、米を優待で手に入れるパート2
さて、どうしたものか?
俺は出資をするだけだ。だけど、米を作ったり売ったりする商売の社長になってしまったら、かなり忙しくなりそうだ。目に見えている。
でもなー。誰か、社長できそうな人なんて俺知らないしな。
「コメット教授は、だれか商売がうまそうな人に心当たりある?」
期待薄と思いながら俺はコメット教授に聞いてみた。
「ヒロセは私に商売人との人脈がありそうに見えるでありますかー?」
ビン底眼鏡を片手でくいっと上げながら、目線を外してコメット教授は俺に熱く訴えかけてきた。それはそうだろうな。一点突破型の研究者にそれ以外を求めるのも無理というものだろう。
だが、それがなんだというんだ。
コメット教授には米がある。それで十分だ。
米、米さえあれば、俺はコメット教授にいくらでも協力を惜しまないぞー。
でも、それならどうするかなー? 俺にも商売人の当てがあるわけではないし。。。
どっかにいなかったかな……。すごい伝手を持っていそうな人間。。
う~~~ん。伝手を持っていそうな人間……。伝手を持っていそうな獣人……。伝手を持っていそうな、あっ!!
「コメット教授、俺に心当たりがある。任せてもらってもいいか」
「本当でありますか? もちろん、お願いするであります」
「よーし。善は急げだ。さっそく、ちみっこ妖精便を使って連絡をとるぞ。そして、連絡取れ次第、屋敷に乗り込んでやる」
「頼むであります」
「コメット教授も米を炊いて持参していくぞ」
「頼むであります。米は炊くであります」
…………。
……。
「いやであります―。行きたくないであります―」
俺はコメット教授を甘く見ていた。まさか、これほどまでに人見知りっ子をこじらせているとは思わなかった。なぜ、俺と話せているのかも不思議なくらいだ。
まあ、いいか。コメット教授は研究畑の人間。米を実用化するための技術面だけを担当してもらえれば……。
よし、まずはちみっこ妖精便を飛ばすことにしよう。
コメット教授と話していた部屋から出ると俺は、おもむろに、
「ちみっこ妖精みっつけたー。スラちゃん、みーつけたー」
と、大声を出した。
すると、
パタパタ、ふみふみぷにぷにと、ちみっこ妖精とスラちゃんが近づいてくる音が聞こえる。
「え~~~~~、ヒロセー、ほんとに探したの~」
「スラー、スラララー」
しばらくしてやってきた、ちみっこ妖精とスラちゃんはちょっとぷんぷんしているようだ。
「いや~、探したんだけど、見つからなくて。ちみっこ妖精とスラちゃんは本当にかくれんぼうまいなー」
「えへへー。ヒロセは探すの下手だなー」
「スララー⤴」
ちょっと褒めただけで二人は機嫌がよくなった。すまん、ちみっこ妖精とスラちゃん。この埋め合わせは必ずするから。
そして、俺はちみっこ妖精に飛んでもらうことにした。
~しばらくして~
「アポとれたよー。今から来ていいって」
「おおー、ちみっこ妖精よくやった」
そういって俺はちみっこ妖精のちっちゃなちっちゃな頭を人差し指の先で撫でてあげてた。とっても小さいのでゆっくりとやさしくなでる。
「ちょっと、ヒロセ、くすぐったいよー」
そういいながらもちみっこ妖精はとっても喜んでいた。
「よし、スラちゃん、ちみっこ妖精、出発するぞー」
「行くよー」
「スララー」
「行ってらっしゃいでありますー」
ちみっこ妖精がおつかいに出ている間に、コメット教授からもらった米を炊いておいた。この米を食べてもらえれば協力してもらえるはずだが。。
◇
俺がやってきたのは、
「久しぶりにゃー」
かつて俺がボロ家をリペアして売った猫娘のところだった。こんにちはーとしたら、客間に案内された。
俺はちょっと色をつけて売れればいいと思っていたけど、この猫娘はにゃーと言って、1億マネーも支払ったのだ。
この猫娘は商売人に強力な伝手を持っているはずだ。
「久しぶりだな。猫娘。今日はちょっと聞いてほしいことがあってきた」
「にゃー、猫娘じゃないにゃー。わたしの名前は、にゃむ、だにゃー」
「な、なんだと、にゃむだと。。」
「そうにゃー」
驚いた。にゃむという名前の猫獣人の女の子なんてかわすぎる。正義すぎる。
驚いていると、スラちゃんが俺の足にぷにぷにと攻撃を加えてきた。ペットの座は譲らないということか?
