第一話:異世界転移
疲れた。とっても疲れた。
毎日、残業、残業、残業。残業させるくせに残業代がまったくでない。これはおれの夢見たのんびりした生活とはまったく違う。
「は~、仕事やめたいなー」
何度もやめたいとは思ったけど、ほかに仕事があるわけでもないしな。それに、転職活動をやる時間もない。すっかりブラック企業につかまってしまった。
おや? 雨が降ってきたな。この先にあるコンビニで傘でも買うか。
ザーザー、ゴロゴロ。
……おお、なんかすごい降ってきたな。雷もなっているし。天気予報では晴れだったんだけど。
急がないと。
ピカリ。そして、おれは意識を失った。
「う~~ん。ここはどこだ?」
なんか周囲すべてが真っ白の空間におれは浮いていた。
上も下も、左も右も、どこまでもずーっと真っ白だ。
夢かな?
「夢じゃないぞ」
ん? なんか聞こえたな。
でも、周りを見てもだれもいない。
気のせいかな?
「気のせいじゃないぞ。私は神。おぬしの目には見えておらぬが、近くにいる」
神? やはり夢をみているのか?
「夢じゃないというておろうに。まあ、そんなことはどうでもいい。おぬしはカミナリに直撃してさっきくろこげになって死んだ。よって、異世界に行ってもらうことにした。剣と魔法の異世界。どうじゃ? うれしかろう」
え? どうでもよくないよ。
「どうでもいいのじゃ。おぬしはこれから異世界いき決定なのじゃ」
夢じゃないにしても行きたくないよ。剣と魔法なんて、ブラックっぽいし。もう、ブラックはこりごり。
「ブラック? ふ~~む。なるほど。ずいぶんとこき使われとったみたいじゃの。賃金がでないなんてまるで奴隷じゃの。まあでも、異世界いきは決定じゃがな」
決定って……、いきたくない、いきたくない。
「神様、そろそろ時間なのだー。このままでは彼の魂は消滅するぞ」
「む。そろそろ、時間のようじゃ。適当にスキルを見繕ってやったから、ブラックにならないように気をつけるんじゃぞー」
え? ちょちょ……。。。
◇
「う、う~~ん」
さらさらと気持ちのいいベッドに寝ている。やはり、夢だったか?
起き上がって周囲を見回すとどうやら草原が広がっているようだ。俺が最後に歩いていたのは草原じゃない。
夢だと思いたいが……。
「どこか人のいるところに行かないと……」
ここが現実の異世界なのだとすると、あの声の主『神様』は剣と魔法の世界だと言っていた。
嫌な予感がする。さっさと、村なり街なりを見つけたほうがよさそうだ。
でも、草原の中にポツンと一人いて、どうやって村なり町なり見つけたらいいんだ?
こういう時にネット小説だと都合よくなんとかなるもんだが。。。
≪ピロリーん。スキル・異世界召喚セットのマップ機能が発動しました。マップ機能のアクセス案内により、一番近い町はここより右手方向にまっすぐ2時間の距離にあります≫
ん? なんか聞こえたけど。そういえば、神様がスキルがうんたらこうたらと言っていたな。
ということは。
「ステータス・オープン」
≪ピロリーん。スタータスがオープンします≫
先ほどの無機質な音声が聞こえたかと思うと、目の前に半透明のタブレット画面が現れた。
その画面をのぞき込んでみると……。
【名 前】 広瀬康介
【年 齢】 30
【職 業】 無職
【レベル】 1
【体 力】 10
【魔 力】 500
【攻撃力】 5
【耐久力】 5
【素早さ】 5
【スキル】 鑑定Lv1、リペアLv1、異世界召喚セット
ふむふむ。魔力だけは高いけど、ほかはゴミみたいな性能だな。
スキルは、鑑定にリペアに、異世界召喚セット。チートっぽくないこのスキルでブラック回避しないといけないのか。
おや、それぞれのスキルにリンクがついている。これでスキルの詳細が分かるのかな。
さっそく鑑定をぽちりと。すると、鑑定の説明画面に切り替わった。
スキル 鑑定
鑑定対象の名前、内容などを鑑定するスキル。レベルが高くなるにつれ、詳細になっていく。
ほうほう、なかなかに使えるスキルみたいだな。
試しにその辺の草を鑑定してみるか。
「鑑定!!」
【名前】 薬草
【内容】 ポーションの材料になる
なるほど、鑑定も画面に出るのか。。。これは便利だな。
うまくいけば市場で掘り出し物を見つけられるかも。
次はリペアをぽちりと。
スキル リペア
リペア対象を修理するスキル。レベルが高くなるにつれ、便利になっていく。Lv1の場合、ちょっとした修理なら可能。なお、欠けている場合、材料が必要。
おお。これも便利なスキルだ。
あとで街についたら、試してみよう。
最後に異世界召喚セットをぽちり。
スキル 異世界召喚セット
異世界召喚に必要な基本的なスキルがセットとなっているパックスキル。異世界言語、マップ、健康体、アイテムボックスが入っている。
チートじゃないといったけど、なんか至れり尽くせりだな。言葉で苦労することもないし、道に迷うこともない。病気にもかかりにくそうだし、アイテムボックスなんてものもある。
ステータスの確認が終わると、俺はマップを画面に表示した。ふむ、どうやら右手側、つまり北に進むと街道に出られそうだ。そして、そこからさらに北に行くと街につきそうだ。
さっそく街に向かって出発だ。
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