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ふふ。これでマルコの汗はボクのものだ!

翌日 王国軍の詰め所――。


(はぁ……。けっきょく昨日もマルコに『お友達になってほしい』と言えなかったわ。せっかく王都までずっと一緒にいたのにぃ。それも全部、キラーボアのせいよ! あいつらが邪魔しなかったら、今頃わたしは彼の背中に包まれて朝を迎えたに違いないわ! おのれ、キラーボアめ! 次あったら肉野菜炒めにしてやるんだから!)


「やあ、君がエルミリー君か! 今日から君も僕が率いる『第一騎士団』の仲間入りだ! よろしく頼むよ!」

「ひゃ、ひゃい!!」

「ははは! そんなに緊張しなくてもいいよ! もっと楽にしたまえ! ははは!」


(そ、そんなこと言われても無理よ! あなた様はかの『無双の竜殺し』とおそれられたルベルガー将軍なのですから! さらに言えば、世の中の若い女性の憧れの的。甘美なマスクに、鍛え上げられた黒光りする肉体を目の前にすれば十人中八人は失神してしまうらしいじゃない! でもわたしには通用しないわよ。将軍の筋肉は確かに美しい。でも、マルコの背中はもっと美しいんだから!)


――スッ……。


「ふえっ!?」


(えっ? えっ? なに? なんでいきなりわたしの腰に手を回してきたの!? ちょっとまって! ダメよ! わたしの貞操を捧げるのはもう一人に決まってるんだから! ……って、待つのよ、わたし。わたしが好きなのは彼の背中だけ。決して彼ではないわ。……ううん、もっと素直にならなきゃダメ。こんなことだから彼氏いない歴=年齢なのよエルミリー。もう認めてしまいなさい。わたしはマルコのことが……)


「君、いいナイフを持っているね」

「はい?」

「いや、いきなりすまないね。良い武器に目がなくてね。これをどこで手に入れたんだい?」

「これですか? これは故郷の町の武器屋のマルコという男が餞別にと……」

「そうか。そのマルコを僕へ紹介してくれないかい?」


(ふふ。こんな素晴らしいナイフを作るオトコなら、きっと素敵な汗をかくはず。ああ、その汗をくんかくんかしたいわぁ。ボクはイイ男の汗に目がないのさ。……なぁんて目の前のレディに言えるはずもないからね。ここはあくまで自然に聞きださなくては。そして、そのマルコなるオトコを王都に呼び寄せて、いつかはボク専属の武器職人するのだ。そうすれば彼の汗のニオイをかき放題。ふふ……ふははは!)


(ま、まさかこれは『ヒロインを通じて主人公が成り上がる』というパターンでは!? これはチャンスよ! もし成功したらこうなるに決まってるわ!)


 以下、妄想。

 

『エルミリー! 聞いてくれ! 王国軍専属の武器職人に抜擢されたんだ!』

『……っ!? そ、そうだったの。おめでとう』

『なんだよ、そっけねえな』

『べ、別にそんなことないわよ。いつも通りよ。いつも通り』

『はっ! そういえば、今回の抜擢にはとある人物の根回しがあったと聞いたんだが、もしかして……』

『ち、違うわよ! わたしじゃないもん! か、勘違いしないでよね!』

『いや、その反応。やっぱりエルミリーなんだな』

『……』

『そうか……。ありがとな。お礼と言っちゃなんだが、これからは毎朝、俺の背中をずっと見せてやるからな』

『え? それって……』

『言わせるな。そういうことだよ。チュッ……』


 妄想、ここまで。

 

(にゃふふふふふ!! いいっ! すごくいいっ! ついにわたしにも遅れてきた春がやってくるのね!)


「どうだい? 僕へマルコを紹介してくれるかい?」

「はいっ! 喜んでぇぇ!!」


(ふふ。これでマルコの汗はボクのものだ!)

(にゃふふ。これでマルコの背中はわたしのものよ!)



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