「それで、聞いてほしいことってなににゃー?」
「まずはこれを食べてみてくれないか」
そういって俺は例の米を取り出した。真っ白でぴちぴちしているおいしそうな米だ。
「これをにゃー? 分かったにゃー」
にゃむはいつの間にか後ろに控えていたセバスからスプーンを受け取ると、一口にゃんと米をほおばった。
「にゃー、味がしないにゃー。おいしくないにゃー。これをどうしてほしいにゃー? まさか、これを商売にしてくれなんて言わないにゃー?」
「うっ……」
なんだと、おいしくないだと……。
そうか、俺は小さいころから空気を吸うように米を食ってきたから、少し米から離れると米食いたい症にかかった。
けど、にゃむはそうじゃない。なにか、にゃむが好きな食べ物から米に誘導しないと。
う~~~ん。
そうだ。
「もちろん、これをただ食うだけじゃあまりおいしくないかもしれない。だけど、にゃむは焼き魚好きだろ?」
「にゃー、とってもすきにゃー。焼き魚がない猫生なんて味気ないにゃー」
「そうだろ。もちろん焼き魚だけでもサイコーだけど、俺の持ってきたこの米と一緒に食うとまた違った味わいになるぞ」
「本当にゃー? 本当だったらすごいにゃー。また、焼き魚の食べ方が一つ増えるにゃー」
「本当だ」
「そうかにゃー。分かったにゃー。試してみるにゃー。セバス」
にゃむが呼ぶと、セバスはすでに皿にのせた焼き魚を持ってきていた。
「にゃむお嬢様、今日の朝とれたばかりのサモーンの焼き魚です」
セバスがにゃむの前に焼き魚を置く。部屋中に焼き魚のいい匂いがただよっている。これだけでもとてもおいしそうだ。
「スラちゃん、おいしそだねー」
「スラー」
ちみっこ妖精とスラちゃんはだらーとよだれを垂らしている。
「さっそく、いただくにゃー」
にゃむはまず、サモーンを食べた。
「いつもどおり、おいしいにゃー」
それから、ごはんを。
「にゃむ? にゃむ」
サモーンを。
「にゃ、にゃ、にゃー」
ごはんを。
「にゃ~~~」
サモーン→ごはん→サモーン→ごはん→サモーン→ごはん。
「にゃにゃにゃ、おいしいにゃー」
にゃむはおいしいにゃーと言って、どんどんサモーンにご飯を食べていく。
そして、
「っぷにゃー、食べ終わったにゃー。おいしかったにゃー。これは画期的な食べ物にゃー。商売でもなんでもどんとくるにゃー」
にゃむが食べ終わった後には、サモーンもご飯もすべてなくなっていた。
◇
その後、話がトントン拍子で進んでいった。
にゃむと俺が共同でお金を出して、商会を立ち上げることにした。とりあえず、1000万マネーずつ出しあうことにした。
株式会社風に言うと、俺とにゃむはそれぞれ50%ずつ株を所有していることになる。
俺はお金だけを出して、経営のほうの人材はにゃむが探してくれことになった。
コメット教授は、技術顧問に落ち着きそうだ。技術的アドバイスをしながら、米の研究をするという形になるだろう。
あ~~~早く、米食いたいなー。
≪ピロリーん。にゃむ商会が立ち上がった≫
◇
【ヒロセの持ち物】
1000万マネーのボロアパート、にゃむ商会の株50%(1000万マネー)、現金 8068万マネー
【ボロアパートから入ってくるお金?】
プラス:たまにお花の蜜、スラちゃんの癒し
マイナス:維持費年間50万マネー
【にゃむ商会から入っているお金?】
配当金?マネー、お米?キロー
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