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ふふ。やるのか、やらないのか。どっちかこの場で選んで欲しいな

◇◇


――ゾクッ!


 うおっ! なんだ?

 すっごい寒気がしたんだが、気のせいだろうか……。

 風邪でも引いたのか?

 それともここ三日ほどエルミリーのせいで夕飯をゆっくり食べられなかったからか……。

 

 いや、ちょっと騒がしかったが、あれはあれでいいもんだ。

 それもエルミリーが町を出た今となっては、もう終わり……。

 また一人ということか……。

 

 って、なにをセンチになってるんだ!?

 俺は今までもずっと一人だったじゃねえか。

 

 さあ、今日は王都の定食屋に行って、おかみさんの娘さんであるアリエッタが元気にやっているか、様子をうかがってから帰るとするか。

 

――カラン、カラン。


「いらっしゃいませー! って、ああ! マルコおじさぁん!!」


――ガシッ! むにゅぅぅ。


「おい、こら! いきなり抱きつくな!」

「あはは! いいじゃない! ウチとマルコおじさんの仲じゃない!」

「待て待て! 他人が聞いたら勘違いするようなことを、年頃の女の子が口にするもんじゃねえ!」

「ふぅん。どんな勘違いをさせちゃうのかしら? ふふ、ウチはマルコおじさんとならどんな勘違いをされてもいいんだけどなぁ」

「だからやめろって!」


 そんなに大きくて柔らかいおっぱいを押しつけられたら、顔が真っ赤になっちまうだろ!

 ……なんて言えるわけがない。そんなこと言ったら、余計に変な勘違いをされる。

 ただでさえ、他の客が冷たい目で見てきているのに!

 まったく……。まだまだ幼い顔のくせに、体つきだけはどんどん成長しやがって。生まれたばかりの時におしめを変えてた頃が嘘みてえだぜ。

 

――カラン、カラン。

 

「あら、いらっしゃい! あ、昨晩の女騎士様じゃありませんか!? ふふ、昨晩と同じ『キラーボアの肉野菜炒め・肉マシマシ・ご飯超特盛り』でいい? それと隣のお客様はまさか……ルベルガー将軍様!?」


 おいおい。

 ここの『並盛り』は普通の店の『大盛り』なんだぜ!?

 それを『肉マシマシのご飯超特盛り』って、どんな怪物女なんだ……。

 こっちからじゃ入り口の方は見れないが、いったい何者……。

 

「はうっ! その背中の筋肉はぁぁぁ!! マルコ!!」

「げっ!? エルミリーか!!?」

「ちょっと! なんでそのエロい少女といちゃいちゃしてんのよ!!」

「してねえって!」


(なによ、この展開は!? まさか俗に言う『修羅場』ってやつ!? いいわ! 受けてたってやろうじゃないの! わたしは絶対に負けないんだから! ……あれ? ルベルガー将軍? なんでよだれをたらしながら、マルコに近寄っていくの?)


「はぁはぁ。この店に入る前からかぐわしいニオイを感じてたんだけど。やっぱり君だったんだね」


――ツカツカ……。


「なんだおまえさんは? ずいぶんと良いガタイしてるじゃねえか」


――くんか、くんか。


「ちょっ! 何をいきなりしやがる! 俺の腹におまえさんの鼻がくっつくだろ! 気持ち悪いな!」

「合格!! おめでとう! 合格だよ、マルコ君!」

「はあぁ? 何者だ? あんたは?」

「ちょっとマルコおじさん! この人は『無双の竜殺し』というあだ名で、伝説の将軍と称されたルベルガー様よ! この王国民で将軍の名を知らないなんて知れたら、たいへんなことになるんだから!」


 無双の竜殺しだと?

 おいおい、そんな中二病くさいあだ名を言われて、よく平気な顔してられるなこの兄ちゃん。

 しかし人のニオイをかぐなり、『合格』ってどういう意味だ?

 かなり気持ち悪いんだが……。

 

「マルコ君。今日から君はボク専属の……いや、それはまだ早いな。実際に仕事でかく汗と平常時にかく汗ではニオイが異なるかもしれないからね。仕事でかく汗のニオイをチェックしてからでも遅くはないな」

「おいおい……ぶつぶつと何を言ってるんだ?」

「いや、気にしないでくれたまえ。まずは手始めに第一騎士団専属の武器職人に採用しよう! 今よりも報酬は倍、いや十倍になるだろう! おめでとう! ははは!」

「はああああ? 待て、待て! そんなことをいきなり言われても困る! 町の武器屋はどうなっちまうんだよ!?」

「ふふ。その点は心配ない。王都の武器職人を派遣しよう。いくら仕事をしても汗をかかない体質の職人をね」

「だから、さっきからその『汗』ってなんなんだよ!?」


――タンッ!


「うおっ! 近い!!」

「ふふ。やるのか、やらないのか。どっちかこの場で選んで欲しいな」



(な、な、な、なんですってぇ!? まさか将軍の狙いが武器職人じゃなくて、マルコの汗だったなんて……! うかつだったわ。ここにきてライバルが一気に二人も現れるなんて! くっ! 弱気になるなエルミリー! マルコの背中は誰にも渡さないんだから!

 

 それにこれはピンチじゃない! チャンスだわ!

 マルコが第一騎士団専属の武器職人になれば、私との距離はぐっと縮まるもの!

 そうよ! 私はいつだってピンチをチャンスに変えてきた英雄じゃないの!


 さあ、マルコ! 言ってちょうだい!

 王国軍の専属武器職人になって、エルミリーに背中をずっと見せるんだって!)

 

 

「わりぃ。俺には無理だわ」



「「はあああああ!?」」


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