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第十一話:ヒロセ、米を優待で手に入れるパート1

 「おー、ここがニア大学かー」

 「わー、すごーい」

 「スラ、スラー((´∀`))」


 俺たちは米の研究者がいるというニア大学にやってきた。立派な門があって結構立派な石造りの建物だった。


 「ここに米の研究者がいるのか。楽しみだな」

 「ヒロセー、わたち大学初めて入ったよー。すごい建物だねー。いっぱいかくれんぼできそー」

 「スラー⤴」

 

 米の研究者に会えるかもと俺はテンションが上がっている。

 

 けど、スラちゃんとちみっこ妖精はそんなことはどうでもいいとばかりに、きょろきょろきょろきょろいろんなところを興味深そうに見まわしている。


 まあ分からないでもない。いつもはあのボロアパート周辺が主な遊びのスポットなので、こんな石造りの建物は珍しいんだろう。

 

 「こらこら、ここはかくれんぼする場所じゃあないぞ。頭のいいひとがいろんなことを勉強している場所だぞ」

 「へー」

 「スラー」


 こいつらを連れてきたのは失敗だったようだ。おとなしくボロアパートで留守番させとくんだった。


 う~~~ん。どうするかな。


 そうだ。。


 「よし、分かった。俺が鬼をやるから。かくれんぼしよう。ちみっこ妖精とスラちゃんは大学の中でどこでもいいから、隠れたらいい」

 「え、ほんとー。やったー。かくれんぼだー」

 「スラー。ス・ス・スラー♪♪♪」


 かくれんぼするぞーと言ったら、ちみっこ妖精はパタパタと俺のまわりをまわりだした。

 同時にスラちゃんはふにふにぷにぷにと俺の足をさすさすしだした。


 「よーし。始めるぞー。1、2、3」

 「わっ、よ~~~し。スラちゃん、隠れるよー」

 「スラー」

 

 俺は目を隠して数を数え始めた。ちみっこ妖精とスラちゃんはあわてて隠れ始めたようだ。


 よし、これでいい。


 これで、ふたりと遊びながら、米の研究者に会える。

 一石二鳥だ。


 ◇


 「それにしても、すごく立派な大学だなー」

 

 きょろきょろと俺は大学の中をふらふらと歩いていると、


 「どうしたんですか? 大学の人ではないですよね?」

 

 結構な年のおばちゃんが俺に声をかけてきた。


 「ええ、ちょっと人を探してて」 

 「誰を探しているのですか?」

 「誰というか……、米の研究者を探してて」

 「ああ、コメット教授に会いに来たのですね。案内しますから、ついてきてください」

 「頼む」

 

 おばちゃんについて俺は大学構内をあっちに曲がり、こっちに曲がりした。ちみっこ妖精ではないけど、これはかくれんぼに向いていそうだな。


 そんなことを考えていると、


 「はい、つきましたよ。ここがコメット教授の研究室です。コメット教授ー。お客様ですよー」


 俺を案内してきてくれたおばちゃんがコメット教授の部屋のドアをノックした。


 「は、はい~~~。ちょっと、わわわ、ちょっと待ってください~」

 

 ドタン、バサン、ガサ、ガサ。何やら、すごい音がする。研究者と言えばその道以外はぜんぜんできない人もいるが、コメット教授もそのたぐいだろうか?


 「コメット教授大丈夫ですか? 入りますよー」

 「わわわ、入らないでください~」


 コメット教授は静止したが、おばちゃんは躊躇なくドアを開けた。


 その瞬間、俺は目を疑った。


 部屋の中は所狭しと書類の山やら段ボールなどが積まれていて、文字通り足の踏み場もない状態だった。


 「……、(/ω\)イヤン」


 「「……」」


 イヤンと言われても、俺とおばちゃんはその場に立ち尽くすしかなかった。


 スラちゃん、ちゃんと隠れたかなー。


 ~しばらくして~


 「えっ? 米が食べたいから、米栽培実用化の費用を出したい? 本当でありますか?」


 

 おばちゃんの用意してくれた部屋で、そう尋ねてきたのはコメット教授。コメット教授は、典型的な研究以外何もできない派の研究者っぽい。

 

 茶色のぼさぼさ髪が肩甲骨くらいまで伸びていて、ビン底眼鏡をかけていて、白衣を着ている。俺が目を見ると、視線を外してきょどきょどしている。


 きっと、人見知りだろうな。人見知りっ子だ。


 「そうだ。米をモーレツに食いたくなった時にコメット教授のうわさを小耳にはさんで、会いに来たんだ。米の研究を実用化したいんだろ」


 「! そうであります。長年米を研究してきたものの、研究費用が下りなくてなかなか実用化できなかったでありますよー」


 「だったら、俺が金を出すから実用化したらどうだ? その代わり、できた米の中から一部を俺に毎年分けてくれたらいい。どうだ?」


 金を出す代わりに俺はコメット教授に、毎年米をちょっと分けてもらう。


 日本では金を出して株を買うと、その企業の製品などを優待でもらうことができる制度があった。


 それを異世界でもちょっと試してみようと俺は思ったのだ。


 「う~、魅力的でありますが、ひとつ問題がありますよー」

 

 俺の提案にコメット教授は難しそうな顔をしてそう答えた。


 「何か問題あるか? コメット教授は米の実用化ができてうれしい。俺は米が毎年食えてうれしい。Win-Winじゃないか?」


 「そうでありますが……、米を毎年払うには商売にしなくてはいけないであります。初期投資だけでなく、毎年費用も掛かるでありますからな。そういったことも含めて実用化でありますからなー」


 「そうか。じゃあ、商売化すればいいだろう?」


 「簡単に言ってくれるであります。私を見てくれであります」


 コメット教授がそんなことを言うので、俺は穴があくほどコメット教授を見た。けど、何も分からなかった。


 「見たぞ」


 「はあ~であります。ヒロセは私に商売ができるように見えるでありますか?」


 ……、コメット教授が商売? う~~~ん。破産する未来しか見えない。


 「すまん。見えない」


 「そうでありますよねー。(´Д⊂グスン」


 さて、どうしたものか?


 ◇


 ~そんなころ、スラちゃんとちみっこ妖精は~


 「ヒロセ、遅いねー。スラちゃん。やっぱり、ヒロセにはこの場所は難しすぎたのかなー」

 「スラ~~~」


 かくれんぼを楽しんでいた。

 

 

 

 

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